宇野ゼミぶろく!

法政大学社会学部宇野ゼミナール生によるブログ


テーマ:
担当:たり

<はじめに>
前回は日本国内の長寿企業の特徴を発表した。今回は長寿企業の業種別構成比で最も多かった「清酒製造」について考察していく。

1. 酒造業界の現状
1-1. 酒類消費数量
1-1-1. 成人人口は年々上昇傾向にある
1-1-2. 酒類消費数量は下降傾向にある
→酒類業界が伸び悩んでいる
1-1-3. 2000年から2010年にかけて、清酒の消費数量が減少している
→清酒製造も伸び悩んでいる
1-2. 清酒とは
1-2-1. 米と米麹と水を主原料として醸造した日本固有の酒、日本酒
1-2-2. 済んだ良質の酒 ⇔ 濁酒
1-3. 清酒製造業者の減少
1-3-1. 清酒製造業者の99%以上が中小企業
1-3-2. 2011年度の大企業数は5社
1-3-3. 高齢化・人口減少
a. 高齢化による酒量の減少
a-1. 2005年から始まった人口減少
1-3-4. 生活習慣・嗜好の変化
a. 一升瓶からコップに注いで飲む→缶容器や小容量を飲みきるスタイルへ
a-1. 「淡麗辛口」や「低アルコール」が好まれる傾向
→清酒は十分に対応できていない
1-3-5. 代替品の台頭
a. ビールやワイン、焼酎などの多種多様な種類の酒が登場
1-3-6. 清酒イメージの低下
a. 「洋酒(ワインやウイスキー)」=「かっこいい」「おしゃれ」
a-1. 「清酒」=「渋い」「お年寄りが飲む」
→清酒業界のマーケティングレベルが弱い
1-3-7. 参入障壁が高いため新規参入が少ない
a-1. 清酒製造には免許が必要なため
1-4. 清酒製造免許の成り立ち
1-4-1. 1634年、江戸幕府が酒造統制令を施行
←前年の大地震と各地の凶作による米価の高騰を抑制するため
1-4-2. 1642年、酒造と農民への酒の販売を禁止
←大飢饉と米価高騰のため
1-4-3. 1657年、明暦の大火(振袖火事)の際には酒造を一時禁止
→酒造株を設定
a. 酒造株
a-1. 1657年、江戸幕府が酒造統制の基本政策として行った
a-2. 将棋の駒の形をした木製の鑑札
a-2-1. 表には酒造人の名前と住所、酒造石高を記載
a-2-2. 裏には「御勘定所」を記載
1-5. 杜氏の減少
1-5-1. 杜氏とは
a. 酒造りの最高責任者、技術職人集団
b. 1つの酒蔵で1人
1-5-2. 1985年:2000人→2005年:900人
1-5-3. 1985年:23組合→2005年:18組合
(日本酒造杜氏組合連合会)
1-5-4. 高齢化によって杜氏が出張できない
1-5-5. 農業や漁業が盛んになったことで、出稼ぎに行く必要がない

2. 老舗の企業例
2-1. 須藤本家
所在地:茨城県笠間市
従業員数:16人(2013年5月現在)
創業:1141年
2-1-1. ファミリービジネス企業
→現在が55代当主(2014年6月現在)
2-1-2. 家訓
a. 良い酒は良い米から
a-1. 純米吟醸、純米大吟醸のみ
b. 良い米は良い土から
b-1. 収穫後5か月以内の新米のみ使用
b-2. 美山錦、五百万石、山田錦、山田穂、日本晴の五銘柄
c. 良い土は良い水から
c-1. 良い穂を結ぶ
c-2. 完熟堆肥
d. 良い水は良い木から
c-1. 川の水、海の水、沼の水などは使用しない
c-2. 伏流水のみ使用
e. 良い木は蔵を守り酒を守る
e-1. 欅の木は正に日本酒にとっても森林浴
e-2. 大きな木のある所に良い水が集まる
2-1-3. 経営方針
a. 「自然の尊厳を大切にする」
b. 「様々な業種の展開不可」
2-1-4.須藤本家の哲学
a. 発酵技術
a-1. 生元
a-1-1. 平安末期の仕込み方法
a-1-2. 蒸した米をすり潰すし、ペースト状にする
a-1-3. きめ細かな洗練された味わい
2-1-6. 商品ラインアップ
a. 郷及誉
a-1無農薬栽培の山田穂
2-1-7. 今後の経営方針
a. 海外進出の強化
a-1. 売り上げの20%が海外輸出

