【侍ジャパン】タイブレークで敷いた極端なバントシフト「ブルドッグ」とは?
◆侍ジャパン強化試合 日本9x―8オランダ(12日・東京ドーム)
劇的な幕切れだった。延長10回1死満塁、大野の打球が二塁手の頭を越えた。ガッツポーズのヒーローに、ナインが駆け寄る。3万7101人の観衆も沸きに沸いた。小久保ジャパンになって初めて経験したタイブレイクでサヨナラ勝ち。指揮官は「これまで経験がなかったので、それをできたことは大きい」とうなずいた。
勝利の大きな要因は10回表の守備にあった。マウンドには左腕・岡田を投入。無死一、二塁で迎えた先頭の7番打者・ヴァンダーミーアへの1ボールからの2球目で、内野陣が極端なバントシフトを敷いた。一塁手と三塁手がバント処理にチャージをかけ、二塁手は一塁、遊撃手が三塁をカバーする通称「ブルドッグ」と呼ばれる守備隊形だ。ヴァンダーミーアはバントの構えから打ったが結果は中飛。そのまま無失点で切り抜け、裏のサヨナラへ導いた。
センターラインがガラ空きになるリスクを背負った小久保監督は「打順的にバントの可能性が高く、岡田はフィールディングが上手な選手。間を抜かれることを考えたらブルドッグは出せません」と説明。オランダは7番打者にバントのサインを出しており、守備を見て急きょ、ヒッティングに切り替えたという。大胆なシフトでプレッシャーをかけ、凡打を誘った。
日本フル代表としては、08年北京五輪1次Lの米国戦くらいしか経験のないレアケースだったが、来年のWBCでも採用の可能性が高いだけに無視できない。6日からの強化合宿(QVC)でもブルドッグを繰り返し練習し、結果に結びつけた。「そら、やりにくいです。でも(タイブレイクの戦術に)答えはない。短い時間の中で(戦略を)どう出していくか。本番に向けプラスになった。岡田がよく投げた」と振り返った小久保監督。国際試合という実戦の中で大きすぎる収穫となった。(広瀬 雄一郎)
◆タイブレイク 野球やソフトボールで、早期決着を目指して延長戦で人為的に走者を置く特別ルール。今回の強化試合では延長10回以降の攻撃を無死一、二塁から開始する。打順は9回終了時点から引き継ぎ、先頭打者の直前の2人が走者となる。国際大会では08年北京五輪のほか、WBCでは09、13年大会で13回から、昨秋の「プレミア12」では10回から導入された。来年のWBCの詳細な大会方式はまだ発表されていないが、採用される可能性が高い。