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 農業改革の議論を進めてきた政府の規制改革推進会議(議長=大田弘子・政策研究大学院大教授)の農業ワーキング・グループは11日、全国農業協同組合連合会(全農)に1年以内の大幅な組織改革などを求める提言をまとめた。農家の所得向上を全農が阻んでいるとの問題意識が背景にあるが、急進的な内容に農協側は反発している。

 政府・与党は農業を成長戦略の一つと位置づけ、生産コストの削減や販売力強化の方法を議論してきた。全農は、メーカーから購入した農業資材を全国約650の地域農協を通じて生産者に販売する「購買事業」と、生産者から農産物を集めて消費者に届ける「販売事業」を行っている。今回の提言はその両方にメスを入れる内容だ。ただ、提言に強制力はなく、最終的な判断は全農に委ねられている。提言が受け入れられるかどうかは見通せない。

 購買事業は、全農が手数料を上乗せした価格で資材を生産者に販売しており、全農にとっての稼ぎ頭。提言では、全農が生産者ではなくメーカー側に立って手数料収入の拡大を目指している、と指摘。購買組織を1年以内に縮小し、資材の売買から手を引くよう求めた。

 代わりに販売事業の強化を提言。生産者から委託された分を販売する現在の方式を1年以内に見直し、全農自らが販売に必要な分を買い取るよう求めた。全農がより真剣に販売に取り組むよう促す。

 改革が進まなければ、国が「第二全農」など新組織を立ち上げることにも提言は言及した。

 農業改革を巡っては、自民党の小泉進次郎農林部会長も、同様の改革案を月内に取りまとめる予定。

 農協側は、抜本的な改革を求める今回の提言に戸惑いを隠せない。全農はこれまで、輸出強化に向け英国の企業を買収したり、肥料価格の値下げを発表したりするなど改革姿勢をアピール、規制改革推進会議側や小泉氏らとも協議を重ねてきた。提言を受け、全農を含むJAグループは「経営への過剰な介入や現実的ではない組織の見直しを強制されないことなど、自主性の確保を大前提に検討する」とのコメントを出した。(野口陽)

■主な改革案

【全農改革】

・資材の購買部門を1年以内に縮小

・出資する資材メーカーなどは、戦略に見合う効果がなければ売却

・農産物の販売体制を強化。委託方式から買い取り方式へ1年以内に転換

・主要輸出国への販売体制を1年以内に整備

・会長選出は選挙で行う

・改革の進捗が見られない場合、国は生産者のためとなる「第二全農」など新組織を立ち上げる

・金融事業を営む地域農協を3年後を目処に半減

・生産者への農協利用の強制を徹底して取り締まり

【生乳流通改革】

・生乳を集める指定団体を利用しない生産者にも、補助金を支払う

・輸入したバターの流通状況の確認を徹底

・過酷な労働条件にある生乳生産者へ、ロボットなど設備投資支援