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「なんで?」と問う実母にハンマー一撃 両親にカネ無心され…おとなしい男を凶行に走らせた家族の呪縛
同日深夜。凶行の始まりは男性からの1本の電話だった。男性の軽乗用車で外出していた崔被告に「車の中に財布を忘れたので探してくれ」との内容だった。
帰宅すると、男性に対し「車が置いてある資材置き場に行こう」とうそをついて、同区内の資材置き場に向かった。資材置き場は当時建設作業員だった崔被告が勤めていた場にあった。凶器となったハンマーも自ら使っていたものだった。
同日午前3時ごろ、財布を探し回る男性に向かい合ったとき、両手に持ったハンマーで左側頭部を殴打した。「ひざから崩れるように倒れた。もう、戻れないと思った」
倒れた後にもハンマーを振るった。動かなくなった男性の遺体をブルーシートで包み、車のトランクに載せて帰宅した。
「帰ってきたよ」。同日午前5時55分ごろ、男性の行方を捜していた実母を玄関に呼び出すと、再び同じハンマーで左側頭部を数回殴打した。
ハンマーに気づいた実母から「裕、なんで?」と問いかけられたが、「『ごめん』と答えて殴った」。
あふれ出した「負の感情」
崔被告は公判で、淡々と犯行状況を語る一方、証人が実母の話をした際には涙を流していた。実母については「生きていてほしかったと思う」とも話した。弁護側は「これまで暴力を振るったことがなく、おとなしく控えめな青年」と人物を評した。
弁護側の依頼で崔被告をカウンセリングした家族心理学の専門家によると、崔被告は「自分が悪いと思う自罰傾向が強い」という。
崔被告や家族によると、幼少期から実母が不在がちで、祖母と姉の3人暮らしの生活を送った。この専門家は「愛情をほとんど受けずに育つと、子供は親に気に入られようと感情を抑えて我慢する傾向にある。心理的ストレスを抱えても、それをなかなか自覚できない。無意識に我慢してしまう」とした上で、崔被告についてこう分析した。