3. 海外へ進出する清酒
3-1.旭酒造
所在地:山口県岩国市
従業員:30名(平成21年度7月現在)
表2. 旭酒造沿革

1948年 旭酒造設立
1984年 桜井博志が社長就任
1990年 東京市場に「獺祭」を投入
2001年 遠心分離機を導入
2002年 モンド・セレクションで最高金賞を受賞
  台湾に進出
2003年 ニューヨークに輸出開始
2007年 フランスに輸出開始
(やまぐち経済月報から筆者作成)

→清酒消費量が減少傾向の中、獺祭は上昇傾向にある

3-1-1.「獺祭」
a. 地元の地名「獺おそ越ごえ」から一字をとって命名。b.“獺祭”の元々の意味は、書物や資料などを広げ散らかす様子
3-1-2.旭酒造のビジネスモデル
「前例や慣習にとらわれず、手法にはこだわらない。酔うため、売るための酒ではなく、味わうための旨い酒を限までコストを抑えて造る」桜井社長
3-1-3.杜氏制度の廃止
a. 1998年、杜氏の移籍を機に、杜氏制度を廃止
b. 杜氏は経営者の桜井社長が兼務
3-1-4. 杜氏制度の問題点
a. 外部の人間である杜氏が転出することで、技術の社外流出の危険性
b. 技術のブラックボックス化(杜氏が技術情報を抱え込みがち)
c. 杜氏が居なくなると、味が変わってしまう
3-1-5. 純米大吟醸に特化した醸造システム
a. 単純作業になり、専門性の高い技術を短期間で習得できる
b. 社員自らで考えたアイデア、工夫が生まれやすい
→「ルーチンワークの中で最高の条件と技術を確保できるシステム」の構築」
3-1-6. 四季醸造
a. 冷吟醸は寒さの厳しい冬季に造られるのが一般
b. 旭酒造では厳格な温度管理によって蔵全体を冷蔵庫化することで、1年を通して醸造可能
3-1-7. ビジネスライクな仕入・販売体制
a. 国内外問わず、販売店と特約店契約だけを結ぶ
a-1. 流通段階での酒質劣化防止
a-2. ブランドイメージ低下の防止
3-1-8. 神業よりも教科書通りを重視
a. 「酒は生き物」
a-1. 人間の五感や認知を越えた神秘の部分の存在が酒造りの魅力
b. 分析手法の進化
b-1. 酒造りと分析数値との相関関係が解析される
b-2. 「酒造りの技術情報の約95%がオープンになっている。その情報を基に本気で醸造手法を研究すれば、たとえ素人集団でも高品質の酒の醸造が可能」桜井社長
→作業のマニュアル化

3-1-9.世界を睨んだ事業展開
2000年から海外進出を始め、2014年3月現在で18か国に進出
a. 日本食レストランが多いニューヨークへの出店
a-1. 世界の中心都市
a-2. 現地の富裕層をターゲット
b. 美食国フランス
b-1. ワインの匹敵にさせる
c. 2011年、Kosherの認証を取得
c-1. Kosherとは
ユダヤ教で定める食べ物に関する規定のこと。原材料まで厳しく検査されることから、米国では高品質の食材と認知され、市場が拡大されている

4. 海外へ進出する清酒
4-1. 右肩上がりの海外清酒市場
2003年:39億2,200万円
2013年:1,05億2,400万円
(清酒の輸出金額
 国税庁HPより)
4-2. IWCにおける清酒部門の設立
IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)1948年に設立され、世界最大規模・最高権威に評価されるワイン・コンペティション。毎年世界中から9000銘柄を超えるワインが出品される。
(日本政策投資銀行から引用)
4-2-1. 2007年、SAKE部門が設立
a. 審査部門
純米酒の部、純米吟醸酒・純米大吟醸酒の部、本吟醸酒の部、吟醸酒・大吟醸酒の部、古酒の部
a-1. ゴールドメダル、シルバーメダル、ブロンズメダルを選定
a-2. 2013年度は235蔵、583銘柄が出品

