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神ねむりたる天が下 智慧ことごとく黙したり いざ起て、マルス、勇ましく
一見、いかにもファシズムに抵抗して立ち上がることを訴えるように読めるが、実は逆で、戦争の大義を宣伝して民衆を戦地に送り込むというファシズムの歌である。
体制はいつでも手の込んだやりかたで、それと気付かぬ民衆をコントロールする。いや、民衆に「自発的」に体制の思惑にそった行動をとらせるよう仕組む。
この小品が日中戦争勃発の1937年に発表されたことに驚く。翌年には国家総動員法が発令されたことを考えると著者の勇気に感動する。
曹洞宗はいま改革の産みの苦しみにあるが、それを安産させるには全国の寺院の後押しが必要である。しかし、まるでファシズムに圧しつぶされてしまったかのように、いまだ一部改革派を除いて声をあげない。行動しない。これは無知であり怯懦である。とても智慧を標榜する仏教の徒とは言えない。いや、無言でいることは実は体制に従うことである。体制の協力者である。その罪は限りなく重いことを知らなければならない。
「マルスの歌」が描いた戦争(ファシズム)とあやうい個人の問題はいまだ解決されないままわたしたち曹洞宗の僧侶に投げかけられていて、いやなことだが、それにはどうも先行きの暗さを感じざるをえないのだ。 |
No.452 2007/10/11(Thu) 13:40:37
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