現在は、断片的にコメントしてあります キッズステーションのオンエアに合わせて追加して行く予定でしたが、延長クール分が実質的にうち切られてしまったので、不定期更新となります。 (1998/06/08update) |
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#1「魔法使いになっちゃった」
『姫ちゃんのリボン』は、ヒーローギャグアニメ『ゲンジ通信あげだま』の後を受けた形でスタートする。制作もスタジオぎゃろっぷが担当し、現場もほぼそのまま『あげだま』のスタッフがスライドしている。相当に悪のり・暴走していた『あげだま』に比べると(そもそも作品ジャンル自体根本的に異なるので、短絡的に比較は出来ないのは承知の上で)本シリーズの初期は、もう一つ凡庸な印象を拭えない。監督の辻初樹は、当時は演出そのものは経験が浅く、その辺の試行錯誤も出足の鈍さにつながったともいえるかもしれない。しかし、シリーズ後半でサクレツすることになる「単純に原作をトレスするにとどまらない」アプローチは、この#1でも充分に見ることが出来る。例えば、冒頭でエリカが魔法のほうきで地上に降りてくるシーンから、姫子の父・太郎が自宅に電話をかけるまでの、いわば姫子の家族紹介シーンは、驚くほど流麗にして自然な流れである(もちろんこのシーンは原作にはない)。
また元気印の姫子が、支倉のことになるととたんにシャイになってしまうという感情の動きも(原作通りとはいえ)、なかなか光るものがある。
しかし、#1を見て誰もがいちばん驚いたのは、本作が初の主役となる大谷育江の姫子とエリカを見事に演じ分けた演技の幅だろう。これを見て、当時大谷さんがレギュラーだった『元気爆発ガンバルガー』で、おとなしい女の子・由梨香も演じていたと初めて気づくのであった。
#2「ショック!先輩の告白」
今回から本格的にストーリーが動き始める。姫子は早速、遅刻を逃れるため校長に変身するという、トンデモぶりを発揮する。魔法を試すというシチュエーションは、魔法少女モノの初期話数では定番ながら、こうした「私利私欲」(笑)にいきなり使うというのはなかなか珍しい。これに匹敵するのは『クレヨン王国』のシルバー王女くらいでは……?(そういえば『クレヨン王国』も山田隆司がメインライターを務めているではないか!) その上、呪文を忘れて元に戻れず焦りまくる姫子を小馬鹿にするチャッピーと、原作にないコミカルな場面をふんだんに盛り込むことで、完全に原作を再構成しなおしたオリジナリティの高い仕上がりとなっている。実はこうした部分をAパートに集中させることによって、支倉の好きな人が愛子であることをはからずとも知ってしまった、Bパートでの姫子の感情の動きがよりスムーズになっているのだ。
ところで今回を含めて、シリーズを通して姫子は数回愛子に変身するわけだが、この時の「中身は姫子の愛子」という白鳥由里の演技がとてもポップだ。本作の2年後に180度イメージチェンジ(?)を果たす『とんでぶーりん』の国分果林の片鱗を見ることができる(もっとも、同時期に既に『ガンバルガー』千夏や『フリーキック』笠山ミクなど、元気な娘も演じてはいるが……)。
#3「あこがれの先輩に変身」
原作通りの展開となる#3。ようやく大地がストーリーに絡み始めるわけだが、本作のポイントは、初期においては大地が姫子にとって単なる「嫌なヤツ」以上に、魔法の秘密に対してプレッシャーをかける存在であるという点だ。そのきっかけを作ってしまうのが今回である。
なお、姫子が愛子にニセのデートを仕組むシーンで、コミカルBGMとしていわゆる「日比野ひかるのテーマ」曲が、ひかるの本編登場に先駆けて使用されている。
支倉の妹・エミは横山智佐のダブルキャストで、できればもう少し登場して欲しかったキャラクターである。
#1〜#3ストーリー
#7「秘密がばれちゃう?!」
大地に変身の秘密を感ずかれ冷や冷やの姫子が、彼の学校では見ることの出来ない面を知ることになるシリーズ構成的に重要なエピソード。だが、このテンションはアニメ版オリジナルのものである。原作では、姫子が大地のマンションまでいった段階で大地の弟・森太郎が誘拐されてしまう(すなわち#8にあたる)わけだが、アニメではまったく違った展開を見せることになる。姫子自身が夢子に変身して森太郎に接近するというT魔法少女Uらしいアレンジにくわえて、それゆえに、大地の弟や同年代の小さい子達へ見せる優しさを、姫子自身が身をもって知るという白眉のシチュエーションを見せるのだ。
