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加害者側に無断で提供 熊本・中3自殺未遂

 いじめを受け2014年に自殺を図った熊本市立中3年の男子生徒の調査報告書を、学校が被害生徒の了解を得ないまま、いじめた生徒側に渡していたことが分かった。被害生徒は無事だったが自殺未遂後も登校できない状態が続き、報告書の内容にも納得していなかった。識者は「被害者をさらに傷つけるまずい対応だ」と指摘する。【樋口岳大】

 被害生徒は中2の2学期から休みがちになり、中3だった14年7月、繰り返しいじめを受けたという訴えと、「毎日生きているのがとてもつらかった」と記した遺書を作成して自殺を図った。

 学校はいじめ防止対策推進法上の「重大事態」に当たるとして、校長やスクールカウンセラーらでつくる調査委員会を設置し、2カ月後に作成された報告書は無料通信アプリ「LINE(ライン)」でのやり取りなど3件をいじめと認定。いじめた側として同級生3人を挙げたが「悪意があった可能性は低く、その後の継続性は認められない」などと結論づけた。

 これに対し、報告書を受け取った被害生徒側は「他にも悪口や暴力など継続的ないじめがあったのに調査が不十分」などと訴えて抗議。だが翌月には、当時の校長がいじめた側の求めに応じて、生徒3人の保護者に無断で報告書を渡した。

 今年に入り、報告書が渡っていたことを知った被害生徒の保護者は「『大したいじめではない』という偏った内容が独り歩きしてしまう恐れがある」と反発。市教委は9月「配慮が不足していた」などと謝罪したが、保護者はより詳しい経緯の説明を求めている。

 市教委総合支援課の橋爪富二雄課長は「被害生徒の了解を得た上で、提供する場合も情報公開条例に基づき生徒の身体的特徴などの記載にマスキング(黒塗り)などすべきだった。申し訳ない」と話した。

 いじめ問題に詳しい小林剛・武庫川女子大名誉教授(臨床教育学)は「学校はまず被害者を中心に据え、問題解決のためにそのやり方がいいのかどうかを被害者とよく相談して進めるべきだ」と指摘している。

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