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窮地の朴大統領 外交の停滞を懸念する

 韓国は、北東アジアの平和と安定に大きな役割を担う国だ。内政での混乱が外交の停滞を招くことのないようにしてほしい。

     韓国の朴槿恵(パククネ)大統領が窮地に陥っている。支持率は10%台に急落し、ソウルでは退陣を求める大規模集会が開かれた。来年末の大統領選をにらんで、与党内には大統領と距離を置こうとする動きが出ている。

     朴大統領と知人女性の不透明な関係が発端となった。

     女性は、大統領との関係を利用して多額の金銭を財界から集めた疑いを持たれている。さらに青瓦台(大統領府)の内部文書が女性に渡っていたという疑惑が発覚した。国民の間では、公職とは無縁の民間人による国政介入だという反発が強い。

     再選を禁じられた韓国の大統領は残り任期1年余りともなれば弱体化するのが通例だ。それでも、今回の動きは過去の政権と比べても急激かつ深刻である。

     厳しさを増す北東アジアの安全保障環境を考えれば、韓国の混乱は人ごとではない。

     北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)政権による核・ミサイル開発はいまや現実の脅威だ。北朝鮮は、日本のほぼ全域を射程におさめる「ノドン」ミサイルを実戦配備しており、米本土をうかがう長距離弾道ミサイルの開発も進める。核兵器の小型化にも成功した可能性がある。

     朴大統領は強い危機感を抱いて日米との連携強化を進めてきた。米国とは在韓米軍への終末高高度防衛(THAAD)ミサイル配備計画に合意し、日本とは軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の交渉再開を決めたばかりだ。

     しかし、どちらも国内に反対論を抱えている。大統領の求心力がこれほど落ちたままで、難しい国内調整を進められるだろうか。

     慰安婦問題を巡る昨年末の合意を契機に改善基調にある日韓関係への影響も心配だ。

     朴大統領は、野党や市民団体からの反発があっても合意の履行に取り組んできた。韓国政府が設立した財団は元慰安婦への現金支給を始めている。今回の事態で、その推進力が弱まることはないだろうか。

     日本が議長国となって12月中の開催で調整を進めている日中韓首脳会談もある。日中韓3カ国の対話は、日中、中韓関係にも肯定的な影響を与えうる。地域の安定に寄与する枠組みとして、韓国にとっても利益は大きいはずだ。

     韓国は民主主義国である。政治指導者を巡る疑惑が、厳しく追及されるのは当然だろう。しかし、政府の機能全体がまひするような事態は避けねばならない。

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