今回はフィルムマジック班らしい演出や作画が随所に見て取れる。姫子が大地によって秘密がばらされたときの、コミカルな人体実験の「イメージ映像」は愉快きわまりないし、お見舞いに来た大地と姫子のどことなくギクシャクした気まずい空気もバツグンだ。また、姫子が夢子に変身したとき、俯瞰アングルで洗面台が画面手前にナメていて、姫子の体が幼児になったことをアピールする細かいレイアウトがされていたりもする。
#7ストーリー
#15「ポコ太雪山からのSOS」
初の金春智子によるエピソードは、基本的には舞台をオンエアの季節に合わせ、林間学校からスキー教室にすげ替えた原作トレス型作品なのだが、原作から逸脱した特筆すべき点がある。ひかるがまったくアニメ独自の解釈によって動いているのだ。
それは姫子や大地たちに命を救われたというシーンで見ることができる。
ここでのひかるは、原作での一種記号化された性格付けのそれではなく、極めてノーマルな反応をみせるのである。
この扱いがアニメではシリーズを通して貫かれており、原作では完全に冷戦状態を思わせる姫子とひかるの関係も、アニメにおいては、嫌なヤツだけど憎みきれない“友人”の一人として描かれており、それは、暗黙のうちに基本シチュエーションであるはずの(たぶんにお約束的ではあるが)「三角関係」の崩壊を意味しているのだ。
なお、この回前後から改訂版のキャラ表によって作画されている。
#15ストーリー
#17「エッ!変身が戻らない」
#18「君には笑顔がにあってる」
原作通り、ついにひかるに追いつめられ、姫子の変身が戻らなくなるという、シリーズ前半のクライマックスとなるべき前後編。原作ではほぼ1巻近いページ数をかけて描かれ、皮肉にもひかるの姿をした姫子と大地の関係が大きく前進し、これまで以上に親密になるだけでなく、姫子として人間界で暮らすエリカとの友情も深くなるという、ひとつのターニングポイントとなっている。だが、アニメではわずか2回で消化してしまっており、確かにエピソードそのものの完成度は高いものの、シリーズ全体からすると、それほどクライマックス感は強くない。
特にエリカとの友情は、テレビ本編でみる限りそれほど深くなっていない。原作では、変身の解けない姫子を友達と称して、エリカが野々原家に「招待」し、いっしょに過ごすという場面があるわけだが、こうした積み重ねが、アニメ版には大きく欠如しているのだ。だが、実はこれがかなりの「確信犯」であることは、次回以降のオリジナルエピソードでの展開をみれば明らかだ。
#19「チョコレートがいっぱい」
それまでほぼ忠実に原作のストーリーを追っていた展開から、この回以降大きくオリジナルのストーリーがフィーチャーされはじめる訳だが、その後の3クール分近いエピソードの方向性を、奇しくも完璧に具現化した話がこのエピソードだ。
バレンタイン・デーという、学園ラブコメの王道とも言うべき設定を使って、大地とのラブコメ要素を適度に散りばめつつ、バレンタイン・デーそのものに振り回されてしまう姫子の姿をコミカルに描くストーリー展開は、明らかに日常ドラマの重視というベクトルが感じられる。また、「今まで食べたなかで一番美味しい味がする」というラストの姫子の台詞には、目を細めずにはいられない。
ラブコメの覇者(笑)桜井弘明の細かい演出、音地正行(旧フィルムマジック)のこだわりの作画が産み出した、まさにシリーズ屈指の傑作だ。
#17〜#19ストーリー
#23「初恋にさようなら」
原作をモチーフに、かつポイントとなるシークエンスは忠実にトレスしながらも、徹底的に再構成し直したのがこの#23だ。愛子と支倉の交際を喜ぶとともに、大地との関係がよりポジティブに変化したことを姫子が自覚する、前半を締めくくるにふさわしい仕上がりとなっている。野々原家の庭に植えられた梅の花が芽吹いて咲くまでをストーリーの要所要所にインサートするという、時間経過の演出が絶妙な効果を発揮しており、その緩やかだが確実な春の訪れは、姫子と大地の関係が新しい段階へと向かってることを比喩しているようだ。
