硫黄の香り漂う「高湯温泉」で、白濁の源泉かけ流し湯三昧

2016.11.12

福島県福島市街地から車で30分。曲がりくねった山間の道をぐんぐんと登り、吾妻山の中腹に現れるのが「高湯温泉」です。高湯温泉の開湯はおよそ400年前。山形県の蔵王温泉、白布(しらぶ)温泉と並び、奥州三高湯と称され、古くから湯治場として多くの人が訪れてきました。今回は立ち寄りで気軽に楽しめるスポットをご紹介します。

高濃度の硫黄泉を多彩な風呂で楽しむ

高湯温泉の源泉の数は10カ所もあり、毎分3,258リットルを湧出する豊富な湯量が自慢です。この源泉を9軒の宿と1軒の共同浴場で引湯しており、加水・加温なしの贅沢な源泉かけ流しの湯を楽しむことができます。

最初に訪れたのは、高湯温泉の入り口に位置する旅館「玉子湯」。明治元年創業の歴史ある旅館です。
▲車から降りるとさっそく硫黄の香りに包まれ、温泉気分が盛り上がります    
3カ所の内湯と3カ所の露天風呂、1カ所の足湯があり、すべての風呂が源泉かけ流し。敷地内にある2つの自家源泉から直接引いた湯を楽しめると、温泉ファンの間で評判の湯宿。日帰り入浴では館内の内湯「仙気の湯」以外の風呂を利用することができます。

玉子湯には温泉庭園があり、散策をしながら湯浴みを楽しめるのが魅力。温泉庭園には、全長100mほどの間に男女入れ替わりの露天風呂「天渓の湯」・「天翔の湯」、女性専用露天風呂「瀬音」、萱ぶき小屋の内湯「玉子湯」、足湯が並び、それぞれ独立した湯小屋になっています。
▲温泉庭園の中を源泉の川が流れており、川沿いに風呂が並んでいます    
敷地内には源泉が湧出しており、源泉から各湯船に湯を運ぶ湯樋には「湯の花」と呼ばれる温泉成分がたっぷりと沈殿しています。全国でも有数の硫黄濃度を誇る温泉として知られる高湯温泉の湯へ、期待が高まります。
▲手に付いた湯の花は硫黄の匂いたっぷり。洗っても一日中匂っているほどの高濃度!   

野趣溢れる露天風呂から湯浴みスタート!

まずは、女性専用露天風呂「瀬音」へ。 小屋の入口をくぐってびっくり。脱衣スペースと露天風呂の間には扉がなくつながっている造りで、入ってすぐに露天風呂が目に入ります。お風呂へ入る準備をしながら、湯けむりを感じ、早く湯につかりたい気持ちでいっぱいです。    
▲木製ロッカーにカゴがあるだけのシンプルさに秘湯ムードを感じます    
▲酸性が強いため、入った瞬間は少しピリッと感じる人もいるそう    
湯の色は淡いグリーンや青みがかった乳白色で、時間や天候によって微妙な色の変化を楽しむことができます。泉質は硫酸塩泉で、硫黄の匂いが強い濃厚な湯です。玉子湯の名も、「ゆで玉子のようなにおいがする湯」や「入浴すると玉子のようなつるつるの美肌になれる」ということから、その名で呼ばれるようになったと伝わっているそうです。    
▲瀬音の風呂には半分ほど屋根があり、雨や雪の日もゆったりと入れます    
瀬音の湯の温度は40~42度。気候によって多少の変動はあるそうですが、体がじわりと温まる心地よい湯です。豊かな自然を目の前に、川のせせらぎだけが聞こえる静かな露天風呂。大人の贅沢な時間を感じます。

「瀬音」から10mほど離れた場所には露天風呂「天渓の湯」、「天翔の湯」も。
▲萱ぶき屋根の脱衣所が素朴な風情を醸しています
「天翔の湯」と「天渓の湯」は、いずれも大きな岩が印象的な野趣あふれる露天風呂。目の前の山に向かって遮るものがなく、開放感たっぷりの湯浴みを楽しめます。    
▲自然の中で心からリラックスできそうな「天翔の湯」
▲「天渓の湯」。「天渓の湯」と「天翔の湯」は1日おきに男女が入れ替わります

