今年、日本を訪れた外国人旅行者が2000万人を突破した。昨年は1年間で過去最多となる1974万人を記録したが、今年は10カ月で2000万人に達した。
訪日外国人数が初めて1000万の大台に乗ったのは2013年のことだ。当時は「20年に2000万人」の達成を目指していた。外国人の日本訪問は予想以上の速さで増加し、政府は今や、「20年に4000万人」を目標としている。
国内の人口が減少に転じ、特に地方の過疎、高齢化が進む中、世界から人がやって来ることは多くの意味で歓迎できる。買い物や宿泊といった直接的な経済効果はもちろんだが、企業や地域社会が、外向きの思考へ意識転換するきっかけを得る意義は大きい。
ただ、2000万人を突破したとはいえ、世界には年間8000万人超(14年)のフランスを筆頭に、外国人客の受け入れ数で日本をしのぐ国が少なくない。まだまだ成長の潜在性があるということだ。
重要なのは、訪日客を単に外から来る消費者と見ないことだろう。
政府は20年に訪日客の消費額を8兆円とする目標を掲げる。目標設定自体、悪いことではないが、消費額ばかりにこだわると足をすくわれかねない。
訪日に不利な円高や、海外の経済情勢の悪化などに左右される恐れがあるからだ。さらに、インターネットなどで簡単に日本製品が買えるようになれば、「わざわざ日本まで行かなくても」となるかもしれない。
例えば地方の町が外国人客を増やそうと量販店を誘致したとする。一時的な集客効果があるかもしれないが、恩恵を受けるのは主に量販店やそこで売られる製品の企業であって、地元の経済では必ずしもない。
では、観光の目玉となる施設が不可欠かというと、それも違う。魅力や招致の手法は案外身近に埋もれているものである。
農家に泊まって、土地の食を味わうだけでなく収穫など農作業を体験する企画や、ごみのリサイクル施設を訪れ環境問題を考えるツアーなど、体験型の観光は、今後リピーターの訪日客を増やすうえで可能性がありそうだ。
地震は日本にとってリスクでも、防災は観光資源に変わり得る。地震の揺れなどを体験できる東京消防庁の災害教育施設には、海外向けの宣伝をしているわけでもないのに、外国人の来館が増えている。
数字を追うばかりでは無理が来る。世界の人々が日本のさまざまな顔を発見したり、日本人と共に何かを体験したりするような多様な品ぞろえで、息の長いファン作りにチャレンジしたい。