#23ストーリー
#25「それゆけボクの無敵パパ」
今回の見せ場は、なんといってもAパートにつきる。いや、もっと端的に言ってしまえば、本エピソードより本格的に登場する新(?)キャラクター・分身姫ちゃんのぽよよ〜んとした、「天然ぼけ」のギャグメーカーぶりなのだ。極端に乙女チックで、大地に対して素直に一喜一憂しまうホンモノとのギャップと、それを目の当たりにしてイラツク姫子の描写は、何度見てもコミカルで楽しいシーンに仕上がっている。分身を演ずるのも、もちろん大谷育江で、ここで見せるミョーちきりんな「内股」系の演技(笑)は絶妙きわまりなく、おなじみの元気印の声とはひと味もふた味も違った魅力に溢れている。
まったく性格の異なる自分という分身姫ちゃんの設定は、それだけでストーリーを喚起する、アニメでの最大の収穫なのだが、残念ながらギャグメーカー以上にストーリーに関わるようなエピソードは皆無に近い。
#26「気になる彼女は転校生」
聖結花・登場編となる本エピソードだが、まだ彼女と姫子とのライバル関係にはいたらずで、演出プランとしてはむしろT新学期Uというシチュエーションそのものに重点が置かれており、4月初旬独特の「新しい生活」という雰囲気に溢れたものとなっている。特に、今回のラストは演劇部の主役に姫子が選ばれたところで終わっていることも、そうした「期待に胸膨らむ」印象を強めている(それだけに、次回での姫子の落ち込み具合も大きいのだ)。
原作ではテツが言っている台詞(「小さい頃ニンジン食べられなくて泣いちゃったんだって」)を、有坂に言わせるなど、単にすげ替える以上にアニメでの彼の位置づけが明確になっている。
なお、この#26をふくむ都合10週間のうち、実に半分の回をキャラデザインの渡辺はじめが作監をこなすという、驚異的なローテーションとなっている。
#27「大地の初恋物語!?」
今回から本格的に姫子と結花の対立が明確化することになる。大地に関してのみならず、姫子に対してことごとくアドバンテージを見せつける結花に、次第に追いつめられて行く姫子の感情の揺らぎが、とにかく見事だ。前回のラストとはうって変わって、日記を前にして哀しみにくれるという抜群のコントラストだ。しかもこらえきれずに流した涙が、日記に落ちると、そのシミがエリカ側にも再現されるという、設定を拡大解釈した演出があまりにも切ない。
アニメ版では、ここまで姫子が心理的に行き詰まるのは、初期の支倉と愛子の一件以来に等しく、原作と違って大地との関係も実質的に「マブダチ」以上に進展していないこともあり、ここでの姫子の絶体絶命度は原作以上に強い。
そうした中にあって、分身姫子とひかるのコミカルなやりとりは、見ている側をホッとさせてくれる。
#29「心をつなぐ遠い約束」
原作を完璧なまでに忠実に再現してきた“聖結花・編”だが、その中で唯一のオリジナル・ストーリーである今回が最終エピソードというのは誠に興味深い。
この話によってひかる同様、結花の立場も原作とは微妙に異なってくる。 完全に和解に至った姫子と結花だが、原作では結花はひかるとは異なる決定的な恋のライバルとして描かれているため、その後も姫子は結花を、ひいては大地を恋愛対象として意識せざるを得なくなってしまい、内面的な三角関係は続いてゆく。だが、アニメでの結花は#29になると、これまでの大地への態度は一変する。ここで描かれる結花の想いやモノローグは大地への恋愛感情ではなく、幼なじみで頼りにしているがゆえの独占欲的な感情を匂わせるのである。
その結果結花は、約束の木登りを大地ではなく、新しい「大切な友達」の姫子にお願いするのである(この木登りシーンが誠にドラマチックで、僕は見るたびについつい目頭を熱くしてしまう)。
ここでクローズアップされるのは、原作同様の姫子と大地の関係の再認識ではなく、姫子と結花の交流の変化と、その友情物語なのだ。それは#28のラストで姫子が魔法の日記帳に「新しいお友達ができたよ」と、エリカに書くところからも、明確であろう。
#27〜#29ストーリー
#31「母の日にクッキーを」
