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先日から、「目の絵」を描いたり、その後の処理の話とか、「絵を描くために必要な準備や事後処理」の話をブログに書いているのですが、その関連で今回は「水張り(みずばり)」というものについて解説していきます。
「水張り」とは、絵を描く前に画用紙を木製パネルにピッタリ貼り付けて、画材を画用紙に使用しても、たわんだりしないようにするための方法です。画用紙で木製パネルを包み込むように貼りつけることから、別名で「袋張り(ふくろばり)」などと呼ぶ人もいます。
鉛筆を使用したデッサン画の場合もできれば水張りをしたほうが良いです。
特に必須なのが、透明水彩絵の具やアクリル絵の具を使用した水彩画を描く時なのではないでしょうか。画用紙やスケッチブックにそのままの状態で絵の具で描いてしまうと、画用紙が濡れてベロンベロンのボコボコのシワシワになってしまいます。
短時間で行う、ちょっとしたスケッチ等の場合には、わざわざ水張りなどをしなくても良いのですが、ある程度時間をかけて「作品」としての絵を描く場合には、きっちりと水張りをしてから絵を描くようにしましょう。
<目次>
木製パネルに水張りをする方法
水張りは、理論的には既製品の木製パネル以外にもすることができます。実際に、ホームセンターなどで売られているベニヤ板に貼り付けて描く場合もあります。画用紙を何に貼り付けて描くべきかは目的に応じて使い分けすれば良いでしょう。
今回は、最もスタンダードな「木製パネルに水張りする方法」を書いていきます
木製パネルに水張りをする方法はそんなに難しくはありません。ただ、油断すると画用紙の四隅がつってしまったり、画用紙が波打ってしまうことがあります。しかし、コツさえわかれば、そうそう失敗するものでもありません。
水張りは、少し練習して慣れることができれば、誰でも比較的簡単に、そして失敗することなく行うことができます。
必要な道具
早速水張りをやっていきたいところですが、その前に水張りに必要な道具を紹介していきます。
画用紙
まず必要なのが、「画用紙」です。
これは、基本的にはどんな紙でも使用することができます。(紙によって難易度は違いますが・・・)
デザイン系の勉強をする時などは、アクリル絵の具を使った「平面構成」を練習したりするのですが、その場合はケント紙を使いますね。これも、自分が描く目的と、使いたい紙をチョイスすればよいでしょう。
今回は、サンフラワーの画用紙、B4サイズを使用します。
サンフラワー M画用紙 100枚包 八切(271×382mm)
ここで、少しだけ注意なのですが、画用紙は大きめの画材屋ならば、例えばB4だったら「B4ピッタリのサイズ」と、B4よりも一回り大きめな「水張り用のB4サイズ」の画用紙が売られているはずです。(僕が学生時代は「水張りサイズの画用紙」と呼んでました。)
このあと説明するやり方を見ていくとわかると思うのですが、水張りをする場合にはパネルよりも少し大きめの紙でないと、貼り付けることができませんので・・・
画用紙をB4サイズでそのまま使う場合にはピッタリの大きさの画用紙を選び、水張りをする場合には指定のサイズよりも1センチ〜2センチほど大きめな「水張りが可能なサイズの画用紙」を使用しましょう。
木製パネル
「木製パネル」は、画用紙と同じサイズ表記のものを使用します。
画材屋に行くと、けっこう色んな種類のパネルが売られていますが、特にこだわりが無ければ普通のベニヤ版のパネルでOKです。
ただし、反っていたり曲がっていたり凸凹しているパネルもたまにあって、個体差があるので、そういうパネルは避けたほうが良いでしょう。
クレサンジャパン シナベニヤパネル B4 364×257mm
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水張りテープ
これは「水張りテープ」と呼ばれるものです。
このテープは、片面に水性の糊がついていて、濡らすとその糊が溶けて貼り付けることができるようになります。
例えて言うならば、「めちゃくちゃ長い切手」みたいなものですね。これを、水張りのときには使っていくのです。
少し注意しなくてはならないのが、水張りテープは使い終わったあとそのまま放置すると、空気中の水分を吸って固まってしまうことがあるということです。しばらく道具入れにしまっておいた水張りテープがガチガチになってしまい使用不能になってしまうのは誰もが通る道です。こればっかりは仕方がない!
