パリ同時テロから1年 対策遅れに批判 社会の分断も

フランス・パリでコンサートホールなどが襲撃され、130人が死亡した同時テロ事件から13日で1年になります。フランスでは、その後も過激な思想の影響を受けたテロが相次いでいて、政府の対策の遅れに批判が高まる一方で、イスラム教徒の移民に対する差別や偏見が強まっていることも問題となっています。
去年11月13日にパリで起きた同時テロ事件では、コンサートホールや飲食店、サッカースタジアムが、過激派組織IS=イスラミックステートのメンバーらによって襲撃され、合わせて130人が死亡しました。

フランス政府は非常事態宣言を出し、軍も動員して厳重な警戒にあたるとともに、違法な活動を行っていたとして、多くのイスラム教の礼拝所を強制的に閉鎖するなど、テロ対策を強化してきました。

しかし、ことし7月には、南部のニースで花火見物をしていた人たちに、大型トラックが突っ込んで86人が死亡したほか、北部の町ではキリスト教の教会が襲われ、神父が殺害されるなど、テロが相次ぎ、政府の対策の遅れに批判が高まりました。

また、こうしたテロを受けて、国内で500万人とも言われるイスラム教徒の移民に対する差別や偏見が強まり、国民の間であつれきも起きてきました。

オランド大統領は国民の結束を呼びかけてきましたが、社会の分断は一層深まっており、自由や平等といった共和国の理念もが問い直される事態となっています。

精神科医「多くの人がトラウマに苦しむ」

同時テロ事件のあと、現場に居合わせた人や犠牲者の遺族などおよそ200人の心のケアを行ってきた支援団体の精神科医、ドミニク・シェピエラク医師は、事件から1年を前に、NHKのインタビューに応じました。

この中で、シェピエラク医師は「関係者たちは事件の記憶がよみがえって睡眠が妨げられ、気持ちを落ち着かせようとして、過度に疲弊している現象がみられる」と述べ、事件から1年がたったいまも、多くの人がトラウマに苦しんでいると指摘しました。

そのうえで、「フランスだけでなく、ほかの国でも慢性的にテロの発生が伝えられていることから、人々は平静を取り戻すことができない」と述べ、ヨーロッパなどでテロが相次いでいる状況が人々の症状を改善させない要因の1つになっているという見方を示しました。

さらに、シェピエラク医師は、テロで精神的なダメージを受けた人々がこれまでの生活を維持できなくなり、経済的に困窮しているケースもあるとして、政府が実態の把握に努め、生活支援を継続するべきだと訴えました。