アニメ版の『姫ちゃん』では、原作のほんのさりげない一コマをインスパイアしてストーリーを組み立てることを得意としているが、その最たるエピソードがこの#31だ。料理の苦手な姫子が、母の日に手作りのクッキーを作ろうと悪戦苦闘する様をコミカルに綴った本作は、見事にホームコメディとして完成しており、原作では今ひとつ使いあぐねている姫子の家族を存分に生かしたシチュエーションである。
ストーリー自体はトラディッショナルなものだが、桜井弘明ならではの丁寧な日常描写と繊細な姫子の感情の動きは巧みで、音地正行のハイレベルの作画とともに、センスの光る完成度を誇る。クライマックスとなる分身とのクッキングシーンも、ホンモノより「女の子らしい」という設定を見事に生かした展開だ。
ちなみに今回は、大地と姫子が直接会話をかわすシーンがないにも関わらず、二人の恋愛的な親密さを表現している(ひかるが手作りクッキーを大地に試食させるときに見せる姫子の表情や、ラストで姫子が作ったクッキーを見ての大地のつぶやきなど)のもミソ。
#32「ひかる!大地と衝撃キス」
抱腹絶倒の娯楽編ともいうべき一本。基本的プロットそのものはある種典型的な学園コメディなのだが、注目すべきは、脚本・山田隆司、演出・辻初樹、作監・渡辺はじめ、というシリーズ中核をなすスタッフによって直接つくられている点だ。それだけにメインスタッフの目指していた方向性が、如実に現れている。そして、このベクトルはより強まり、次の『赤ずきんチャチャ』に結実するのだ。
占いに振り回される主人公という、これまたありがちなシチュエーションにも関わらず、テンポのいい、コメディというよりはむしろスラップスティックなノリで全編押し通しながらも、実は姫子が愛美に教わった“占い返し”のおまじないをそっとしていた、というオチは、なんともニヤリな心くすぐられるものであった。
それにしても、無理矢理にでも大地とキスして占いを真実にしょうとするひかるのハチャメチャぶりは、後年『クレヨン王国』や『カブタック』のメインライターを務めることとなる山田隆司らしいノリだ。
#33「おきらくカミルに大迷惑」
3・4クール目の重要な要素として、演出の全体的なスラップスティック化にあるわけだが、この傾向に最も貢献しているのが「美形の3枚目」有坂静である。そのヌケサクぶりは原作のそれをはるかに凌ぎ、あわせて姫子はもちろん大地との絡みも原作以上に多くなっている。それだけに、姫子にとってより親密な友達として、うってつけのギャグ・メーカーというべき存在となる。
この「2枚目ぶってるドジ」という有坂の持ち味を、子安武人のコミカルな演技がさらにブローアップさせている。現在は『セイバーマリオネットJ』や『マスターモスキートン』などで、コミカルな役どころも多い子安氏だが、その演技を開花させたのがこの『姫ちゃん』での有坂静だったのだ。
その有坂のギャグ&トラブルメーカーとしての3枚目ぶりが最大限に発揮されれたのが、この#33だ。姫子のハートをゲットするために有坂が巡らす「策略」によって、破天荒にストーリーが展開して行く様は、シチュエーションコメディならではの味わいである。
#34「まけるな!半熟先生」
井上喜久子(初音役)というシリーズ屈指のメジャー声優をゲストに迎えてはいるが、オンエア時(93年)ファンの間では不評をかったこのエピソードの脚本は、当時は無名の新人の平見瞳によるものである。
この後、平見氏は大地丙太郎監督の『こどものおもちゃ』で本格デビューしてブレイクするのは周知の通りだが、きわめて日常的な学園生活をストーリーに盛り込む方向性はこの頃から健在。その結果、この#34は、作品の本筋とも言うべき大地と姫子の関係には一切関わらない。また演出そのものも、この時期としては異例なほどエキセントリックさを抑えたものとなっており、一見すると「凡庸」な出来映えで、作画が同友動画であったことも、評価を下げる一因となっている。しかし、今回特筆すべき点は、これまで単なるガミガミ教師という印象が強かった(#30を経てもそれは拭えない!)五利先生を、教師という職業の視点で大きく掘り下げている部分だ。ここでの五利先生のポジティブな再評価は、『こどちゃ』中学生編に登場する、「不完全な教師である前に欠陥人間」であることを確信犯的に見せつける千石先生と好対照をなしていて、今見ると大変興味深い内容となっている。
