【インタビュー】

結婚したらオタクは同人誌を捨てなければいけないのか


オタクの結婚において最大にして最恐のテーマ。「同人誌をどうするか」



大雑把にわけて、このようなチャートになるわけですが、今回は右上の「カミングアウトをした上でご開帳」タイプの我が家を一例としてご紹介。侃侃諤々(かんかんがくがく)の大議論を展開します。


小学校高学年の時には既にオタクであったという夫。カテゴライズすると、いわゆる腐男子にあたり(自称)、所有同人誌数は何千冊にも及ぶといいます。

こんな感じで家の中では未だに厨二病に罹患している夫。今回は結婚に際してどのように同人誌を処置したのかを一例として見てみましょう。



まずはこちらの問題から。どのようにカミングアウトしたのかをご紹介します。あれは結婚して一緒に暮らし始めた初日の昼の出来事でした。





あの時のことを振り返って

妻「何事かと思いましたあの時は」

夫「ごごごごめんなさいアレは本当にごめんなさい。だってフランクフルト(意味深)の画像見ないと新刊のシーンが描けなかったし……」

妻「だとしても隠しましょう」

夫「締め切り直前で集中してて今日から奥さんが家にいるってこと忘れてました」

妻「新刊仕上げてて自動的にオタバレということですね」

夫「というかそもそもオタクであることを隠すという発想がなかったのです……」

妻「オタクであることを誇りに思っているから? 」

夫「その通りです」



妻「改めまして、こんにちは。本日インタビュアーを務めます妻です。何卒よろしくお願いいたします」

夫「よろしくお願いいたします」



妻「インタビューをするに当たって、再度冒頭のフローチャートを見てみましょう」

妻「カミングアウトした後、同人誌を捨てるという選択肢も存在していたわけですよね」

夫「はい。選択肢の一つとしては存在しています」

妻「それではここで本題に入りましょう。単刀直入にお伺いします」



夫「同人誌ってのは、世界に数十冊しかない奇跡の結晶なのです。同人作家たちが己の血と涙で描いた宝なんです。一度手放したら最後、再び巡り合える可能性は/zeroに等しい。それを手放すなんてとんでもない。それが、私の判断でした」

妻「なるほど」



夫「俺、同人誌を捨てるくらいなら結婚相手を捨てます」

妻「わかりみしかない」

妻「私も結婚相手に猫捨てろなんて言われたら猫じゃなくて相手を捨てますね

夫「この場合ね、確かに、結婚を機に同人誌を全て捨てて一般人に戻るという選択肢もありました。でも、オタク活動は俺の全てです。オタクでなくなったらもうそれは俺じゃないんです」

妻「なるほど」

夫「同人誌ってのは、まぁ大の大人が楽しむ趣味じゃないと否定されることも多々あります。でも、同人誌は、俺の人生を豊かに彩ってくれた大切なものです。それは誰にも否定させはしない。オタクであることを、俺は心から誇りに思っています」

夫「この先、貴腐人、汚超腐人、腐婆婆、腐ェニックスになるまで、俺はずっとオタクで居続ける覚悟と決心をしています」

妻「同人誌は人生そのものとおっしゃいますが、現実的においくら程お金を使ってらっしゃるのでしょうか」

夫「去年はそんなに使いませんでした。最高でも月20万くらい」

妻「20万? 」

夫「はい」

妻「20万?