ノスタルジックな雰囲気の湯小屋へ

露天風呂を満喫した後は、萱ぶき屋根の湯小屋「玉子湯」へ。およそ140年前に建てられたもので往時の面影を残す貴重な建物です。
▲建物上部には、源泉の硫黄ガスを抜くための空間が空いている独特な造りになっています
中は、こじんまりとした脱衣スペースと木枠の風呂のみ。奥の湯樋から絶え間なく、源泉が注がれています。昔は男女混浴だった湯小屋。いまもシンプルな仕切りのみで分けられており、混浴だったころの名残を感じられます。    
▲灯りは裸電球が一つのみでレトロな雰囲気    

足湯だって硫黄の匂いがぷんぷん!

温泉庭園の最後は、一番奥まった場所にある足湯を体験します。こちらも源泉かけ流しという贅沢な足湯です。
▲ドバドバと湯が湧き出ていて、足湯のためだけに流れていきます
足湯も惜しげもなくかけ流しで楽しめるのは、豊富な湯量を誇る高湯温泉ならでは。山間のひんやりとした空気の中での足湯は、いつまでも入っていたくなる黄金の組み合わせではないでしょうか。

ついつい時がたつのも忘れて入っていたい気持ちになりますが、高湯温泉はお湯が強いため、長湯は禁物。少し名残惜しいくらいにとどめて、玉子湯を後にしました。    

静寂に包まれた湯のまちの共同浴場へ

体がポカポカと温まった後は、高湯温泉散策へ。まずは玉子湯から徒歩8分ほど離れた場所にある「高湯ダム公園」に向かいます。
さらに数分歩くと共同浴場「あったか湯」に到着です。こちらは建物のすぐそばで湧出している濃厚な源泉を引き湯している、かけ流しの湯が自慢。源泉との距離は60mとあまりにも近く、湯の硫黄ガスを十分に抜くことができないため、内湯は作らずに露天風呂のみという珍しい共同浴場です。
▲2003年開業の比較的新しい建物。プライベート感満載の貸し切り露天風呂もあります
露天風呂は「木」と「岩」の2種類。不定期で男女入れ替え制です。自然に湧出した湯を手を加えずに使っているため、湯船は小さめに抑えられています。昔ながらの湯治場を思わせるようなシンプルさが魅力です。
▲露天風呂「岩」。となりの「木」へ湯を運ぶ湯樋が通っています
▲露天風呂「木」。冬には雪が降り積もる中で入浴できます
加水・加温なしの源泉かけ流しの湯を大人税込250円とリーズナブルな値段で楽しむことができるので、高湯温泉を訪れたらぜひ立ち寄りたいスポットです。
共同浴場「あったか湯」から50mほど離れた場所には「あったか温泉公園」があります。気軽に高湯温泉の湯に触れてほしいと造られたこの公園には、毎分100リットルもの湯が注がれる温泉の池があります。温度は41度前後。誰でも自由に湯に触れて楽しむことができます。
▲温泉の池も贅沢な源泉かけ流しです
高湯温泉の中心部にありながら騒々しさはまったくありません。聞こえてくるのは時折通る車の音とどこかで流れる水の音のみで、その静けさに癒されます。
開湯以来「一切の鳴り物を禁ず」というしきたりを守り、古き良き湯治場としての静かな佇まいを守り続けている高湯温泉。華やかな歓楽街や流行のレストランなどはありませんが、この地を愛する人々が山への感謝と畏敬の念をこめて守る湯は何にも代えがたい価値のあるもの。
この場所へ来なければ味わえない湯治場の風情と湯を求めて、高湯温泉を訪れてみてはいかがでしょうか。
菊地裕子

菊地裕子

広告営業、編集プロダクション勤務を経て、仙台を拠点に活動するフリーのライター。グルメ、観光を中心に幅広い記事を執筆中。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。

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