なので、使用後は水張りテープが元々入っていたビニール製のチャック袋に入れて、しっかりと封をしておくことが大事ですね。
それと、水張りテープには、今回用意した「白」以外にも「グレイ」「緑」「黒」「ベージュ」等のいろんな色の物が売られていますが、特に性能に違いはありません。完全に見た目の問題です。
なので、お好みで好きな色の水張りテープを選ぶと良いでしょう。
CTN2 水張りテープ 25mmx45m ベ-ジュ [88]
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刷毛
「刷毛」は、画用紙を湿らしたり、水張りテープを濡らして粘着力をもたせるために必要です。
できれば、水張り専用のきれいなものを用意するか、綺麗に洗ってから使用してください。というのも、色塗りに使ったときに、絵の具が残っていると、真っ白い画用紙に色がついてしまいからです。
刷毛は、どんなものでも良いですが、画材屋で普通に売られている20号くらいの刷毛が使いやすくて丁度良いでしょう。
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筆洗(水を入れることができる容器)
そして、刷毛に水を含ませるために、水を入れるための容器を用意しておきましょう。
ちょうど手近にあったし、ちょうど使いやすいので、今回は「筆洗」を使用します。まあ、絵を描くわけだから、俗に言う「絵の具のバケツ」は手近にあることが多いのではないでしょうか。
しかし筆洗でなくても、水をいれることができて、刷毛が入るくらいの大きさがある入れ物ならば何でもOKです。
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水張りの手順
では、必要な道具を揃えたところで、水張りの手順について説明していきます。
水張りテープをカットする
まず最初に、水張りテープを適当な長さにカットします。長さは、木製パネルの1辺よりもちょっとだけ長めに切ります。別に、この工程はきっちりしなくて良いところなので、ハサミとか使わないで指でビリビリっとちぎってしまうのが楽ちんで良いかと思います。
木製パネルの4辺に水張りテープを使用するわけだから、4本用意するようにします。
画用紙に水を塗る
そしたら、画用紙を裏返してパネルの上に置きます。
ちなみに、画用紙の裏表を判別する方法は「ザラザラしている方が表」で「ツルツルしている方が裏」なので、間違えないようにしましょう。
画用紙の裏面に、刷毛で水を塗ります。こうすることで、画用紙に水分を含ませて、画用紙を膨張させることができます。
コツは刷毛にたっぷりの水を含ませて、たっぷりと水を塗ることです。これはめちゃくちゃ大事です。
水張りが失敗する原因の多くは水分を含ませる量が不十分なことによるものです。垂れてしまって机やパネルがビチョビチョに濡れてしまったらダメですが、そうなる前のギリギリの線を狙って、たっぷりと刷毛で水を塗りましょう。
十分に水を含ませたならば、数分間放置します。これも、水張りを失敗しないためには非常に重要なことです。
少しの時間、水を塗った状態で放置することで、しっかりと画用紙に水を染み込ませるのです。この時、乾いてきてしまった部分があったら、追加で刷毛で水を塗ったりしても良いです。
とにかく、均等に、そしてたっぷりと画用紙に水を染み込ませましょう。
水張りテープを使う
画用紙に十分に水が染み込んだことを感じたら、画用紙を裏返しにします。
この時、木製パネルから、画用紙の4辺が均等にはみ出していることを確認します。ちょっと難しいですが、もしもずれていたら画用紙の左右を持ち上げて微調整しましょう。
そしたら、次は水張りテープを刷毛で濡らして貼り付けていく作業です。
刷毛で水張りテープに水を塗るときの注意点は、刷毛をビチョビチョに濡らし過ぎないようにすることです。あまりにもビチョビチョだと、水張りテープの粘着面がヌルヌルになりすぎてしまい、画用紙にもうまくくっつけることができなくなります。
そうなると、非常によろしくないので、筆洗で水を含ませた刷毛は筆洗の縁の部分などを使って、水を多少絞るようにすると良いでしょう。場合によっては、タオルなどを使って刷毛に染み込んだ水分をある程度取り去っても良いかもしれません。
そうやって、適度な水分量を刷毛に含ませることが、スムーズに水張りをするコツの1つだったりします。
刷毛に水分を含ませる時は、机に粘着面を上にした水張りテープを押し付けながら、刷毛をあてがい、左手でスーッと引っ張るとうまくできます。(当然机も濡れてしまうので、濡れたり汚れたりしても良い机でやってね!)
