日本・インド首脳会談 原子力協定に署名

日本・インド首脳会談 原子力協定に署名
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安倍総理大臣は日本を訪れているインドのモディ首相と11日夜に会談し、日本の原子力関連技術のインドへの輸出を可能にする原子力協定について最終合意し、終了後、協定の署名が行われました。
会談は11日午後6時すぎから総理大臣官邸で行われ、両首脳は日本の原子力関連技術のインドへの輸出を可能にする原子力協定について、最終合意し、会談終了後に協定の署名を行いました。
協定は平和利用の目的に限って、日本から原子力関連技術などをインドに輸出できるようにするもので、あわせて核物質や原子力設備などに関する情報も相互に交換することができます。

また、協定には協力関係の停止に関する条文が盛り込まれているほか、日本政府は協定とは別の文書で、インド政府が2008年に出した、「核実験を凍結する」という内容の声明に違反するような行動をした場合には、協力を停止することを確認していると説明しています。
日本が原子力の平和利用を定めたNPT=核拡散防止条約を締結していない国と協定を結ぶのは初めてです。

また、会談で両首脳は、海洋進出の動きを強める中国を念頭に、一方的な現状変更の試みは認められないとして、法の支配の重要性を確認したほか、日本の新幹線技術の導入が決まっているインド西部の高速鉄道計画で、2023年の開業を目指して建設を進めることや、日本の民間企業の協力も得て、インドの製造現場などで指導にあたる技術者を今後10年間で3万人育成することなどでも合意しました。

この後、両首脳はそろって共同記者発表に臨み、安倍総理大臣は「原子力協定はインドが原子力の平和的利用で責任ある行動をとることを確保する法的枠組みであり、インドを国際的な核不拡散体制に実質的に参加させることにつながる」と述べ、協定の意義を協調しました。

一方、モディ首相は「協定は両国間においてクリーンエネルギーパートナーシップを構築するうえで、歴史的な1歩を刻むものであり、原子力の平和的利用のためのものだ」と述べました。

モディ首相は12日まで日本に滞在し、12日は安倍総理大臣とともに兵庫県内の新幹線車両の製造工場を視察する予定です。

日印原子力協定とは

今回署名された日印原子力協定は、平和利用の目的に限って、日本から原子力関連技術などをインドに輸出できるようにするもので、あわせて核物質や原子力設備などに関する情報も相互に交換することができます。

協定の署名に至った背景には、高い経済成長が続き、深刻な電力不足を原子力による発電で賄いたいインド側と、日本企業の海外への原発輸出を後押ししたい日本側の思惑の一致があると見られるほか、日本としては同じアジアの大国・中国を念頭に、インドとの協力関係の強化を図りたい安全保障上の狙いもあるものと見られます。

ただ、過去に核実験を行い、核兵器を保有するインドに対し、唯一の戦争被爆国の日本が、原子力分野の協力を進めることには、被爆地・広島や長崎を中心に根強い懸念の声があります。
このため、政府は今回の協定に協力関係の停止に関する条文を盛り込んだうえで、協定とは別の文書を交わし、インド政府が2008年に出した、「核実験を凍結する」という内容の声明に違反するような行動をした場合には、協力を停止することを確認していると説明しています。

協定は今後、国会での承認を経て発効されることになりますが、インドが核不拡散の取り組みを継続するよう、政府の対応も問われることになります。

広島 松井市長「懸念は残る」

安倍総理大臣と、日本を訪れているインドのモディ首相が、日本の原子力関連技術のインドへの輸出を可能にする原子力協定について最終合意し、協定の署名が行われたことについて、広島市の松井市長は「原子力関連技術などが核兵器開発に転用される懸念は残っている」とするコメントを発表しました。

この中で広島市の松井市長は「今回の署名にあたっては、インドが核実験を実施した場合には協力を終了できると明記した文書を交わし、軍事転用に歯止めをかけたとされているものの、核物質や原子力関連技術の核兵器開発への転用の懸念は残っている」と指摘しています。
そのうえで、「インドに対しては、何よりも早期にNPT体制に加入することによって、核兵器開発につながらないよう働きかけてほしい。今は核保有国と非核保有国が一丸となってNPT体制の強化を図っていくべき時であり、日本政府はその橋渡し役をしっかりと果たしてほしい」としています。

インドの専門家「関係強化の象徴」

日本の原子力関連技術のインドへの輸出が可能になる原子力協定に両国が署名したことについて、インドの専門家は、両国の関係強化を象徴するものだと指摘しています。

インドのシンクタンク「オブザーバー・リサーチ・ファウンデーション」のマノージ・ジョシ特別研究員は「インドがすでに原子力協定を結んでいるアメリカから原子力技術の提供を受けても、部品の多くは日本製なので、日本と早く原子力協定を結ぶ必要があった」と指摘しています。

そして、インドが核実験を行った場合、協力を停止することを確認していることについて、「インドはすでにアメリカとも同様の条件で協定を結んでいる」として、インド側の新たな足かせにはならないと説明しています。
そのうえで、「インドは投資と技術を日本に頼り、日本はインドを政治的なパートナーと見て戦略的な関係を構築している。両国は中国との向き合い方にも共通点がある。両国が何かに合意することも大事だが、それ以上に双方が意見を交わし、関係を強化していることを示すことが重要だ」と述べて、原子力協定は両国の関係強化を象徴するものだと指摘しました。