(上から順に)殻を振り回し、オオルリオサムシを撃退するエゾマイマイ=北海道大・森井悠太研究員提供
殻を振り回し、敵を撃退するカタツムリがいることを、北海道大学農学研究院の森井悠太・学術研究員が確認し、11日の英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」(電子版)に発表した。これまで沖縄県で同様の行動をする種が見られたとの記録はあるが、個体種の行動として実証研究で確認されたのは初めてという。
確認されたのは「エゾマイマイ」で、殻の左右幅が40ミリにもなる北海道最大の固有種。2009年から道内10地域で約20個体を採取し、天敵のエゾマイマイカブリとオオルリオサムシを飼育槽に一緒に入れて観察したところ、いずれも殻を左右に大きく振って追い払う様子が確認された。
同様の行動はロシア・ウラジオストク周辺で採取した固有種にも見られた。殻の中に潜んで身を守る他の近縁種より、いずれも殻の口が大きく、殻の巻き目の数も少なく、腹足部分が肉厚だった。森井研究員は「殻の形が何らかの理由で変化した際に足の筋肉が大きくなり、殻を振り回す種が出てきたのではないか」とみている。
カタツムリなどの陸貝は国内に約800種、世界に約3万5000種。一般に移動能力が小さく、地域ごとに種の分化が起こりやすいとされる。
共同研究者の東北大の千葉聡教授(進化生態学)は「北海道とロシアで、それぞれ同じ防御の変化と種分化が起きている。食う食われるの関係が種の分化を促し、生物の多様性を生んでいる」と話している。【昆野淳】