トランプ次期大統領で 温暖化対策「けん引役不在になる」

トランプ次期大統領で 温暖化対策「けん引役不在になる」
アメリカの次期大統領に、地球温暖化に否定的なトランプ氏が選ばれたことについて、北アフリカのモロッコで開かれている、温暖化対策を話し合う国連の会議「COP22」の会場を訪れている専門家からは、交渉のけん引役がいなくなり世界全体の対策のペースが大きく鈍るとの指摘が出ています。
「COP22」の会場では、アメリカの次期大統領に、温暖化はでっち上げだとしてパリ協定からの脱退も示唆しているトランプ氏が選ばれたことに、動揺が広がっています。

このうち、カリフォルニア大学の教授で、ケリー国務長官の科学特使を務めるダニエル・カメン氏は、「2014年11月の米中首脳会談で、温室効果ガスの2大排出国のアメリカと中国が温暖化対策に協力して取り組むという合意がなければ、今回のパリ協定の早期発効はなかった」などと述べ、アメリカがこれまでの交渉で果たしてきた役割の大きさを強調しました。そのうえで「今後、トランプ氏が孤立主義的にふるまった場合、これまでどおりアメリカが積極的であれば実現できたはずの世界全体の対策のペースが大きく鈍ることが、最大の影響ではないか」と述べ、世界全体の対策のペースが大きく鈍ると指摘しました。

また、温暖化対策の国際交渉に詳しい名古屋大学の高村ゆかり教授は「トランプ氏が政権に就くことで、これまで地球温暖化の国際交渉でアメリカが果たしてきたリーダーシップがなくなり、けん引役が不在になる。これを今後、どの国が埋めるのかということが大きな課題だ」と述べました。そのうえで「トランプ氏が政権に就いたときに、各国がどのように対応していくのかが問われている」として、日本を含む各国が今後、トランプ氏にどう対応するかが、世界の温暖化対策のカギになると話しています。

中国「アメリカいなくなっても温暖化と闘う」

一方、世界最大の温室効果ガスの排出国で、アメリカとともにパリ協定の早期発効のけん引役となってきた中国の交渉団は、COP22の会場で開いた記者会見で、アメリカのトランプ次期大統領が温暖化はでっち上げだと主張していることについて、「選挙戦で主張する政策と、大統領になってからの実際の政策は、別物と考えるべきだ」と指摘しました。

そのうえで「アメリカの次期政権がパリ協定からの脱退を決めるかどうかは、今後見守るしかないが、中国としては、みずからの削減目標を基に、国際的な枠組みに建設的な形で参加する」と述べ、中国はアメリカの影響を受けずに、対策を進めるとしています。また、「パリ協定が異例の早さで発効したのは、低炭素社会を実現したいという国際社会の意志の表れだ。中国は、アメリカがいなくなっても、各国と連携して温暖化と闘っていく」と述べ、温暖化対策でリーダーシップをとってきたアメリカの姿勢が後退しても、中国は引き続き、国際社会から求められている役割を果たしていくと強調しました。

米政権内の人事に注目集まる

トランプ次期大統領が温暖化対策にどのような姿勢で取り組むのかを推し量るうえで、政権内の人事に注目が集まっています。

COP22に参加しているアメリカの海洋調査を行う民間団体の研究者は、トランプ氏がアメリカのEPA=環境保護庁のトップに、シンクタンクで地球温暖化を否定する活動を行っている男性を任命する可能性が指摘されていることを、特に懸念しています。研究者は「もし実際に任命されれば、世界の温暖化対策への貢献が今より後退することを意味し、非常に恥じるべき事態だ。国内においても対策が遅れることになり、非常に憂慮している」と述べ、EPAのトップ人事が1つの焦点になると指摘しています。