パリ協定 締約国が初会合開催へ トランプ氏に懸念も

パリ協定 締約国が初会合開催へ トランプ氏に懸念も
北アフリカのモロッコで開かれている地球温暖化対策を話し合う国連の会議COP22で、日本時間の午後9時すぎから、パリ協定の締約国による初めての会合が始まります。アメリカの次期大統領に温暖化に否定的なトランプ氏が選ばれ、世界全体の対策が停滞すると懸念される中、各国が対策にどのように取り組むのかが焦点になっています。
すべての国が温暖化対策に取り組むことを定めたパリ協定は、去年の採択から、わずか1年足らずの早さで今月4日に発効しました。
これを受けて、モロッコで開かれている国連の会議COP22の会場で、日本時間の午後9時すぎから協定の締約国による初めての会合が始まります。

会合では、議長国のモロッコの国王や国連のパン・ギムン(潘基文)事務総長、それに締約国の閣僚らが演説し、パリ協定に基づく世界規模の温暖化対策の重要性などについて訴える予定です。

パリ協定をめぐっては、これまで交渉をリードしてきたアメリカの次期大統領に、温暖化に否定的で協定からの脱退も示唆しているトランプ氏が選ばれたことから、各国の交渉団や専門家からは世界全体の温暖化対策が停滞すると懸念する声が相次いでいて、各国が今後、対策にどのように取り組むのかが焦点になっています。

締約国会合は今月18日まで断続的に開かれる予定ですが、日本は協定の締結が遅れたため、決定に異議の申し立てができないオブザーバーとしての参加となります。今後、発言力の低下をどう食い止め、温暖化対策に積極的に取り組む姿勢をアピールするかも注目されます。

トランプ氏が温暖化対策にどう臨むか

アメリカのトランプ次期大統領は地球温暖化について「でっち上げ」と述べ、否定的な立場を取っていて、パリ協定からも脱退する意向を示すなど国際社会の地球温暖化対策の取り組みに非協力的な姿勢を示しています。

しかし、パリ協定は今月4日にすでに発効しているため、トランプ氏が次期大統領に就任後も、すぐに脱退はできず、協定の規定に従う必要があります。
規定では発効から3年間は脱退の通告ができず、脱退は早くとも通告から1年後で、来年1月20日に就任するトランプ氏が脱退の通告ができるのは、早くとも2019年11月となります。

パリ協定はアメリカ大統領選挙の結果が出る5日前の今月4日、去年の採択から1年足らずという異例の早さで発効しましたが、オバマ政権のアメリカをはじめ、各国が発効を急いだのは、仮にトランプ氏が当選してもアメリカがすぐに脱退できないようにする狙いもあったと言われています。

ただ、パリ協定を採択した国連の会議を開いている気候変動枠組条約そのものから脱退すれば、4年を待たずに脱退することは可能となります。

また、トランプ氏は先月、大統領に就任してから100日の間に実行する計画を発表し、この中で、アメリカとして国連の温暖化対策プログラムへの数十億ドルに上る資金拠出をやめ、その分の資金を国内の水道や環境の社会基盤整備の費用に充てるとしています。

さらに、オバマ大統領が進めてきた石炭火力発電所からの温室効果ガスの排出規制の計画など、さまざまな規制を撤廃し、代わりにアメリカ国内のシェールガスや石油、石炭などの化石燃料を最大限に活用し、数十兆ドルの雇用や経済効果を生み出すとしていて、近年、アメリカが中国やインドなど、これまで排出削減に消極的だった国を動かし、国際社会が協調して温暖化対策に取り組む機運を高めてきた流れが大きく後退するとの懸念が強まっています。

EU加盟国からは懸念の声相次ぐ

アメリカの次期大統領にトランプ氏が選ばれたことについて、パリ協定の早期発効に重要な役割を果たしたEU=ヨーロッパ連合の加盟国の間でも世界全体の対策が後退するおそれがあるとの懸念の声が相次ぎました。

このうち、ベルギーの交渉団の男性は、トランプ次期大統領について「アメリカの方針が変われば、世界最大の経済大国で温室効果ガスの大排出国が参加しないことになり、憂慮すべき事態になる」と述べたほか、スウェーデンの交渉団の男性も「懸念があるのは当たり前だ。でもまだトランプ氏の方針を見聞きしたわけでもない。今の段階では判断できない」と述べました。

また、EUの事務局の女性は、「パリ協定は、すべての国の積極的な参加が必要だ。アメリカにはこれまでどおり、取り組んでほしい」と述べ、パリ協定に実効性を持たせるためにはアメリカの協力が不可欠だと訴えたほか、同じEUの事務局の男性は、「パリ協定に引き続き一緒に取り組んでもらうよう、われわれとして努力しなければならないが最終的にはトランプ氏の判断だ」と話し、今はトランプ氏の出方を見守るしかないと述べました。
さらに、オーストリアの交渉団の男性も「憂慮すべき事態であることは間違いないと思う」としたうえで、「全世界が一体となって取り組むのがパリ協定で、なんとしても成功させなければならない。トランプ政権が同じ結論に至るのを期待している」とトランプ氏の冷静な判断を期待すると述べました。また、ドイツの交渉団の女性は、「政治は選挙戦で気軽に言えるようなことで決まらない。アメリカが国として実際に何をするのか、私たちはそれを見極めたい」と話し、トランプ氏の発言を額面どおりに受け止めるべきではないと指摘しました。