妻「まぁ家計のやりくりの範囲内ですし良いでしょう。さて、そこまでお金を費やして買い続けている同人誌。さぞかし数も多いことと推察されます」

妻「実際問題、実家にお住まいだった頃はどう処置されていたのでしょうか」

夫「一般の方がエロ本を隠すのと同じような場所に隠していました。押し入れの中とかベッドの下とかですね」

妻「意外とアレですね。オーソドックスな場所にお隠しになられるのですね」

夫「そもそものお話で大変恐縮なのですが、我が家の家系は先祖代々腐っているので、万が一見つかったとしても特に問題がないのです」

参考ツイート


妻「自家通販の新刊を徒歩で送付ですか」

夫「呼吸を止めて1秒 私真剣に 読みふけった」

妻「とても素晴らしいお兄様をお持ちのようで」

夫「自慢の兄です」



妻「ちなみにオタクであることの弊害はございますでしょうか? 」

夫「特にないです」

妻「あるだろ

夫「どれのことでございましょう」

妻「結婚してすぐの頃。晩御飯食べてた時のこと」



夫「その節はご迷惑をおかけし大変申し訳ございませんでした。再発防止に努めます」

妻「テニ○リのことはよく存じておりませんが、でも跡○様なら仕方がないと思います」

夫「ですよね」


季節感があるが故の弊害

妻「それと、オタクの皆様は大変季節感があるかと存じます」

夫「推しCPで季節イベントやりますからね。クリスマスや正月、バレンタインなどなど」

妻「四季折々のイベントを楽しんでらっしゃるのは素晴らしいことですが、季節感があるが故の弊害も存在するのではないでしょうか」

夫「例えば」

妻「例えば、そうですね。推しカプのバレンタインの同人誌読んだせいで手作りチョコに憧れ抱きすぎて妻が買ってきたゴディバのチョコに文句つける旦那さんとか」

参考ツイート


夫「大変申し訳ございませんでした」

妻「カカオから作ったチョコレート、美味しくなかったですね」

夫「正直マズかったです」



妻「まぁ同人誌に限らずなんですけどね」

夫「はい」

妻「趣味って、完全一致か完全乖離のどっちかだと、割とスムーズにうまくいくなぁという所感です。中途半端に一致してると、もめる確率が高くなる」



妻「図にするとこうですね」

夫「なんとなくわかります」

夫「もし俺の奥さんもオタクで、なおかつ俺の推しと奥さんの推しが被っていたら、懸念点が大量にございます」

夫「まずカップリングの左右で大揉めするだろうし、解釈違いで大喧嘩になるだろうし、家庭内不和はなはだしいですよ」

妻「夫婦に限らないことですが、適切な人間関係を築くためには、適切な距離が必要なのかなぁと思います。中途半端に一致していた場合は、どうやって距離を縮めるかor近づけるか、そしてどうやってお互いを尊重し合うかが大事なのかなと」



妻「さて、結論です。今回のテーマは、"オタクが結婚したら同人誌を捨てなければいけないのか"。捨てなかった我が家のケースを一例としてご紹介しました」

夫「この問いの答えとして、一人のオタクとして考えるのは"正解は千差万別"だということ。結婚しても引き続き捨てないでおく人もいるだろうし、捨てざるをえない人もいるだろうし、自らの意思で捨てると決める人もいるだろうし」

夫「夫婦の数だけ正解があると思います。何を一番大事にしようとするかで変わってくるんだろうなと思いました」

妻「ちなみに。Twitterでアンケートをとってみたんですけど、合計10,944票が集まりました」

妻「1番がマジョリティでしたね。協力してくださった皆様、ありがとうございました」

妻「あと。これは想定外だったんですが、上記の4つの選択肢以外に、"カミングアウトをした上で同人誌を処分した"という方も一定数いらっしゃいました」

夫「色々な形の夫婦がいることがわかりますね」

夫「ただ、一人の同人作家として、一つだけお願いがあります」

妻「何でしょう」

夫「結婚を機に、どんな選択肢をとろうとも。あなたが手にした同人誌を、愛したその心だけは、忘れないでください」

夫「カミングアウトしようとしまいと。同人誌を処分しようとしまいと。その同人誌を好きだった頃の記憶が心のどこかに残っていたのならば、作家として、ただもうそれだけで、描いたかいがあったなぁと思います」

夫の主張「人類皆オタク」



夫「そもそもですけど」

夫「俺たちオタクだけ迫害を受けるのはおかしくないですか」

夫「だってみんな! みんな何かのオタクだろう!? なぜ俺たちだけが同人誌を捨てるかどうかの選択を迫られる!? 結婚したからといってカメラオタがカメラを捨てるか!? 旅行オタがスーツケースを捨てるか!? 料理オタが調味料全部捨てるか!? 捨てないだろう!? だってソレはお前らの魂だろう!? 命だろう!? なぜ捨てる!! 捨てる必要などない!!

妻「あ。さっき正解はないとか言っておいて今ポロっと本音出ましたね」

夫「みんな地球で生まれてきたんだろう? そして何かに寄り添い生きた!! オレが寄り添ったのは同人誌だ! 誰にも捨てさせない! 誰にも邪魔させない!! 俺たちオタクだけ迫害を受けるのはおかしいと思う!! 」

夫「同人誌というものは!! 古い言葉で言えば"萌え"の権化なんだよ!! 萌えがあるから、オタクの俺は生きていけるんだ!! 同人誌とは俺が俺の血で買った鎧なんだ!! 鎧をはがしたら兵士はどうなる? 戦えないだろう? 人生ってそもそも戦うってことだろう? 俺から同人誌を奪ったらこの先の人生俺が戦っていけないだろう? 」

妻「わかったから落ち着いて」

妻「要約すると、結論は? 」

夫「"夫婦の数だけ正解がある、でも、どんな選択をとったとしても、同人誌を読んで幸せだったころの気持ちは忘れないでいて"と同人作家からの、皆々様への心からのお願いでございます」

妻「ご清聴、ありがとうございました!! 」

夫&妻「「それでは皆様、素敵なオタクライフを!! 」」

<作者プロフィール>
うだま
猫漫画家。猫ブログ「ツンギレ猫の日常」は毎朝7時30分に更新。
猫ツイッター(@udama1212)で猫画像を毎日投下し続けている。


おまけ インタビューが終わった後の舞台裏

担当編集注:「妻が何オタなのかは連載『夫婦のLINE』の第7回目のタイトルを見るとわかります」

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