電話で協議「ニューヨークで17日会談」一致
安倍晋三首相は10日、米大統領選で勝利した共和党のドナルド・トランプ氏と電話で協議し、ニューヨークで17日(現地時間)に会談することで一致した。異例の早期会談でトランプ氏の外交姿勢を確認し、日本外交の戦略を再構築する。安倍政権は日米同盟を基軸に対中外交や日露関係強化に取り組んできたが、トランプ氏の出方次第では戦略の修正も必要になるためだ。
日本の首相が次期大統領と就任前に会談すること自体異例だが、選挙直後は極めて異例だ。日本側の危機感の表れと言える。
電話協議で首相は「日米同盟は地域の平和と安定を下支えする不可欠な存在だ」と強調。トランプ氏は「日米関係は卓越したパートナーシップであり、この特別な関係をさらに強化したい」と応じた。まずは日米同盟の重要性を再確認した。ただ、トランプ氏は「まだすべてが未知数」(外務省幹部)だ。
トランプ氏は安倍政権が米国と協力して進めてきた環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に強く反対。大統領選中には「米国は世界の警察官ではない」と語り、同盟国に米軍駐留経費の負担増を求め、日韓の核武装を容認する発言もした。言動通りに「内向き志向」を強めれば、日本外交全体に影響する。
日本は米国と連携して中国の海洋進出をけん制してきた。米国がアジア太平洋地域への関与を低下させれば、中国の海洋進出はさらに活発化しかねない。
トランプ氏はオバマ政権が対立してきたロシアのプーチン大統領を称賛し、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長と対話する考えも示した。米露、米朝関係が変化する可能性もある。日本の頭越しに北朝鮮との対話にかじを切る懸念も出ている。
もっとも「大統領に就任すれば現実的になる」との見方は根強い。電話協議ではトランプ氏は首相の経済政策「アベノミクス」を何度も引き合いに出し「2人は波長が合っていた」(政府関係者)という。首脳間の信頼関係構築から同盟を安定させたいという期待も出ている。【影山哲也】