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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 「この作品は、あんなでかいやつが出てきたらいったいどうなるんだろうとそれだけです。もし実際にあんなのが出てきたら…」。語ったのは特撮映画の巨匠、本多猪四郎(いしろう)監督。この作品とは「空の大怪獣ラドン」である

▼中高年男性には説明はいらぬか。翼を持った空を飛ぶ巨大怪獣。公開は、一九五六(昭和三十一)年十二月で今年六十年である

▼阿蘇山近くに出現したラドンは福岡県の博多の町を破壊する。「あの博多のミニチュアなんて最高だな。あれほど緻密にできたものはない」。これも本多監督である

▼道路に開いた巨大な穴。まるで怪獣映画のミニチュアのように見えてしまう。あれほど大きいとどこか「現実ではない」という錯覚にさえ陥る。還暦ラドンの再襲来ではあるまいに、博多での大規模な道路陥没である。長さ約三十メートル、幅約二十七メートル、深さは約十五メートル。そう聞いただけで震えてくる

▼オフィス街の真ん中。本多監督ではないが「あんなでかい穴」が突然できれば大混乱である。避難勧告。停電、断水。何より怖いのは穴がまだ広がっているようでビル倒壊の危険もあろう。心配である

▼付近の地下鉄工事が原因というが、よく調査し、地下利用の盛んな日本の今後に生かさねばならぬ。復旧し、落ち着きを取り戻すまでにどれほどの時間がかかるか。博多っ子の胸にも大きく暗い穴があいてしまった。

 

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