なお、未確認情報だが、この#34と同一シチュエーションのエピソードが、オンエア前後の時期に『中学生日記』であったということである。
#35「迷犬ポチにご用心!」
シリーズ中、最も出色な完成度を誇るのがこの話であり、基本的にはコミカルな展開でオブラートしているが、一種のアンチテーゼともいえる内容の一本である。
姫子が拾ってきた犬は実はひかるのペットであり、その犬を一日中探し歩いていたひかる。その事実を目の当たりにしながらも、なお犬をひかるに返すことを躊躇う姫子。
これまでも度々私利私欲な態度を見せてきた姫子であったが、例えば#31で、クッキーを最後まで自分で作る決意をさせるように、常に安全弁が働いて、彼女がエゴを剥きだす事は一度もなかった。むしろそのエゴイズムは、ひかるというキャラの専売特許ともいうべき要素であり、それは“ダークサイド”な部分でもある。だが、この回では冒頭より姫子のエゴが全面にクローズアップされた恰好で、ひかるの立場の正当性が主張される。
この#35こそ、アニメ版『姫ちゃんのリボン』の最たる話の一つといえるだろう。
余談ながら、今回のポチの特技・死んだフリは聖結花と同じ特技(どちらの声も冬馬由美!)だったりする。
#36「支倉先輩!青春の旅立ち」
金春智子の脚本をときたひろこが演出するという、「少女アニメ」の真骨頂のようなスタッフが参加したのがこの#36だ。
原作でも支倉が海外へと留学するというシチュエーションは登場するが、モブ的なワンポイントにすぎない。実質的にはオリジナルのエピソードである。
全編を通して姫子がフライングし続ける展開で、彼女自身がトラブルメーカーとして位置づけられた、全体としてはシチュエーションコメディの色合いが強いのも特徴である。
原作にも描かれている、ラストでの愛子が支倉と電話する場面へのもって行き方は巧みで、(シナリオの組み立てそのものが、ここに端を発しているわけだが)原作以上に、愛子と支倉の関係に深みを与えている。
この回でも分身は姫子の抑止力という位置づけがなされている。また分身を解くと同時に記憶が共有されるという設定が披露されるが、これがファン側に分身の設定の混乱を招くことになった。シナリオ的には巧みに回避しているのだが、その辺の申し合わせがスタッフサイドで出来ていなかった結果といえるだろう。
#38「いたずら妖精大騒動!」
#39「ホットケーキは甘い罠」
3クール目の最後を飾る前後編は、春に登場した二つの新アイテム「魔法のパレット」と「魔法の羽ペン」をT強化Uするための、いわばご祝儀的なエピソードであるが、ただしその「新能力」が使えるようになるのは、次回(#40)以降というところがミソ。
やはりポイントなのは、魔法の国からの闖入者・マッシーとホッシーによる騒動の顛末というストーリーで、ここでスポットされるのは、例によって(?)日比野ひかるだ。彼女ならではの思いこみが、実は騒動の傷口をさらに広げてしまうという、その憎めないトラブルメーカーぶりが今回も遺憾なく発揮されている。しかも後編(#39)で、消える魔球シュートが「錯覚」だったと知ったときの狼狽ぶりと、大地の助け船に対する反応が、きわめてナチュラルなのだ。
また、この2本でも有坂のピンぼけぶりは健在で、特に#38ではマッシーとホッシーの存在に気がつかない辺りも見事(姫子から相談を受けた直後に、開花した桜(オンエアは6月下旬であった)に気づいて、いぶかる辺りもニクイ配慮だ)。この有坂の頼りにならないという設定が言外にものをいっており、エリカが2匹の妖精の捕獲を姫子に依頼するという基本シチュエーションに、説得力を持たせてもいるのであった。
本編とは直接関係ないが、#39で魔法の国の服装のまま姿を見せたカミルに対しての、愛子の天然ボケもポイントが高い。愛子は#33でもこれに近いボケぶりを見せており(大地の変身した姫子が、有坂とともに謝って回るシーン)、アニメ独自の解釈がうかがえる。
この#38・#39は、ある意味でアニメ版『姫ちゃん』の一つの集大成的な仕上がりとなっているといえよう。
#40「ハチャメチャ友情大作戦」