こうやって、水を含ませた水張りテープを画用紙に貼り付けていきます。
空気を抜きながら水張り
水張りテープは、上の画像のように画用紙の余った部分の5mm〜10mmくらいの幅の部分に貼り付けます。
そして、手や綺麗なガーゼなどを使用して、画用紙の隙間の空気を抜くようにしながら画用紙を巻き込むようにしながら貼りつけていきます。
↑こんな感じです。
こうやって、4辺全てを水張りテープで貼り付けていきます。
水張りテープを貼り付けるのは、4辺のうちのどこからでも構いません。しかし、できれば「縦→縦→横→横」とか「横→横→縦→縦」という感じで、対角ごとにやっていくと成功する確率が上がるでしょう。
↑角の部分はこんな感じで折り込んでしまえばOKです。
ある程度は画用紙が乾くに従って紙が縮まるので、水張り直後のベコベコした部分は直ります。しかし、できるだけ空気が入らないようにしっかりと伸ばしながらできるだけぴっちりやっていきます。
これで、完成です。
乾かす
水張り作業が終了したら、数時間以上、もしくは一晩くらい放置します。
そうすると、いい感じに画用紙が乾いて、ピタッと水張りが完了するというわけです。
画用紙全体がぴーんと張り詰めた感じになれば良いですね。失敗すると、特に画用紙の四隅が引きつったような感じなってしまいます。
乾いてから絵を描く
水張り後は、きっちりと乾いていない状態だと、画材をうまく扱うことができないでしょう。
普通に考えて、ベコベコしている状態だと描きにくいですから・・・それに鉛筆は色がのらないし、水性の絵の具は乾きが非常に遅くなってしまいます。
なので、絵を描く前日などに水張り作業は終了させて、きっちりと準備をしておくことがけっこう大事だったりします。(美術予備校に勤めていた頃、当日の朝に水張りする子が多くて困ったことがある)
それと、水張りを早く乾かしたいからといって、ストーブやドライヤーで乾かす場合もありますが、できれば避けた方が良いでしょう。
確かに、早く乾くことは乾くのですが、水張り後の画用紙を温めると、パネルの部分が暖まって膨張してしまいます。そうすると、せっかく画用紙が乾いたとしても、木製パネルが膨張→収縮してしまって、画用紙がベコンベコンの状態になってしまうことがあります。
したがって、絵を描く前は余裕を持って、事前に水張りをしておくことが超重要なのです。
大きい紙と小さい紙の水張り難易度について
ちなみに、水張りは大きい紙と小さい紙だと、小さい画用紙の方が少しだけ難易度が高いです。どうしてかというと、水を画用紙に含ませても膨張して伸びる量が小さい紙の方が少ないからです。
今回のようなB4くらいの紙だと、かなりきっちりと水を含ませないと少し難しいかもしれません。
逆に、B2とか木炭紙サイズくらいの画用紙が一番やりやすく、失敗も少ないでしょう。
ただし、B1(B全)サイズとかくらいの巨大なサイズの画用紙になってくると、それはそれで、大きすぎて難しい部分もあったりします。(広い作業スペースが必要だったり、画用紙の端まで手が届かなかったりとかするので。)
まあ、どんなサイズの画用紙でも、やり方とコツは変わらないので、冷静になって水張りすれば失敗することはないはずです。
水張りした画用紙を剥がす方法
さて、ここまでは画用紙を水張りする方法を紹介してきました。
しかし、絵を描き終わったら、木製パネルから画用紙を剥がさなくてはなりません。(剥がさないでそのままの状態で展覧会等に出品する方法もあるけど、普通は剥がす事が多い。)
その方法も、説明されないとわかりにくいものなので、簡単に紹介していきたいと思います。
あ、それと描き終わって、「フィキサチーフ(定着液)」が必要な場合には剥がす前に使いましょう。そうしないとせっかくまっすぐな状態の画用紙が再びベロンベロンになってしまいますので。
カッターで側面に切れ目を入れる
水張りされたパネルの側面に、カッターで切れ目を入れます。側面だったらどこでもどこでもかまいません。
↑このように2箇所。ピピッと切れ目をいれればOKです。
ちょうど三角形のような形になるはずです。
隙間から切る
三角形になった部分をカッターの刃先を使って起こし、木製パネルと画用紙の隙間にカッターの刃を差し込みます。
そして、そのまま下にスーッと下ろすように切っていきます。
下まで切り終わったら、パネルを90度回転させて他の部分も切っていきます。
ぐるっと全部を切ることができれば完了です。
最初に切れ目を入れた部分は、耳みたいになっているので、これは普通にカッターやハサミを使って切り取ってしまえば良いでしょう。
最後に木製パネルの周囲にくっついている画用紙の端っこと水張りテープはビリビリ〜っと剥がして捨ててしまいましょう。
これで、次のときも木製パネルに新しい画用紙を水張りして絵を描くことができるはずです。
以上が、水張りと、その剥がし方の説明でした。
まとめ
水張りは、画用紙に絵を描く時は、やっておいたほうが圧倒的に絵が描きやすくなるので、できればやったほうが良いでしょう。
特に、透明水彩やアクリル絵の具などを使用して絵を描く場合には、画用紙そのままに描くのは難しいです。相当に分厚い紙でないと、ベロンベロンのボコボコのシワシワになってしまいます。そうなると作品としての価値も下がってしまうし、そもそも正常に絵を描くことも難しいでしょう。
鉛筆などを使用するデッサンなどの絵の場合は、画鋲や目玉クリップで固定してしまう方法もあります。それでも短時間(3時間〜6時間程度)の練習デッサンくらいだったら問題ないと思います。しかし、2日以上・・・とかみたいな、長時間に渡って絵を描きこむ場合には、必要なことだと思います。
したがって、今回説明した水張りのテクニックは、画材を使用したアナログな絵を描く場合には、必ず習得しておいた方が良い技術であると言えるでしょう。