5.まとめ
5-1. 清酒の需要が減少している原因
a. 高齢化・人口減少
b. 嗜好や生活習慣の変化
c. 代替品の台頭
d. 清酒の相対的イメージ低下
e. 参入障壁が高いため新規参入が少ない
5-2. 杜氏などの酒造りに関わる人の高齢化
5-2-1. 後継者不足
→旭酒造のような社員だけで酒を造る手法が登場
5-3. 2005年以降、海外清酒市場は伸びている
5-3-1. 主な相手国は米国、韓国、台湾、香港
5-3-2. IWCが清酒の部門を設置
→日本の良質な酒が世界でも認められている
5-4. 需要の掘り起こし活動
5-4-1. 高付加価値商品の開発
無農薬の山田誉や低アルコール、フルーティーな商品のPR活動の展開
Ex)月桂冠(1637年創業)
2008年9月、清酒では初の「糖質0」を販売
<今後の展望>
今回は長寿企業の業種別構成比で最も多かった「清酒製造」について考察した。清酒業界が衰退している中で、老舗は味にこだわり、ターゲットを海外へ向ける柔軟力を持った対応をしていることがわかった。次回は国内の長寿企業の創業順でトップ10の中に4社が旅館経営だったので、旅館経営について考察する予定。
< 参考文献・URL >
国税庁2014年3月「酒のしおり」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/shiori-gaikyo/shiori/2014/pdf/000.pdf
国税庁「輸出の動向について」
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2013/sake_yushutsu/index.htm
国税庁「清酒の製法品質表示基準」
https://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/hyoji/seishu/gaiyo/02.htm
国税庁「清酒製造業の概況」
https://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/shiori-gaikyo/seishu/2012/pdf/01.pdf
日本政策投資銀行地域企画部「清酒業界の現状と成長戦略」
http://www.dbj.jp/pdf/investigate/etc/pdf/book1309_02.pdf
Wikipedia 「酒株」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%85%92%E6%A0%AA#.E5.B0.8E.E5.85.A5.E3.81.AE.E8.83.8C.E6.99.AF
剣菱の歩み
http://www.kenbishi.co.jp/history/
立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科 右田 圭司 「清酒消費量と清酒製造業数の 将来予測について」
http://www.business-creator.org/wp-content/uploads/2012/11/migita_gakkai9th.pdf
財団法人福島経済研究所「酒類業界特に清酒製造業の現状と今後」
http://fkeizai.in.arena.ne.jp/pdf/cyousa/chousa_2010_07_1.pdf
日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会「日本酒の基礎知識」
http://www.sakejapan.com/index.php?option=com_content&view=article&id=40&Itemid=54
日本酒専科「杜氏とは」
http://www.sake-senka.jp/3/3/3_3f.htm
All About 「歴史の古い、清酒蔵」ベスト5
http://allabout.co.jp/gm/gc/225336/2/
須藤本家HP
http://www.sudohonke.co.jp/
地酒蔵元会「飛良泉本舗」
https://www.kuramotokai.com/kikou/12/history
全国日本酒の口コミ・評価サイト・日本酒物語「日本酒ランキング」
http://www.sakeno.com/ranking/
HOT PEPPER「外で評価が高まる日本酒!復興支援で国内出荷量も増加!」
http://www.hotpepper.jp/times/trend/nt0000031/p2/
BMBB.JP 「カンブリア宮殿 山口県の名酒「獺祭」旭酒造の桜井社長が登場」
http://bmbb.jp/2014/01/dassai/
やまぐち経済月報 2009年8月「企業紹介~獺祭~」
http://www.yama-kei.com/pdf/kigyou_59_asahishuzou.pdf
Business Media 誠「日本酒の衰退止まらず……売上高上位20社のうち増収は1社のみ」
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1201/26/news056.html
日本政策銀行「酒類業界の現状と将来展望(国内市場)」
http://www.dbj.jp/pdf/investigate/area/niigata/pdf_all/niigata1202_02.pdf
国税庁Sakeジャパンチーム「日本産種類の輸出動向と輸出環境整備に向けて」
http://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201405e.pdf
茨城経協2013年5月号 「須藤本家株式会社 TOP INTERVIEW」
日本経済新聞 2014年2月11日「乾杯条例が醸す郷土愛」日本経済新聞社
帝国データバンク2009「百年続く企業の条件 老舗は変化を恐れない」朝日新書
(最終閲覧日:2014年6月3日)
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