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90億円不正流用で海外逃亡中の佐川印刷元役員 逮捕直前手記

NEWS ポストセブン 11/15(火) 7:00配信

 遠いフィリピンで書かれた一通の書簡を、本誌は入手した。書いたのは63歳の日本人。〈京都地検 佐川印刷担当検事様〉に宛てたA4用紙1枚の文面はこう始まる。

〈私は元佐川印刷の取締役湯浅敬二です。新聞記事、週刊誌を読んでいて余りにも事態が違うので怒りが込みあげてきて手紙を書く事にしました〉

 90億円が“消える”という異次元の不正経理事件は新たな展開を迎えた。ジャーナリストの伊藤博敏氏がレポートする。

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 佐川印刷は京都に本社を置き、その名の通り佐川急便の印刷物を一手に引き受け、連結売上高が1000億円を超える大手印刷会社である。湯浅氏は、彼が役員として財務・経理部門を担当していた子会社の資金約90億円を不正流用。そのうち4億円を騙し取った疑いが持たれている。

 不正流用が発覚した昨年1月、事態を把握した同社は湯浅氏を刑事告訴したが、京都地検が捜査に着手した直後に本人は海外逃亡。1年8か月にもわたる逃亡生活を続けたが今年10月、フィリピン当局に拘束された。帰国後すぐに逮捕される予定だという。

 帰国・逮捕を目前に控えた彼は、「その前に気持ちを伝えたい」とフィリピンで手紙をしたためた。その内容は驚くべきことに、湯浅氏の「単独犯行」だとするこれまでの報道を真っ向から否定する内容だったのである。

◆元横綱の関与する金融機関

 書簡にはこうある。

〈佐川印刷グループの資金はすべてまかすからと木下会長に言われてやってきました。私が資金を投資したのは木下会長の裏金づくりのためです〉

 木下会長とは、佐川印刷の創業者である木下宗昭氏(73)のことだ。木下氏は1970年にキノシタ印刷を設立。佐川急便に飛び込み営業をして、創業者の佐川清会長(故人)に気に入られたことを機に急成長し、佐川急便の出資を受けたことから社名を佐川印刷に変更した。

 湯浅氏は1983年9月、佐川印刷に中途入社。財務・経理畑を中心にコツコツと勤め上げ、2003年4月に財務・経理部長となり、2012年4月から総務・財務・経理の取締役に就任した。

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最終更新:11/15(火) 7:00

NEWS ポストセブン