糖質制限肯定派からは、よく、エスキモーやイヌイットの健康についての例がでてきます。特に言われるのが、伝統的なエスキモーやイヌイットの食事の下では、エスキモーやイヌイットは動脈硬化がない。とか、心筋梗塞にかからない。とかいう話。
うーん、本当でしょうか。
ということで、いくつかのスタディーをチェック。
エスキモーには動脈硬化がなかったというのは間違い。
脳梗塞、心筋梗塞の主要原因は、血管にプラークがたまる動脈硬化です。エスキモーは動脈硬化がなかったのか調査したいくつかの研究があります。
The paleopathology of the cardiovascular system.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC325106/
この記事には、西暦400年代の53歳の女性のエスキモーのミイラが出てきます。彼女の心臓の冠状動脈には動脈硬化が見られました。
| 53歳の女性のエスキモーのミイラの環状動脈には動脈硬化が見られた |
Atherosclerosis across 4000 years of human history: The Horus study of four ancient populations
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23489753
このスタディでは、5体のウナンガン族(アリューシャン列島に暮らしていたエスキモーの部族)のミイラを検査したところ3体が、動脈硬化を持っていたとのこと。
エスキモーには虚血性心疾患にかからなかったという科学的根拠は乏しい。
Low incidence of cardiovascular disease among the Inuit - What is the evidence?
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12535749
このスタディでは、 イヌイットに関する現在までに発表されてきたいろいろなスタディをレビューしています。虚血性心疾患が増えたというスタディーから減ったというスタディーまで一通りレビューしているんですが、最終的には、イヌイットの虚血性心疾患(IHD)の発生率は低いという科学的根拠は乏しいと結論付けています。
エスキモーは海洋動物の摂取によって重金属による体内汚染にさらされていた。
The Inuit diet. Fatty acids and antioxidants, their role in ischemic heart disease, and exposure to organochlorines and heavy metals. An international study.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8871682
このスタディでは、海洋動物の摂取により、イヌイットは、体内の水銀やPCBのレベルが高いことが挙げられています。
エスキモーは寄生虫に寄生される可能性がある
Trichinella infection in a hunting community in East Greenland.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20144253
東グリーンランドでは、60歳以上のエスキモーのうち12%が、旋毛虫症に感染。高齢であること、猟師や漁師、そしてホッキョクグマの肉の消費量などによって、大幅に旋毛虫抗体陽性のリスクが増加。
エスキモーは、骨粗鬆(そしょう)症が起こりやすい
Bone mineral content of North Alaskan Eskimos
http://ajcn.nutrition.org/content/27/9/916.abstract
この研究によると、年齢40歳以上のアラスカに住むエスキモーは、米国における白人と比較して、骨密度は10%〜15%しかなかったとのこと。高タンパク質、高窒素、高リン、および低カルシウムの摂取が関与しているだろうと結論付けています。
The Mummies from Qilakitsoq - Eskimos in the 15th Century
https://books.google.com/books?id=mWkYGpmzQXMC
この文献にも、エスキモーのミイラには骨粗鬆(そしょう)症が見られたと書かれています。
ということで、エスキモー、イヌイットのダイエットに関していくつかのスタディーを見てみました。エスキモー、イヌイットの、セイウチやアザラシ、魚など食べ、穀物を摂らない食事は、必ずしもパーフェクトというわけではなく、幾つかの問題があり、糖質制限食を肯定するための例としてはいまいちな感じでした。。。
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