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入社後も想定した「内定者フォロー」の実態

東洋経済オンライン 11/15(火) 6:00配信

 内々定や内定が決まってから入社までの時間をどう生かすかは、採用する企業側にとっても、内定が決まった学生にとっても課題のひとつだろう。

 今の採用スケジュールであれば、6月に内々定が出れば、入社までは10カ月近くあることになる。当然、学生たちにとっては卒業論文や修士論文など学業を優先させることになるが、間が空きすぎて不安になる学生も多いという。

■企業の8割が内定者向け懇親会を実施

 そんな中、内定者向けの「内定者フォロー」が重要視されている。入社まで時間があることから、学生が不安にならないように企業側が内定者向けに行う、さまざまな取り組みを指す。その多くが内定者を集めた懇親会で企業の8割が実施しているという。定期的に内定者を集めて、先輩社員や人事担当者が会社の事業や職場の状況を説明し、昼食会や夕食会を行うケースが多い。社員や内定者とのコミュニケーションを図ることで、少しでも会社の雰囲気に馴染んでもらうのが主目的だ。

 さらに最近では、「内定者囲い込み」という目的もある。学生に有利な売り手市場が長く続いており、複数の会社から内定を得る学生が多くなっている。企業にとってはそうした複数内定者が自社に決めてもらえるよう、内定者フォローの機会を使って最後の説得を試みるケースもある。当然、学生たちの間にも、懇親会を最終的に就職先決める場として位置づけている人は多い。

内定者フォローの実態については、「企業と学生の攻防、『内定者フォロー』の実態」(10月17日配信)で述べてある通りだが、ここではさまざまな内定者向けの取り組みを模索する企業を取り上げたい。

自社の映画や演劇を見てもらう

 歌舞伎を興行し、映画業界大手の一角でもある松竹。創業120年を超える老舗企業だ。同社は毎年10名前後を新卒で採用し、今年(2017年4月入社)は14名の採用を予定、すでに内定も出している。

 松竹では内定者へのフォローとして、1~2カ月に1度、内定者同士や現場の社員と会う場を設けたりしている。さらに人事部の若手社員をメンターに据え、1人のメンターが数名の内定者を担当し、入社までの細かいフォローも行う。

 映画、演劇と多くのコンテンツを持つ松竹ならでは取り組みとして、入社までに自社のコンテンツを見てもらったり、実際にイベント等に参加してもらい社員がどんな仕事をしているのか見てもらう機会も作っているという。12月以降はビジネスマナーやエクセルの使い方など、実務に即した研修もおこない、少しずつ仕事に対するイメージを植え付けていく。

 さらに松竹が内定者フォローで特徴的なのは、人事が内定者に採用した理由を詳しく伝えている点だ。

■内定した理由を深掘りして伝える

 「なぜこの会社に採用してもらったのかわからず不安という声があった。そこで内定理由を深掘りして伝えている」(松竹人事部人材開発課の武藤寛征氏)。

 たとえば、理系の学部などエンターテインメント事業と関連ない学科を専攻している学生の場合、「なぜこの会社に採用されたのか」と不安に思うケースが少なくない。そこで、会社がなぜ内定を出したのかという理由を、内定を出した後に細かく説明をしているという。

 さらに、WEBテストの結果など客観的なデータを見せて本人の強みや弱みをどう評価しているかを指摘し、会社として期待している部分や入社までに強化してもらいたい点などを伝えている。10月の内定式のときにも簡単に内定理由を添えて内定証書を渡す徹底ぶりだ。

 「会社を選ぶ理由に人間関係の環境の良さを求める学生は多い。そんな中、採用理由をきっちり説明することは、信頼関係を築く上でも有効」(武藤氏)と語る。

 ERP(統合基幹業務システム)ソフト開発大手のワークスアプリケーションズは、毎年、数百人規模で採用する企業だ。今年も国内だけで900名以上もの人を採用しており、2017年も同規模の人数を採用する予定だ。

 ワークスアプリケーションズはインターンシップの取り組みで高い評価を得ている。ビジネスの難題を分析し、その問題の解決に繋がる新製品の企画や、製品開発のプレゼンテーションに挑む本格的なもので、11月公開の映画『インターン!』では、実際のインターンシップ先として登場した。このインターンシップで優秀と認められると、大学卒業後3年以内にいつでも入社ができる「入社パス」を付与する制度があることでも知られる。

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最終更新:11/15(火) 6:00

東洋経済オンライン

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