東大目指す人工知能の模試の結果、なぜ英語・国語は不得意?
「人工知能は東大に合格することができるのか」。14日、人工知能が予備校の模試に挑戦した結果が発表されました。数学は偏差値76という好成績を収めた一方で、英語や国語は伸び悩みました。一体なぜなのでしょうか。
ステージの上に現れたアーム型のロボット。その名も、人工知能で東大合格を目指す「東ロボ」くんです。右手に持っているのはボールペン。これから東大の模試を解こうというのです。
「ここは突っ込みどころ満載。書き順は無視してます」(ロボットを開発した デンソーウェーブ 澤田洋祐室長)
将棋や囲碁でトップ棋士を破るなど急速に進化する人工知能。その人工知能は、東大に合格することはできるのか。東ロボくんは、問題を入力すると検索システムを駆使して、教科書など膨大なデータから答えを探し出します。
今年初めて、その答えを受験生と同じ答案用紙に書き込むことに挑戦しました。漢字やひらがな、数字、全てをペンで書くロボットは世界でも例がないといいます。ボールペンを持った東ロボ君の右手がゆっくりと上がっています。東ロボ君、文字は書けても問題用紙を裏返せないため、手伝ってもらっています。人の手も借りて、何とか答案を書くことができました。
では、肝心の成績はどうだったのでしょうか。東ロボ君は今年4回目となるセンター試験の模試を受けました。結果は、去年と同じ偏差値57でした。東大には届きませんでした。東ロボくんが好成績を収めたのが、数学や物理。特に数学はなんと偏差値76。一方で、苦手としたのが英語や国語でした。
なぜ科目によって大きな差が出たのでしょうか。例えば、2人が会話している内容を把握し穴埋めする問題。
「本屋までもう少し歩かなきゃ」
「待って、靴ひもほどけているよ」
「ありがとう、よくあるんだ」
「5分前に靴ひも結んでいなかった?」
正解は、靴ひもがほどけていることを指摘するものです。東ロボくんの回答は「長く歩いたね」。正解できませんでした。
実は、東ロボくんは会話の意味を理解していないのです。ただ単語の列を膨大なビッグデータから調べて、統計的に最も自然な流れを選んでいるだけなのです。
「東ロボくんが捉えた会話の流れでは『長く歩いた』が一番自然だと」(英語を担当 秋田県立大学 堂坂浩二教授)
「『walk』の後『walked』があったり、『minutes』の後『time』があったり」(NTTコミュニケーション科学基礎研究所 東中竜一郎主任研究員)
「複数文だとこういうシチュエーションで人間はこう判断する。靴ひもの例ではほどけたら嫌な気持ち。直したいという価値判断がある」(英語を担当 大阪工業大学 平博順准教授)
人工知能は、こうしたことを理解したり、判断したりできないのです。
研究リーダーの新井教授は、今の人工知能の限界をこう指摘します。
「雨が降ったら傘が無いと困るとか、運動会の日には天気が良かったらうれしいとか、当たり前のことが東ロボくんは全然分からなかったりする。教科書に書いていないので。(東ロボくんは)一部とてもよくできることはあるが、人間ができる当たり前のことができない。人間はAI(人工知能)に仕事を奪われる一方にならずに済むはず」(国立情報学研究所 新井紀子教授)
そのうえで新井教授は、「人工知能ができない部分を人間は伸ばす必要がある」と話します。
「一生懸命暗記する、計算するだけ、言われたとおりにやるだけでは東ロボくんに勝てない。子どもたちには東ロボくんと差別化して、意味が分かって文章を読むという力をつけてほしい」(国立情報学研究所 新井紀子教授)
これからの教育はどうあるべきか。東ロボくんの挑戦は、私たちに問いかけています。(14日17:40)