再配達や年中無休、本当に必要ですか? 過剰品質が働く人を追いつめる
何度でも無料で頼める再配達に、年中無休のスーパー。当然のサービスだと思っていませんか?
いま、午後8時3分。
会社員の女性(38)は、都内のオフィスでパソコン画面に表示されている時刻を確認した。
「今日受け取るのは、諦めよう」
会社から女性の自宅マンションまでは約1時間。昨日ネットで注文した10キロの米の配達を、今日の「午後8-9時」と時間を指定して依頼していた。でも、仕事が終わらない。夫も帰宅は遅くなるという。
「明日の朝食はパンにしよう。お米は再配達してもらえばいい」
数年前までは買い置きしていたトイレットペーパーや米、水などを、最近はなくなるギリギリのタイミングでネット注文するようになった。注文した翌日には間違いなく、早ければ当日にも商品が届くので、収納スペースの少ないマンション暮らしには大助かりだ。重いものは玄関の中まで運んでもらえるし、「午後8-9時」の指定にすると、9時ぎりぎりに来てくれるのもありがたい。受け取れなくたって、何度でも再配達を頼める。
「ネット通販を近所のスーパーのように利用していて、もう宅配なしの生活は成り立ちません」
●8時50分に帰ったのに
ネット通販の一般化で、国内の宅配便の数は年々増加している。昨年度は37億4500万個と過去最高。5年前と比べて16.3%も伸びている。
宅配便数の増加とともに、注文の内容も水や米などの重いもの、肉や魚などの生ものが増え、配達員の負担は増した。
「なにより、再配達と時間指定のサービスが配達を難しくしています」
大手宅配会社の首都圏営業所勤務の配達員(61)はそう話す。
時間指定があるために、効率のいいルートで回ることができない。一つの荷物を届けるために1時間近く道端で待機することもある。同僚は午後8時すぎまで待って配達したのに、
「仕事を終わらせて8時50分に帰宅したら、8時15分に不在票が入っていた。どうして9時に配達できないのか」
というクレームが届いた。再配達依頼の電話で、
「出かけるので今すぐ配達して」
「今日は午後4時から4時半の間に届けて」
と細かい時間を指定されるのも、とてもきついという。
最近まで10年以上、宅配会社のセールスドライバーとして働いていた30代の男性は、転職の理由をこう話す。
「年々苦しくなってきて、あと30年これを続けることが想像できなくなった」
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