「本当のところ、自分でもわからないんですよ。どうして行ったかって……」
上園啓史はオランダでプレーしたことについて、こう振り返った。
【写真】現在、ベネズエラのウインターリーグに参加している村田透
今年の春、ヨーロッパに国境をまたぐ野球のプロリーグ「ユーロベースボールリーグ」が発足し、そこに日本人投手が参加することが報じられた。その日本人投手というのが上園だった。
阪神に入団した2007年に先発として8勝を挙げ、新人王を獲得。だが、その後は思うような活躍ができず、2012年に東北楽天に移籍。その後もルーキーイヤーの輝きを取り戻すことはなく、昨年一軍登板なしに終わると、シーズン終了後に戦力外通告を受けた。合同トライアウトに参加し好投を演じるも、契約の話はなく、表舞台からひっそりと姿を消した。
しかし春になると、上園はオランダのマウンドに立っていた。結局、話題になったユーロリーグではプレーしなかった。上園が振り返る。
「報道はまるきり間違いじゃないんですけど、オランダの協会とリーグの折り合いがつかなくて、オランダは開幕直前に参加を取りやめたんです。結局、ユーロリーグは3チームで行なわれたらしいんですけど、実際に見ていないのでよくわかりません。もともと、僕は(オランダの)国内リーグのチームと契約して、ユーロリーグの方は国内リーグの合間の平日週1回の試合に参加するだけという話でしたから」
上園はオランダで過ごした数カ月をこう表現した。
「野球をしに行ったっていうのではなく、いろんなことを含めて勉強に行ったという感じですね」
日本のトライアウトで声がかからず、その後メジャー球団が実施したトライアウトにも参加したが、獲得を示す球団は出てこなかった。32歳。野球をあきらめるにはまだ早いかもしれないが、上園の心はすでに「次」の方向を向いていた。
「そもそもトライアウトも自分のなかで区切りをつけるために行ったようなものでしたから……」
その後、上園はオーストラリアに渡り、プロリーグのシドニー・ブルーソックスに合流した。しかし、これも現役続行を見据えたものではなかった。
「現役を続けるつもりなら、アメリカに行っていますよ」
そう言いながらも、上園は5試合だけの登板だったが、防御率1.93と圧倒的な数字を残した。そして上園は、「オーストラリアで野球の楽しさをあらためて感じた」と言う。日本とは違う、新たな国での野球に魅力を感じたのだろうか。しかし、「そうではない」と上園は否定した。
「オーストラリアにしても、オランダにしても緩い感じです。これが海外かなって。集まったらアップをして、キャッチボールをして、バッティングをして……。その間、ピッチャーはボール拾い。あとは投内連携をやったり。ノックもやるときはやって、やらないときはバッティングだけ。メジャーリーグと一緒だと思いますよ。ただ、メジャーリーガーほど実力がないので、だらけているように見えますけど(笑)。でも、違和感はなかったですよ。だって、海外ってそんなもんでしょ。特にオランダは、ほとんどの選手が無給で、ほかに仕事を持っていますから。野球が仕事じゃない時点で『しっかりしろ!』というのも違うような気がします」
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