第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した、こうの史代原作の映画『この世界の片隅に』が本日公開されました!
女優・のん(旧:能年玲奈)がアニメ映画の声優に初挑戦し、片渕須直監督がメガホンをとった作品です。
ネットでは、クラウドファンディングでの資金調達を経て映画化へとこぎつけたことも話題となりましたよね。
それだけ原作に対する思い入れが強い人が多いということでしょう。
私は、この原作漫画を読んでいませんが、度々話題には上がっていたので期待値マックスで公開初日に観てきました!
なんとビックリしたことに、私がいった映画館は朝一の上映にもかかわらず満席!
『シンゴジラ』や『君の名は』が続き、もう今年は満席の映画館で見るなんてことないかと思ったんですけどね。
内容はというと当時の広島・呉の原風景や日常生活を切り取ったように描いていて、それを主人公のすずを通じて追体験できるような素晴らしい映画になっていました!
忠実であるがゆえに、正直広島弁がよく分からないところもありましたし、時代背景を踏まえた恋愛観も違和感があるほどです(悪い意味ではなく)。
いたずらに、反戦や悲劇を表現したり強いメッセージを全面に押し出すのではなく、純朴な少女すずの視点で日常を描いていたので、心から感情移入してみることができました。
単に映画としてだけでなく道徳の教科書としてまで、幅広く末永く日本人に親しまれる作品になるんじゃないでしょうか?
いや、そうなって欲しいですね。
※このあとの記事には、映画本編のネタバレが含まれます。また、内容は批評や論評といった類のものではなく、感じたことをそのまま書き出しただけの寄せ集めのようなものです。見に来ていただいた方には、友人と映画を見終わった後にあーだこーだ言いい合う時のような軽い気持ちで読んでいただけると嬉しいです。
すずを通して感じられる当時の日常
絵を描くのが好きで、いわゆる天然で何も考えていないような少女、すず。
すずの人柄もあって、常に周りには笑顔が溢れています。
私は、その中の一員になった気持で、すずにはたくさん笑わせて貰いました。
幼少期からの短いエピソードが淡々と積み重ねられていく形の構成で、テンポの良い展開。
あくまですず目線の為、子供の頃は人さらいの化け物や座敷童がでたりしました。笑
前情報なしで見ると「ファタジー?」ってなりそうですが、子供の頃ってそういう不思議なものが見えててもおかしくないですもんね。
鉛筆の削りカスそんなところ入れるんだとか、当時の結婚式?婚姻の儀?とか全く知らなかった、昔の当たり前のことにもビックリさせられました。
そんな感じで、当時の日常・生活感に引に時間はかかりませんでした。
過去のあったに違いない日常の出来事全てが新鮮に感じられて、不思議な気持になりましたよね。
顔も知らない人の元に「嫁いで」生活すること、必要なものが足りないこと、戦争。
確かに全部あったことのはずなのに、価値観、豊かさの変化がどれだけ大きかったのかを実感することができます。
しかし、そんな中でも絵を描いて、足りないものは工夫して、楽しく生きるすずの日常は、見てるだけで幸せな気分になることができます。
ただ、徐々に戦争の闇がその日常に影を落とすようになって。
どんな最悪なことが起こるのがわかっている中でのカウントダウン。ひたすら心が苦しくなっていきました。
すずちゃんは、広島に帰っちゃダメだ!と心の中で話しかけていたのは、私だけじゃないと思います。
戦争映画ではなく、戦争のあった時代を描く映画
この映画では、壮絶に戦って死ぬ兵士も激しいアクションもでてきません。
ひたすら戦争の時代を生きた人の日常を切り取る。ただ、人が生きているだけ。だからこそ、心から感情移入して見ることができました。
これを何か、政治的な背景を持って話そうとする人がいたら、絶対友達になれないですね。笑
私が感じたのは、すずが何も考えずぼーっと生きていられるような世界が続いていたら…ということです。
そうなれば、のほほんとした前半の幸せな日常が続いてくれる。
すずは、物が足りないくらいなんともないし、義姉のいびりなんかでは動じないですからね。笑
周りの人を幸せにする力のある人には、ずっとそのままでいて欲しい。
シンプルにそれだけです。ただ、そんな簡単なことも戦争という大きな力の前では、どうすることもできずに、たくさん傷ついしまいました。
