目次
- 村上龍「五分後の世界」
- 以前の「五分後の世界」の感想
- 村上龍「空港にて」(「どこにでもある場所とどこにもいないわたし」改題)
- 村上春樹「国境の南、太陽の西」
- 以前の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」の感想
- 以前の「アンダーグラウンド」の感想
- 村上龍と村上春樹
- ハードボイルドの話
- リンク
村上龍「五分後の世界」
第二次世界大戦で日本が降伏しなかったパラレルワールドに飛ばされる話。純文学という枠ではあるけどパンクSF方向でもある。アルフレッド・ベスター「虎よ虎よ」あたりの。フィクション≒シミュレーションSFということで。
アンダーグラウンドが軍事最優先の国家として合理性を追求した結果、技術開発による経済的自立と主体的な共産性質になっているのは興味深い。
「世界中が理解できる方法と言語と表現」をモットーとしており、個人レベルでも、豊かではないが見られていることを意識して身だしなみを整えておきたいと考えるなど、行き届いている印象。アンダーグラウンドのような国家は個々人のモラルが成熟しないと国として成立しないので、賛否はともかくある意味では理想的とも言える。
ワカマツのドビュッシー「版画」をはじめとする音楽の表現は素晴らしい。言葉以外の表現を言語化するのは小説の魅力的な部分。そういえば宇宙人に会ったらコミュニケーションは音楽かダンスだとかいうのを聞いたことがある。星新一は宇宙人に対しては数学にしてたけれど、一方では人間がトリップして音楽とダンスに身をまかせ解放される話もあったりするので、時間や空間も包括される世界という言葉。
なお続編として小説「ヒュウガウイルス-五分後の世界Ⅱ」ゲーム「五分後の世界Ⅲ」があるとのこと。
以前の「五分後の世界」の感想
村上龍「五分後の世界」読了。
作品における「組み合わせ」の件が興味深かった。と思っていたらあとがきで「物語の設計図」として触れられていたので、少々浮いていたのかも知れない。個人的にはそういう構成で為されるものも探したい。
作品は、小説として面白かった。おそらく時期を変えて読むとまた別に面白いだろう。
ところで村上龍の本を適当に開いてみると、段落がとても少ないのにギョッとする。果たして読めるものかと読むと読めるので、そういえば作家の句読点について、分析したような本があったが村上龍はあったかな。
あとこの人はおそらく常用漢字しか使っていない。上記作品中に、皆んなにわかる形で伝える重要性、というようなことも書いてあり、ふーん、と思う。
村上龍「空港にて」(「どこにでもある場所とどこにもいないわたし」改題)
日本以外に希望を見出す人の短編集。五感にフォーカスして緻密に描く「時間を凝縮する手法」。退屈になりかねないところをギリギリでまとめて、技術的には「五分後の世界」より洗練されている。この中間として「イビサ」があるらしいのでまた。
村上春樹「国境の南、太陽の西」
幼少時に離れてしまったソウルメイトを想いながら、大人になってしまうことの哀しさ。
このエントリーでこの本は違うだろうけれど、あるものを食べるようにある本を読むのでこんなことに。胃に入れば同じだからってビール入り餃子は困るけれど。
ただ「五分後の世界」とも主人公は壮年にさしかかっている男性なので、彼らが喪失した時から立ち上がる物語という点では共通しているとも言える。
以前の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」の感想
読みかけだった、村上春樹「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」をまた読み始めたり。ふたつの話の接点がだいぶ分かった中盤。
5センチの本は結構汚れていて少々引き気味ではあったものの、実際読み始めると、わくわくするというのか、次の展開が気になってページをめくっています。でも必ずしもハッピーエンドとは思えなさそうなのがなぁ。
以前の「アンダーグラウンド」の感想
ぱらぱらと見たとき、井上夢人「99人の最終列車」みたいな作品なのかと借りてみたら、地下鉄サリン事件の被害者インタビューだった。とりあえず読んでみて、もうあと少しなのだけれど、いまひとつ現実感が湧かない。発言も人によっては実際被害を受けたにも関わらずどこか現実と切り離しているような人もいて、なんだかよくわからない。
読了。サリンの影響で、瞳孔が縮んで天気のいい日だったのに空が暗かったこと、物忘れが激しくなったと多くの人が言っていたことと、日常と非日常が道路一本で隔たれているという話が印象に残った。そういえば同1995年の阪神大震災で、兵庫と大阪を行き来した人たちもそういうようなことを言っていた。そんなわけのわからない事態に陥ったとき、また中途半端リアルな想像をするのだけど、私はどうしたものかわからず途方に暮れている。
村上龍と村上春樹
どっちも楽しめるし、二人に限らず忘れてしまうので本を読むときはたいてい新鮮に感じる。中島みゆきいわく「忘れるって素敵なことですね」。
両者とも95~00年ごろの国内問題が作風に影響を与えていて、その十年くらい前、いまは絶版になっている二人の対談「ウォーク・ドント・ラン」があるらしいので、機会があれば読んでみたい。
ハードボイルドの話
ハードボイルドだけでいうと普通の男性が銃を撃ちまくり美女がいきなり脱ぐ、北方謙三とか勝目梓なイメージ。
とはいえ脱線すると北方謙三「道誉なり」「老犬シリーズ」、勝目梓「あしあと」になったりする。売れ筋以外の断面を書き出した小説はいい。
ハードボイルドといえばレイモンド・チャンドラー「さらば愛しき人よ」らしく、いろんな話の端でみかけることがあるので一度読んでみたい。清水義範「おもな登場人物」では格好の餌食になっている。おかげで「モンテクリスト伯」のおもな登場人物で笑ってしまった。
リンク
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