2度目の平見瞠脚本である今回も、学園生活に焦点を絞ったストーリーとなっている。決して破天荒ではないのだが、ちょっとした日常の断片を切り取り巧みに『姫ちゃん』の世界に組み入れた展開は、小品ではあるが、なかなか味わいのある作品となっている。特に、ひかると姫子がある意味で火花を散らすような形をとる話でありながら、大地自身は直接絡まないという構成がミソだ。
原作でもそうなのだが、レギュラーでありながらなかなかクローズアップされない、まなみといっちゃんを積極的に絡めて姫子の日常(キャラクター)を掘り下げることで、ラブストーリーや破天荒な展開を抜きにしても、本作が充分に成立することを証明したのである。そしてこのベクトルは、後年『こどものおもちゃ』で、破天荒な演出家(爆笑)大地丙太郎と組むことで、よりTセンスオブワンダーUな形で開花することとなる。
#41「小さな恋人たち」
#7をアニメ・オリジナルの展開にしてしまったために生じた原作とのギャップ──夢子と森太郎が出会っていない点を埋めるストーリー、と言い切ってしまうには、あまりにももったいない好編に仕上がっている。
初対面の夢子と森太郎が、最初は互いに人見知りしあっていたがとある共通の悩みを知ってうち解けたあとに続く、この二人の「小さい子」ならではの冒険諢は、原作以上に二人の親密度がアピールされているのであった。特に大きな犬から夢子をかばおうとする森太郎(自分も内心は恐いのに!)の場面は、そうした面が良く表れている。本エピソードの演出は#35も担当した赤根和樹。赤根氏はこの後、『エスカフローネ』『カウボーイビバップ』などのサンライズ作品で辣腕を振るうことになる。キャラクターの感情の機微やディテールを思い入れたっぷりに描写する彼ならではの手腕が、この『姫ちゃん』でも既に見て取ることができる。
作画はスタジオぎゃろっぷとフィルムマジックの混成班。クレジットにある「和田原広江」とはフィルムマジックの和田高明・原敦彦・広江克己のことで、主にAパートの原画を担当していると思われる。またこの回では、#31・#39に続いて姫子のクッキーが引っ張られており、どうやら彼女の「バカの一つ覚え」……もとい、お得意となっていることがわかる。
#42「キャンプでUFO!」
3・4クール目を象徴するような、シチュエーションコメディ路線の娯楽編。UFO捜しで出かけたものの、その正体は魔法の羽ペンだったという「ちゃんちゃん」なオチの今回だが、フォーカスされているのはクラスメートたちとのキャンプの場面だ。ひかる以外の学校関係のレギュラーが全員登場して、それぞれの持ち味を生かしたシチュエーションが用意されている。このあたりは、本作の「日常密着型」という基本ベクトルの結果といえるだろう。
また、原作にもあるテツと愛美の関係の片鱗を見せている点も注目だ。実はテツと愛美やいっちゃんが行動をともにするのは、これが初めてなのである。
なおこの#42をもって渡辺はじめは、『赤ずきんチャチャ』のキャラデザイン作業のため、シリーズの本編作画からしばらく離れることになるのだが、もうこの時期となると後の『こどちゃ』にまで至る独特のアレンジ(淡泊な主線、丸顔にドングリ眼など)が完全に確立されている
#43「プールでドッキリ!」
分身姫ちゃんが主役級の扱いをうける唯一のエピソード、それがこの#43だ。プールと遊園地のダブルブッキングを、分身を使ってこなそうとしたものの、プールは遊園地に併設されていて、分身と本物がはからずとも出会ってしまう……という顛末をコミカルに描いたドタバタ・ストーリーだが、このプールと遊園地でのシーンを交互に見せることで、プールに友達といる本物と、父親たちと遊園地で遊ぶ分身との対比が鮮やかなのだ。それは、いつものように分身が妙に女の子している部分(今回はジェットコースターが恐くて乗れないというシーン)でのギャップにとどまらず、彼女のメンタルな部分にも描写が及んでいるからだ。
ローティーンの心理として、親と遊園地へ行くよりは仲の良い友達とプールに行く方がはるかに楽しいわけで、本物の姫子のこの感情表現が巧みな分、分身の「自分がコピーである」という意識からくる、(自身も遊園地で楽しい思いをしているだけに)父親への申し訳なさが引き立つのである。
