サマーズ元財務長官がFTへの寄稿文=A badly-designed US stimulus will only hurt the working class(中身を誤った景気刺激策は労働者層の痛手に)で、こう指摘しています。
アメリカの空港や道路は途上国並みに古く、インフラ投資が必要という主張は、トランプもサマーズも同じ。ただし、トランプのやり方は誤っているとサマーズは強調しています。ざっくりこんな内容です(全文の翻訳ではありません)。
その結果、長期金利とインフレ期待が上昇し、株高ドル高につながった。しかしながら、過去の経験から市場の初期反応はのちのちの効果を反映しないことが分かっている。
MITの故Rudiger Dornbuschの研究成果によると、世界のポピュリスト的な経済政策は、直後にはプラスであっても長期に見ると労働者に劇的にマイナスだということだ。
トランプ氏の経済政策は、政策の組み立てのエラー、無理な想定、世界経済軽視の姿勢から、やはり長期にはマイナスになる運命かもしれない。
私自身は、低金利を活用してアメリカの老朽化したインフラを建て直すために財政支出を増やすべきだと長く主張してきた。それだけにトランプ氏が提唱するのを聞いて嬉しかった。
ただ残念ながら、Peter NavarroやWilber Rossといったアドバイザーが示したプランは、株式投資に対する税額控除と誤った資産配分をベースにしている。
全米の道路や6万に及ぶ橋の修復、学校校舎の近代化、空港の管制塔の最新鋭化といった成果の大きな投資案件は含まれていない。金銭的なリターンが小さいからだ。また、非課税の年金基金、寄付による大学基金、ソブリンウェルスファンドといったインフラ資金の有望な出し手は計画に参加できない。
私は財政拡大の有効性を楽観視している。とは言え、責任あるエコノミストであれば、一定規模を超えた財政出動が外国からの借り入れの増加、インフレ、そして金融危機に発展する危険があることは認めざるを得ない。
インフラ計画のコスト増(トランプチームはひどく過少評価している)や、国防費の拡大を考慮しなかったとしても、トランプの税制見直し案は国家への負担が大きすぎる。遺産税の廃止同様に多くの案は、金持ちのみを優遇する。
トランプ案が機能するには劇的な修正が必要だが、公共投資の増加、税制の修正、規制の見直しという方向性自体は妥当だ。
トランプ勝利の直後に起きたことを振り返ってみよう。保護主義的な政策の導入へも懸念からメキシコの通貨ペソはドルに対して10%下落した。ほかの新興国通貨も急落した。
この結果、アメリカがメキシコに輸出したモノは値上がりし、メキシコがアメリカに輸出するモノは値下がりすることになる。
また、グローバル企業にとってアメリカよりもメキシコなどの新興国での事業展開が割安となる。つまり、アメリカの製造業に従事する労働者に対する下押し圧力は増すことになる。
トランプ案では、中国を為替操作国に認定するとしており、アメリカが各国に通貨を安くしないよう圧力をかけられると考えているようだ。これはばかげている。
中国が輸出を有利にするために為替を過去に操作したということは言えても、この1年について言えば、中国は人民元相場をむしろ押し上げるために市場介入を続けているというのが現実だ。ほかの新興国も同様の状況だ。政治的に力のあるアメリカ大統領とは言え、経済法則はひっくり返せない。
ポピュリスト的な経済政策は、アメリカの場合、新興国とは違う形で繰り広げられるだろう。しかし、結果が芳しくないことには変わりない。
世界経済に参加するすべての関係者はこう願わずにはいられない。統治の責任を預かるアメリカ大統領は、選挙戦の公約の柱は守りつつも、見直しは行って欲しい。
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