News Up なぜ和式多い? 学校のトイレ事情

News Up なぜ和式多い? 学校のトイレ事情
日々の生活に欠かせない「トイレ」。一般の家庭で洋式トイレが普及し、最近では、和式トイレの使い方を知らない子どもも増えているということです。こうした中、学校のトイレについて、文部科学省が初めて行った調査結果がまとまりました。
文部科学省は、全国の公立の小中学校2万9000校余りを対象に、ことし4月の時点で、子どもたちが使うトイレが洋式か和式かを調査しました。
その結果、合わせておよそ140万のトイレのうち、和式が56.7%、洋式が43.3%で、和式が半数以上を占めていることがわかりました。
洋式の設置率が最も高かった都道府県は神奈川県で58.4%、次いで沖縄県が54.7%、山梨県が54.4%などとなっています。
一方、最も低かったのは山口県で26.7%、次いで島根県が30.0%、長崎県が30.3%などとなっています。

半数以上が和式 初の文科省調査

文部科学省は、全国の公立の小中学校2万9000校余りを対象に、ことし4月の時点で、子どもたちが使うトイレが洋式か和式かを調査しました。
その結果、合わせておよそ140万のトイレのうち、和式が56.7%、洋式が43.3%で、和式が半数以上を占めていることがわかりました。
洋式の設置率が最も高かった都道府県は神奈川県で58.4%、次いで沖縄県が54.7%、山梨県が54.4%などとなっています。
一方、最も低かったのは山口県で26.7%、次いで島根県が30.0%、長崎県が30.3%などとなっています。

子どもたちの受け止めは?

子どもたちはどのように感じているのでしょうか。
中学生に尋ねたところ、「人が使った洋式の便座に座りたくない」とか、「和式トイレは運動になる。しゃがむことで足が鍛えられる」などとして、和式を歓迎する人もいました。
しかし、「和式は使いづらい」、「汚ないイメージがある」、「公園のトイレで数回利用したぐらいで、ほとんど使ったことがない」などとして、学校も洋式にしてほしいという声が圧倒的に多く聞かれました。
和式の利用を避けて我慢した子どもが体調を崩すこともあるそうです。

すべての高校で”洋式化” 大阪府

生徒や保護者の声に応えようと、大阪府は、138あるすべての府立高校で洋式トイレを導入することを決めました。改修には配管工事などを含めて1校あたり5000万円程度かかり、すべての府立高校を合わせるとおよそ55億円が必要ですが、今後、予算案を府議会に提出し、来年度から工事を始めたいとしています。
大阪府の松井知事は、高校のトイレについて府議会で問われ、「今の生徒は家庭でも洋式なので、学校が和式では生理現象を我慢してしまい勉強に身が入らない。学力に悪い影響を与えることのないよう、少しでも早く実施したい」と述べています。

立ちはだかる費用の壁

しかし、洋式化がなかなか進まない学校も多くなっています。「社会には和式トイレしかない環境もあるので、学校で使い方を教える必要がある」という意見もありますが、費用の問題が大きな理由になっています。

鹿児島市は、保護者や学校から要望を受けて洋式に替える改修工事を進めていますが、ことし4月の時点で、公立小学校のトイレのおよそ3分の2が和式になっています。
市の教育委員会によりますと、校舎の耐震化を優先的に進める中で予算の確保が難しいことや、授業を行っている期間に工事をしづらいことなどが背景にあるということです。

神奈川県小田原市も、公立の小中学校のトイレのおよそ7割を和式が占めています。築40年以上の校舎が多く、雨漏りを防ぐ工事や外壁の改修を優先する必要があり、予算の確保が難しいということです。
教育委員会の担当者は、「トイレも大事だが、財源に限りがある中で子どもの生命に関わるものから優先させていく」と話し、トイレの洋式化は段階的に進めていくとしています。
文部科学省は、改修費用の3分の1を補助していますが、今後、予算の確保も含めて検討したいとしています。

災害に備える必要も

学校のトイレは、子どもたちだけの問題ではありません。学校は災害時に避難所になることが多く、足腰が弱いお年寄りが避難した場合、和式だけでは困るという指摘もあります。

ことし9月、鹿児島市で、災害時のトイレについて考える講演会が開かれました。この中で、住宅設備メーカーなどで作る「学校のトイレ研究会」が、熊本地震の被災地で行った調査結果が報告されました。避難を経験した101人に避難所で不便だったことを複数回答で尋ねたところ、「トイレ」と答えた人が67%と最も多く、「入浴」や「食事」を上回りました。お年寄りや体の不自由な人にとって和式トイレは使いにくく、衛生的でもある洋式の設置を求める声が多かったということです。
研究会の河村浩さんは、「学校は避難所としての機能も果たすので、子どもたちだけでなく高齢者などの視点で安心して使える空間づくりが大切だ」と話していました。

熊本地震の被災地で医療支援にあたった宮崎県にある日南市立中部病院の鈴木幹次郎医師も、避難所の環境がお年寄りの生活を厳しいものにしていたと指摘しています。この経験をもとに、地元、日南市の避難所に指定されている、廃校になった小学校を訪ねたところ、トイレは和式が多く、周りに段差があるなど、高齢者が生活しづらいことに気付きました。鈴木さんは簡単なスロープなどを自分たちで取り付け、行政とも話し合っていくことにしました。

さらに、徳島県は熊本地震の避難所で和式トイレに慣れていない人が利用を控え体調を崩すケースがあったとして、災害時に洋式を使えるようにする取り組みを始めました。民間の建築資材のレンタル会社などが保有する仮設トイレを調べたところ、2700のうち洋式は70しかなかったということで、これらを洋式に切り替える際、費用の4分の1を補助するということです。

「トイレに多様性を」

さまざまな事情が関係するトイレ。これからの学校のトイレは、どうあるべきなのでしょうか。
NPO法人「日本トイレ研究所」の加藤篤代表理事は、「トイレは、安心して使える環境を整えることが最も大切だ。今の子どもは家庭で洋式を使う機会が多いのに学校は和式が多いという現状は、子どもたちのストレスになるおそれがある。災害時に避難所となり、足腰の弱い高齢者などが利用することを考えても、洋式化を進めるべきだ」と話しています。
一方で、「国内でも海外でもいわゆる『和式』しかない場面もあり、使い方を身につけておくことは大切だ。和式のほうが安心して使えるという子どももいるので、和式も残し、どちらも選べる多様性を保つ必要がある」と指摘しています。

学校だけじゃない トイレの課題

こうしたトイレの問題は学校だけではありません。広くは外国人への対応という面でも課題になっています。環境省は、全国の国立公園を訪れる外国人観光客を増やそうと、受け入れ態勢の整備を重点的に進めるモデル地区を選びました。

その1つ、鳥取県を中心とした「大山隠岐国立公園」は豊かな自然が魅力です。しかし、宿泊施設の中には、和室しかなかったり、トイレも和式だけだったりと、外国人の受け入れには不十分な面がありました。地元、鳥取県大山町役場の福留弘明さんは、「不十分な点をしっかりと改善し、事業者や住民の皆さんと一緒になって、大山をより魅力的にしていきたい」と話していました。

2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開かれ、多くの外国人が訪れると予想されています。
東京・江東区は、公園などにあるすべての公衆トイレに洋式の便器を整備することを決め、オリンピックまでに工事を終えることにしています。