またラストで、自発的に姫子が「今度は分身でなく私がお父さんと遊園地へ行きたいな」と思うように組まれた展開も、ドタバタだけに終わらせないニクイオチである。
#44「ひかるの懲りない夏休み」
3週間連続で続いてきた、シチュエーション・コメディ路線が色濃く出た「サマーシーズン・レジャー編」のトリとなるのがこのエピソードである。今回は久しぶりにひかるがトラブルメーカーぶりを発揮し、一方的に姫子と大地を巡る恋の鞘当てを繰り広げてくれる。原作での林間学校のエピソード(アニメでは#12のスキー教室としてアレンジ)でひかるが大地の気を引くために見せたおぼれるフリが、さりげなく挿入されている辺りも細かくニクイ配慮だ。
肝試しで、姫子がひかるを意識しすぎてジェラシーに似た感情を自覚してしまい、思わずため息をついてしまう、という展開も大地に対しての姫子の想いの一端をかいま見るようだ。次回からの総集編シリーズを前にして、一つの区切りをつけるような仕上がりを見せており、シリーズ構成の山田隆司ならではまとめ具合が見事だ。
#45「初恋メモワール」
#46「支倉先輩…さようなら」
シリーズが延長したのはいいが、予算的には厳しかった『姫ちゃんのリボン』が選択した方法。──それはコンスタントに5週のうち2週間分を総集編にするという、まさに「苦肉の策」だった。この総集編の脚本はサンライズのロボット物でおなじみの高橋良輔監督がすべて手がけており、かつて『ダグラム』や『ボトムズ』でみせた総集編の妙技を遺憾なく(?)発揮している。なお高橋監督は、本作はもとより前番組の『あげだま』からその後の『こどものおもちゃ』まで演出協力という立場で制作に関わっている。
総集編シリーズ(苦笑)の第1弾となるのが、支倉先輩編ともいうべきシリーズ初期のエピソード群だ。シチュエーションとしては、留学間近となった支倉と愛子をみて姫子が支倉に熱を上げていた頃を思い出すというもの。#45は描き下ろしカットも多くなっているが、#46は#36のDNを巧みに加えて(夕食で愛子が食欲をなくしているシーンなど)、作画予算を抑えている。
#47「大地のいない夏休み」
夏休みも終わりに近いある日を描いた、どちらかといえば地味なエピソードだが逆にこの淡泊な演出が、晩夏のアンニュイな午後という雰囲気をかもし出しており、なかなか白眉な仕上がりだ。
久しぶりのゲストキャラ、宏と真佐子(菊地正美&矢島晶子というシリーズ屈指のメジャー声優の共演もポイント高い)の恋の顛末を描くことで、その関係をみた姫子が、自身と大地の関係に重ね合わせる構成は、大地との恋愛感情があまり進展しないアニメ版にあっては非常に珍しく、それだけに効果的でもある。特に、ラストで大地からの絵はがきを喜ぶ姫子の反応がとても良いのデス! また前回の総集編で支倉先輩と完全に決別した直後という点も、その辺の印象を強めている。さらに、この姫子のポジティブな感情は、大地はもとよりポコ太すら知らないという展開も心憎いばかりだ。
#48「狙われたお母さん」
#49「ハートタクトで大あばれ」
姫子の母親・花子の書いた小説通りに事件が発生して行くという、いわゆる『Wの悲劇』もの。一応シリーズ延長に際してのニューアイテム「ひみつのハートタクト」の登場/ご祝儀編でもあるのだが、アニメ・原作を問わず少々使いあぐねていた、花子の小説家という設定を無理矢理に使った印象もなくはない。
原作では、こうした刑事事件を絡めたサスペンシブな展開をよく見せていた(アニメでの#8・#28・#30に相当)わけだが、アニメ版はより日常的なシチュエーション・コメディ路線をメインに置いていただけに、かなりイレギュラーな内容となってしまった。
ハートタクトの能力そのものは、原作に登場する体のサイズを自在に変えることが出来るキャンディーと同一であり、完全にアニメのオリジナルストーリーながら、姫子がハートタクトを初めて使ってみるシークエンスが原作とほぼ同じであるあたり、アニメ版のそつのない(ある意味原作ファンを納得させる)作りといえよう。
なお、#49の作監はこの翌年(94年)『愛天使ウエディングピーチ』のメイン作監として注目を浴びることになる一石小百合である(本作では#1でも原画を担当している)。