あらすじ:現場に謎のメモが残される猟奇殺人事件が矢継ぎ早に発生するが、その事件は雨が降る日のみ起こっていた。一連の事件の関連性を察知した沢村久志刑事(小栗旬)は、自分の妻子が狙われていることを知る。やがて、カエルのマスクをかぶったカエル男の存在が浮かび上がり、犯人に近づいていく沢村だったが、カエル男の仕組んだわなにはめられ窮地に陥り……。(シネマトゥデイ)
製作国:日本 上映時間:132分 製作年:2016年
監督・脚本:大友啓史 原作:巴亮介
キャスト:小栗旬 / 尾野真千子 / 野村周平 / 丸山智己 / 伊武雅刀 / 田畑智子 / 市川実日子 / 大森南朋 / 松重豊 / 妻夫木聡 等
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邦画サイコサスペンスの佳作!
【るろうに剣心】の実写化を成功に導いた大友啓史監督が、同名漫画を実写化した【ミュージアム】を観て来ました!主演は【クローズZERO】【ルパン三世】の小栗旬。いつものようにラストの結末は伏せた、ネタバレあり感想は、
それなりに面白かった!
このくらいの『まぁまぁ』なテンションです!観る前に想像してたような面白さはちゃんとありました。
原作漫画を連載時に読んでた立場としては、これ原作を知らない方がより楽しめたんだろうな~!とは思いました。原作との比較の事だけ先に言うと、ほとんど忠実に映像化してたんじゃないかな? それくらい原作漫画全3巻を変に端折ること無く上手くまとめてましたね。
その反面、目新しい展開はあまり無く、先の展開が分かった状態で観るので、終盤のある『強烈な展開』に対しても特に驚きは無かったです。なので原作未読の方が、小栗旬演じる刑事の沢村と同様カエル男に振り回されるんじゃないかな。
雨合羽を身に纏い雨の日だけに現れるカエルのマスクをした男が起こす連続猟奇殺人に飲み込まれる主人公の刑事とその家族の物語。
映画【セブン】や【ソウ】、はたまた【ハンニバル】などのサイコサスペンスを連想させる作風。そして該当人物(被害者)に向けられるバラエティに富んだ残虐な仕打ち。
シーンとして直接的なゴア描写は無いけど、美術や特殊メイクが頑張ったであろうエグい死体(作品)はなかなかそそるモノがある。凄惨な私刑や死体の数々をテンポ良く見せてくれる前半は普通に面白かったです!
現場検証時に血生臭い死体を見せつつも、足りない分を後に写真でも見せてくれるのも嬉しい。拉致した人間の縛り付けの荒さ・無数の蝿・どこの部位か分からない肉片・抜けた髪の毛など、それ等の細かいディテールがより事件の残忍性を引き立てる。これをR指定無しで見せてくれるってのもまたイイじゃん!
漫画に出て来るようなロケ地選びや、カエル男の自宅のセット、終始雨を降らす陰鬱な空気感、家に侵入したカエル男が出てくるまでの焦らし演出含め、サイコサスペンス然とした原作漫画に真摯に向き合っている印象を受けました。
意気込みがパない小栗旬!
そんな作り込まれた日本版サイコサスペンスの空気感に乗って、張り切る主演の小栗旬も絶好調でしたね!ほとばしる小栗!
自分の妻と子供がターゲットになってからの警察署内で喚き散らすシーンは、舞台演技的で「いつもの小栗旬やん」と思うも、全体的には家庭を顧みない脂の乗って来た刑事の佇まい&後輩に指南する先輩の貫禄も出てたし、カエル男に終始翻弄れる沢村をシッカリ演じ切ってました。
特に良かったのは終盤『あの扉』を開けた時の『絶望の表情』ですね。あの表情1つで納得させられました。後半からやたら独り言が多かったりしたけど、なんかOK!みたいな。
それと沢村の上司を演じた松重豊がカッコ良かった!彼の刑事としての姿勢が、まわりの警察官や映画全体をピシっ!っと引き締めるというか。この手の映画の警察は無能に描かれがちなので、非常に好感の持てる美味しい役でした。
カエル男役の妻夫木聡も、猟奇的な殺人鬼キャラとしてはやや類型的で、取り立てて新鮮味は無かったけど、彼の出演と宣伝は功を奏しているなと。
不満点もある
大きな不満点としては、本作誰もが感じる、執拗に繰り返される回想シーンのくどさ!本作の5分の1は回想シーンです。シチュエーションを切り替える度にクッションとしていちいち同じような回想を挟むって不細工だなぁ。
結果的に上映時間が132分にもなっているんだから、回想部分を削ってもっとタイトして欲しかったですね。さすがに長い!
