「トランプ相場が持続する」とは言い切れない過去の「米大統領選後の株価」を検証する|マネブ

マネブNEWS:〔2016.11.15〕融資の相談ってどこにすればいいの? 現在の記事数:216160件

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「トランプ相場が持続する」とは言い切れない過去の「米大統領選後の株価」を検証する


紳士的に振る舞って小さくなったように見えるトランプ氏。この後の株価もイマイチ?過去の大統領選後の株価はどうなっているのか、データで検証してみよう(写真:AbacaUSA/アフロ)目先の「相場のピーク」は12月あたり?

アメリカ大統領選挙後の相場はどうなるのか。読者の方々が知りたいのはこれに尽きる。

NYダウは史上最高値を更新し、日経平均株価も4月の戻り高値1万7613円(取引時間ベース)を上抜けた。筆者は前回のコラム(11月7日配信)で「日本株がトランプショックで急落なら買いだ」と主張したが、急落後はじりじりとした反発を想定していただけであって、「V字回復(いわゆる往復ビンタ)」後の一段高は全く考えていなかった。

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トランプ氏が勝利宣言で「大人の対応」を示したことから世界が安心したこともあるが、やはり「政策」への期待感と思惑が、足元の「株高ドル買い」のメイン材料と考える。「ご祝儀相場」との声も聞かれるなか、具体的な政策がある程度固まる12月あたりに短期的なピークを迎えるのではないかと筆者は考える。

トランプ氏が掲げそうな政策に関しては、様々なメディアが報じていることから簡単な説明に留めるが、主なところでは、

・法人税率を35%から15%に引き下げ・ドッド・フランク法(金融規制改革法)を廃止・環太平洋経済連携協定(TPP)反対・エネルギー規制の緩和・インフラ投資の拡大・パリ協定反対、石炭産業の保護・移民の入国規制の強化・メキシコとの国境に壁

これらは、これまでのトランプ氏の発言や100日計画などを元にした内容のため、2017年1月20日の大統領就任以降、本当に推し進めるかどうか定かではない。

現状、次期大統領に決定した後のトランプ氏はこれまでの暴言、罵詈雑言を発していた姿とは全く異なる紳士的な姿勢を示している。共和党との融和を進める点も大きな変化だ。公約をそのまま政策に盛り込むかは不明だが、日米の株式市場は「ドッド・フランク法(金融規制改革法)を廃止」「インフラ投資の拡大」などの政策をハヤしている。

そして、財政拡張策が予想されていることや、インフレ進行の思惑などから米国債券(10年債)の利回りは、8日の終値1.8547%から2.1501%(10日終値)まで急騰した。昨年12月に利上げした時期の債券利回りが2.2%前後なので、ほぼその水準と同じである。日米金利差が2%超まで拡大すれば、さすがにドル買い円売りの流れが強まる。昨年から続く円高に頭を悩ます日本銀行からすれば、トランプ氏勝利に伴う米国債券利回りの上昇は、円安を生む神風とも言えよう。

しかし、気をつけなくてはいけないことがある。あくまで「政策に対する思惑が先行している」という点だ。市場では、米大統領交代のタイミングは政策への期待感などから上がりやすいというアノマリーも聞かれる。

大統領選後の株価はどうなっているのか

そこで、1960年の大統領選以降の実際のパフォーマンス(S&P500)を確認してみたい。大統領選投開票日に比べて、「大統領就任日・大統領就任100日後・大統領選の翌年末」の3つの株価がどうなったかである(いずれも初当選時)。

1960年(ケネディ氏)11/9 55.35p→1/20 59.96p、 4/30 65.31p、12/29 71.55p1968年(ニクソン氏)11/6 103.27p→1/20 101.69p、4/30 103.69p、12/31 92.06p1976年(カーター氏)11/3 101.92p→1/20 102.97p、4/29 98.44p、12/30 95.10p1980年(レーガン氏)11/5 131.33p→1/20 131.65p、4/30 132.81p、12/31 122.55p1988年(ブッシュ(父)氏)11/8 275.15p→1/20 286.63p、4/28 309.64p、12/29 353.4p1992年(クリントン氏)11/3 419.92p→1/20 433.37p、4/30 440.19p、12/31 466.45p2000年(ブッシュ氏)11/7 1431.87p→1/19 1342.54p、4/30 1249.46p、12/31 1148.08p2008年(オバマ氏)11/4 1005.75p→1/20 805.22p、4/30 872.81p、12/31 1115.10p

太字が「勝ち」(上昇)だが、1960年以降のデータを見ると、大統領就任時が5勝3敗。大統領就任後100日間のハネムーン後(メディアなどが政策への批判を控える時期)でも5勝3敗。大統領選挙翌年の年末では、4勝4敗という結果となっている。

このように、政策や時代背景を無視した数字だけの結果では、そこまで強いと断言できる内容ではない。

1960年のケネディ氏、1988年のブッシュ(父)氏、1992年のクリントン氏は高いパフォーマンスが得られたが、1968年のニクソン氏、1976年のカーター氏、1980年のレーガン氏、2000年のブッシュ氏のようにジリ安の展開もある。正直なところ、まちまちといった状況だ。

「大統領選後に米国株が上がりやすい」とは言い切れず

上記の動向を見る限り、大統領選挙後、2017年1月20日の大統領就任式までの2カ月間、米国株が上がりやすいというアノマリーは微妙なところだ。現在、政策への期待感から強い相場展開が見られるが、あくまでも思惑的な動きであることは頭に入れておきたい。

つまりは、今後、固まっていくであろう政策内容、実現性などを見極める必要があるということだ。「噂で買って事実で売れ」という格言通り、今回のトランプ相場は、政権の主要閣僚が判明し、政策の方向性がある程度固まりそうな11月末から12月初旬あたりに短期的なピークを迎えると考える。

直近では、東証1部の売買代金が連日で3兆円を超えるなど投資資金が流入していることなどを考慮すると、日経平均が1万8000円台に乗せる可能性は十分ありそうだ。

ただ、この米国発のトランプ相場が、中長期的な上昇トレンドを生み出すものかどうかの判断は現状ではできない。

今後、多少は流れには乗れそうだが、不透明要因があまりにも多いことから、ここからは利益を大きく取れるような地合いではないと考える。

マネマガ
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引用元:東洋経済オンライン

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