ハクサイがぜいたく食材 野菜高騰知恵絞る秋
9月以降の天候不順により全国で野菜の価格が高騰し、丹波でも影響が広がっている。家庭や学校給食の調理場では、材料費を抑える苦労と工夫が続く。一方で、価格が比較的安定している地元産野菜が脚光を浴び、道の駅がにぎわうといった現象も見られる。
「まさかハクサイがぜいたく食材になるなんて。子どもに野菜を食べさせたいのに鍋ができなくなった」。子育て中の自営業西岡郁奈さん(32)=京都府南丹市園部町=は嘆く。スーパーに並ぶ野菜が軒並み高騰し、献立を考えるのも一苦労。キノコを多く使ったり、他県の格安店にまで足を延ばしたりして費用を抑えているという。
園部町内の小中学校の給食約1350食を作る園部学校給食共同調理場(同町城南町)も9月中旬以降、野菜の高騰に頭を悩ませる。通常1キロ250円台のニンジンが10月に一時900円台になり、別の野菜で代替するなど対応に追われた。
西田一場長(59)は「異例の価格。しばらく厳しい状況が続くのでは」と気をもむ。献立を考える栄養教諭の小副川(おさえがわ)翠さん(26)は決められた予算や栄養素の条件を満たすため、価格が安定している野菜やモヤシなどを使うよう工夫しているといい、「成長期の子どもたちが満足できる質と量を守りたい」と力を込める。
JA全農京都(京都市中京区)によると、夏から秋にかけての多雨や日照不足による生育不良が価格高騰を招いたという。府内産野菜も収穫量が減少し、10月にはホウレンソウの価格が前年同月比約1・7倍、ミズナが約1・6倍となるなど高値で推移している。
農林水産省が10月にまとめた東京都中央卸売市場の価格見通しによると、11月後半にはハクサイ、キャベツなど多くの品目が平年並みに落ち着く見通し。一方、北海道や関東で台風の影響を受けたニンジンやジャガイモは、引き続き高値で推移するという。
主婦や飲食業者にとって厳しい状況が続く中、改めて注目を集めているのが野菜の地産地消だ。
農家が収穫したばかりの野菜が並ぶ道の駅「京都新光悦村」(園部町)では、安くて新鮮な商品を求める客足が秋口から伸び続けている。一般客や卸売業者が開店前から行列を作る人気ぶりといい、佐々谷吉美駅長(75)は「野菜が一番の売りなので、農家と調整しながら価格を安定させている」と胸を張る。
京丹波町坂原の国道27号沿いにある道の駅「和」でも、野菜目当てに早朝から訪れる客が増え、安さに驚く人も多いという。京都縦貫自動車道全線開通の影響で周辺の交通量が減る中、同駅では野菜を柱に人を呼び込もうと、100円均一市やつめ放題を行うなど販売の工夫を続けてきた。藤田義幸駅長(63)は「地元産の野菜に注目してもらえることが追い風になっている」と見ている。
【 2016年11月13日 11時24分 】