反戦を唱えることよりも、実感として伝わってくるものがありましたよね。
この作品は、何かに利用されることなくこんな時代があったんだっていうことを話し合うためのきっかけになるような存在になって欲しいです。
世代を超えて多くの人に共有してもらいたいと心から思います。
ほのぼのとした中にも生々しいリアルな日常
絵のテイストからして、ほのぼのした感じの作品ですが、結構生々しい描写もところどころ見られましたよね。
例えば、おばあちゃんの新婚初夜の指南?がそうです。
「 傘がどうのこうの…」「挿していいか?と聞かれたらどう答えるか…」などの序盤のシーン。
当時の人は、夫婦の営みをそんな風に表現するんだと関心しつつも
「あれ?これ子供見てたら大丈夫かな?」とちょっとひやひやしながら見ていました。笑
多分今後テレビ放映もあるはずですが、その時はカットになるんでしょうかね…。
いや、子供なら何言ってるか分からないから大丈夫なのかな。笑
あと、遊郭のお姉さんも出てきました。今の価値観からするとなかなか触れずらい存在です。
多くの人が見る映画なので必ずしもいれなくて良かったかも知れません。
ただ、当時戦争に死にに行く存在である兵隊にとって遊郭が重要な存在であったことは想像に難くありません。
今と違って単なる娯楽施設では、なかったのでしょう。
そこを避ける訳にはいかないという覚悟を、そのシーンから感じとれました。
そして、当時の恋愛観も
すずの元を訪ねてきた水兵になった水原との再会のシーン。
ここもなかなか生々しいんですよね。
そして、今の感覚からすると解せないところでもあります。
どうして周作は、2人を締め出したんでしょうか?
面識のない自分の元に嫁いできたすずに負い目を感じていた。
水原の前では、自分よりも自然体でいるのを見て嫉妬した。
そんな感情は伝わってきましたが、2人を締め出してしまうという選択肢は今の価値観からするとあり得ませんよね。
夜を男女が共にするということは、世代を問わず意味は一緒のはずです。
ん〜、分からん!笑
もし、こういうことだよってわかる人がいたら、コメント欄から教えてください!
原作を読めば、わかるんだろうか。。。
花鳥風月を絡めての描写が巧み
夏は暑いし、冬は寒い。
当たり前のことですが、機能性が高く便利なものが溢れている現代よりもっと季節が短にあったことを感じられる描写がたくさん出てきましたよ。
夏はセミが鳴き、秋にはトンボが飛ぶ。
蟻に取られて砂糖が無くなった時なんかも、蜜を舐めるカブト虫をなんだか羨ましそうに見つめるすず。
自由に飛んでいる鷺をなんとか呉から広島に追いやろうともしました。
あらゆるところに日本の原風景ともいえる自然や季節感を絡めて描写するシーンが出てきます。
多分こういうのもたまたまでなくて、これが紛れもなくかつて日本が通ってきた時代だということを実感してもらうための工夫なんじゃないかと私は、思いました。
深読みですかね?
そんなことないですよね。きっと。
どうせアニメなんでしょ?と思わせない演出がなかなかどうしてこんなに上手なんでしょうか。
本当作り手の人たちには、尊敬の気持ちしかないです。感想を書くしかできないのが情けない!
いや〜、クラウドファンディングに寄付して自分も最後のエンドロールに名前を記したかった !
まとめ
何もかも足りない時代でも、幸せに生きることができる。
しかし!
そんな中でも壊しちゃいけないものがある。
知識やメッセージではなく肌感覚で実感できるそんな素晴らしい映画でした。
原作には、今回の映画にはカットされている部分もあるそうでファンの中にはあれを入れて欲しかったと感じているシーンもあるようです。
私は、原作を読み返してからもう一度見に行きたいと思います!
また、すず役を務めたのんも天然でほんわかしたところがそのまんまなので、これ以上ないってくらいハマっていましたね。
あまちゃんもそうでしたが、向いてる役柄なんでしょうね。
時代背景をなるべく正確に描くということが監督のこだわりだったそうなのですが、それも大成功でした。
過去に魔女の宅急便から兵器アクションのブラックラグーンというアニメまで手がけてきた監督だからこそできたものだと思います。
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