14日は世界保健機関(WHO)が定めた国際糖尿病デーだ。日本の糖尿病患者は「予備軍」も含めて2200万人ともいわれる。最近の研究で糖尿病の原因に歯周病が関係していることがわかってきた。一方、これに対する内科医と歯科医の意識は低く、患者に情報は行き渡っていない。このテーマに詳しい医学博士・糖尿病専門医の西田亙氏と、歯科医の森昭氏に話を聞いた。
■体重18キロ減の理由
西田亙(にしだ・わたる)医学博士・糖尿病専門医
1962年、広島市生まれ。88年、愛媛大学医学部卒業。93年、同大学大学院医学系研究科を修了し、医学博士を取得。大阪大学での基礎研究生活を経て2012年に、にしだわたる糖尿病内科を開院。「社会病」である糖尿病の予防を啓発することを使命としている。医科歯科連携の重要性を伝えるために全国各地でセミナーや講演を実施している。
――はじめに糖尿病専門の西田先生にお聞きしますが、糖尿病の予防に歯周病の治療が有効だというのは本当ですか。
西田氏 まずこの写真を見てください。左は7年前、歯周病治療を始める前の私です。体重は92キロ。まさに“医者の不養生”ですが、血糖値は高めで糖尿病予備軍でした。下はその頃の歯の写真です。リンゴをかじると血だらけになるような歯周病でした。それが、あるきっかけで歯のケアをするようになり、体重は18キロやせて74キロになりました。
――そのきっかけとは。
西田氏 7年前、歯科医師会に呼ばれて、糖尿病と歯周病について講演したのをきっかけに共同研究が始まったのです。それ以来、食後にはフロス(歯間清掃用の糸)をし、定期的に歯石を取ってもらうようにしました。歯をきれいにすると、汚したくないので間食が減ります。不思議と体を動かして汗をかきたくなり、ウオーキングや自転車に乗るようになりました。
森昭(もり・あきら)歯科医師
1964年、京都府舞鶴市生まれ。88年大阪歯科大学卒業後、勤務医として経験を積み、95年竹屋町森歯科クリニック開業。2007年メディカル&デンタルエステ協会を設立。唾液分泌を促進させる予防歯科(デンタルエステ)を全国の歯科医師、歯科衛生士に啓発。著書に『体の不調は「唾液」を増やして解消する』(PHP研究所)、『歯はみがいてはいけない』(講談社+α新書)がある。
――森先生は歯科医の立場から糖尿病予防としての歯のケアを提唱されています。
森氏 歯科というのは、ただ歯を治すだけでなく、内科の予防に役立つのだということを訴えています。米国では予防歯科が進んでいて、虫歯だけを治す歯医者さんは「カーペンター・デンティスト(大工みたいな歯医者)」と皮肉を込めて呼ばれます。まず歯科で体の異変を察知する。歯科は、病の進行の最前列に位置すると考えているのです。ただ私もそれに気づいたのは10年前ぐらいのことです。
――どんなきっかけですか。
森氏 当時、歯周病の治療の一環で、口の中をマッサージして唾液を出す処置をしていました。唾液には歯周病菌の力を弱めたり、口の中の傷を治して、菌が血管に入り込むの防ぐ効果があります。あるとき、患者さんから血糖値がよくなった、血圧がよくなったという声が上がってきました。顔のほてりがなくなったとか、更年期障害が軽くなったとか。なにか体に関係あるなと。