それと、沢村がカエル男の正体を掴んで奴の自宅に乗り込んでいってからの終盤からラストにかけて、見せたい展開が多過ぎてその1つ1つが駆け足気味なのが勿体無い。
沢村がカエル男の仕掛けたトラップで『絶望』すると同時に観客も『絶望』を噛み締めようとすると、すぐ場面がカエル男に変わりネタばらししてしまうので「早っ!」と余韻とちょっとした間が無い。あれだけ回想シーンで盛り上げておきながら、そこはサラッとし過ぎだろ。
面白くなりそうな、妻をカエル男と同じ格好にして沢村に撃たせようとするくだりも、イマイチ活かし切れてないし、『家族のどちらを殺してどちらを生かすか』などの究極の選択を迫られてるの関わらず役者の熱演は目立つも、そこまで画面から緊迫感が伝わって来なかったのは演出のせいかな? なんか惜しい。
合わせて「むむむ!?」となったのは、連続殺人を起こしたカエル男の動機。「自分のアーティスティックな殺しを、別の一般人の殺人として認定した裁判員制度で選ばれた裁判員を殺してやった」みたいな事を言ってたけど、それって元々は警察の誤認逮捕がキッカケじゃね?
どちらかと言うと裁判員よりも、ズサンな捜査で誤認逮捕した当時の捜査官周りを殺すなら分かるけど… この辺はモヤっとしました。原作読んでた時はそこまで気にならなかったけど。
ラストの締めのシーンも特に刺さらなかったな。黒沢清監督作の【CURE】みたいに『継承』されたって事を匂わす表現なんだろけど『光線過敏症=連続殺人鬼』になるとは限らないし、その2つはセットじゃなくない? 子供の頃に受けた心的要因で光線過敏症になり且つ人殺しに目覚めたって事だとしても、いまいちピンと来ないな。カエル男の場合は、そいつの根っから素質というか『そういう奴だった』って方が大きいように見えたけど。
色々とウダウダ言いつつも、 前半と後半で質の違うソリッドで刺激的な展開や描写が見れるので、ジェットコースタームービーとして、ハラハラできる作品じゃないでしょうか!デートムービーとしてもオススメです。
まとめ
評価:★★★ 普通に楽しめました。
原作読んでなければ★4つ行ったかな。原作漫画もこれくらいの面白さなので納得です。冒頭で【クローズZERO】【ルパン三世】と書いたけど、これは『小栗旬の代表作』になったでしょ!
ちなみに主題歌になっているONE OK ROCKことワンオクの『Taking Off』をYouTubeで聴いてる内にハマってしまい、エンドロールで使われている日本語版?よりもオリジナル版の方が良いですね!日本語版は映画用のアレンジが若干大人しい気がする。
[ 予告編 ]
ONE OK ROCK / Taking Off (オリジナル版)
感想&オススメ作品!
セブン
ラストの余韻が良いですよね!観ている側も「え、なにがあったん?」となりつつも、次第に彼の姿からそれが何か伝わって来る絶妙なチラリズム演出。この余韻がもう少し本作にもあると良かったです。
ON 異常犯罪捜査感 藤堂比奈子
魅力的なエグい死体描写に定評があった波瑠主演の刑事ドラマ。本作に通じるものがある。
一昔前の『エグい』邦画おすすめ20選!
ONE OK ROCK/Taking Off
今回の感想で入らなかったひと言:
落ちて行った西野くん、結構飛んで行ったね!