【ワシントン清水憲司】米大統領選で共和党のドナルド・トランプ氏(70)が勝利したことを受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)が12月に利上げするとの観測が一段と強まっている。同氏が掲げる減税やインフラ投資拡大が、米経済を底上げするとの期待が背景にあり、外国為替市場ではドル高が進んでいる。
「税制を簡素化し、減税する」「道路や橋、トンネル、旧式の空港(への投資)に目を向ける」。トランプ氏は13日出演した米テレビ番組で、米経済の成長加速に改めて意欲を示した。一方で、市場が懸念する保護主義的な政策について、選挙後はほとんど触れない姿勢を保っている。
今月8日の大統領選直後は、事前予想を覆してトランプ氏が勝利したことに市場が動揺し、日本市場で株価が急落するなどの混乱がみられた。しかし、トランプ氏が過激な保護主義に関する発言を控え、減税やインフラ投資など成長重視の政策に焦点が当たることで、市場では景気加速への期待が先行している。
FRBは経済や雇用の堅調な回復が続くことを前提に、12月13、14日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で1年ぶりの利上げに踏み切る姿勢を示してきた。トランプ氏勝利の直後は利上げ観測が一時後退したものの、その後はニューヨーク市場で株価が上昇を続けるなどして、再び利上げ観測が強まった。
シカゴ・マーカンタイル取引所によると、14日時点で市場は12月の利上げ確率を約85%と見込み、ほぼ確実視している状況だ。FRBのフィッシャー副議長が11日、「金融緩和を徐々に解除する根拠は極めて強い」と利上げに自信を示したことも根拠になっている。
ただ、トランプ氏の保護主義的な政策などへの市場の警戒感はくすぶっており、FRBは先行きのリスクなどを慎重に見極めながら、利上げの可否を判断するとみられる。