続々々研究者の皆様へ

2016.11.10

非常に多くの方々から、コメントをいただいております。ありがとうございます。

コメントの分析などに少しお時間をいただきます。

新しいデータもありますので、お知らせします。

ただし、さまざまなデータの定義が違っていたり、含まれているもの含まれていないものが違っていたり、比較が難しいのが現実です。

議論のためのデータの整理やとり方の平仄を合わせる必要を痛感します。

国立大学の運営費交付金の減額は、平成16年度から平成28年度の間に382億円の減少にとどまっています。

文科省はそれに対して職員の高齢化による福利厚生費の増加、消費税改定の影響、光熱水費の増加および電子ジャーナル費の上乗せなど、運営費交付金の枠内で出さなければならない経費が増えているので、研究費に回せる金額は見かけ以上に減少していると主張しています。

文科省は、そうした経費の増加分は800億円から1000億円としていますが、詳細は不明です。

また、研究者一人当たりの研究費の増加に関しても、災害にあった設備の復旧費や消費税の増加の影響があり、増加分すべてが研究に使える金額ではないと主張しています。

また、国立大学教員の約6割が年間の個人研究費が50万円未満という調査があります。(文科省 「個人研究費等の実態に関するアンケート」)

文科省によれば、国立大学法人の経常費用を平成16年度と平成26年度で比較してそれぞれの割合は

受託研究費 16.02% 19.33%
非常勤職員人件費 2.73 3.79
非常勤教員人件費 1.64 2.83
常勤職員人件費 15.68 12.10
常勤教員人件費 42.88 34.73
研究経費 14.52 17.56
教育経費 6.54 9.67
となっています。

研究費の割合は増えていますが、学生数が減少する中で教育経費も1.5倍になっています。

運営費交付金で措置される教員数と外部資金等で雇用される教員数を平成21年度と平成28年度で比較すると

運営費交付金 57,940人 56,148人
外部資金等   4,721人 9,664人

運営費交付金で措置される教員と比べ、外部資金等で雇用される教員の身分が不安定ということであれば、その数が増えています。

ただ、教員の総数も増えています。

国立大学における若手教員の雇用状況の変化というデータがありますが、「若手」の定義がありません。左から任期付き、任期なしです。
    
平成19年度 6,853人 10,814人
平成28年度 10,650人 6,270人

データの定義、中身があまりにばらばらなのは、これをベースに政策の議論をするというよりも、それぞれ主張を裏付けられそうなデータを作っていることにあるのかな、と疑ってみたくもなります。

ここまでのデータやコメントから、研究費総額をどうするかという議論はあるにしても、ざっくり言って、

研究者の雇用状況が不安定になっている

数十万円から100万円程度の研究費が必要な研究者が、十分な研究費をとることができていない

研究費をとるための事務作業が研究の時間を削っている
ということでしょうか。

宇宙ロケット、もんじゅ・ASTRID、ITER、スパコン、スーパーカミオカンデ、カグラといった巨大プロジェクトが動く影で、小口(失礼)の研究費をどう配賦するかという問題が多くの研究者に影響しているので、この部分をどうするかが優先順位が高いのでしょうか。




河野太郎にメールする