神宮外苑のイベント会場で火事 5歳男児死亡 2人けが 東京

神宮外苑のイベント会場で火事 5歳男児死亡 2人けが 東京
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6日夕方、東京・新宿区の明治神宮外苑のイベント会場で、ジャングルジムのような形をした展示物が焼け、中で遊んでいた5歳の男の子が死亡し、助けようとした父親など2人がけがをしました。
6日午後5時20分ごろ、東京・新宿区霞ヶ丘町の明治神宮外苑のイベント会場で展示品が燃えていると、警視庁や東京消防庁に通報がありました。会場にいた人が消火器で消火活動を行うなどして、火はまもなく消し止められましたが、警視庁によりますと、この火事で、東京・港区の幼稚園児、佐伯健仁くん(5)が搬送先の病院で死亡が確認されました。また、助けようとした健仁くんの44歳の父親と、別の40代の男性が顔にやけどをしましたが、いずれも命に別状はないということです。

警視庁やイベントの主催者などによりますと、当時、明治神宮外苑では現代アートの作品を展示するイベントが開かれていて、焼けたのは、日本工業大学工学部建築学科の学生が中心となって作る「新建築デザイン研究会」という部活動が出展したもので、ジャングルジムのような形の木製の展示物です。大きさは、高さが3メートル、幅が5メートル、奥行きが2メートルあり、人が中に入って遊べるようになっていたということです。

当時、健仁くんは真ん中付近で遊んでいて、火事に巻き込まれたと見られるということです。また、展示物には木くずが敷かれ、ライトで照らされていたということで、警視庁は目撃者の話などから、木くずから出火した可能性があると見て、火が出た当時の詳しい状況を調べています。

主催者「全作品のチェックは困難」

今回イベントを主催した東京・港区にあるTOKYO DESIGN WEEKの川崎健二社長が6日午後9時すぎ、会場で報道陣の取材に応じました。川崎社長はまず、「貴い5歳のお子様が亡くなられ、ざんきに堪えず、重く受け止めています。申し訳ございませんでした」と謝罪しました。

そして、「31年間続けてきたイベントで、このような事故は初めてで、悔しくてしかたがない」と述べました。さらに、火災が起きた日本工業大学の作品「素の家」について、事前に学生側が提出した書類で構造を確認していたものの、書類には照明と素材の位置関係など詳しい記載はなかったと説明しました。

そのうえで、「作品にとがった部分がないかや、高さなどは確認しているが、全部で600点ある作品の一つ一つを詳しくチェックするのは困難だった。アート作品なので、主催者側からデザインについて、いろいろ注文をするのも難しい」と述べました。このほか、川崎社長は7日までの予定だった今回のイベントを、事故を受けて、6日までで中止とすると述べました。

また、学生作品展のエリアの責任者を務める多摩美術大学の田淵諭教授も川崎社長とともに取材に応じ、「展示は消防法にも照らして問題ないように準備してきた。照明など電気を使う場合は電圧に制限も設けていた。火災が想定されないかは開催前から十分確認していた」と述べました。

大学「本当に申し訳ない」

火災が起きた作品を出展した学生が所属する日本工業大学は、6日夜、埼玉県宮代町のキャンパスで取材に応じました。この中で、藤田則夫常務理事は「まずもって謝らなければなりません。大変申し訳ありませんでした」と謝罪しました。

大学の説明によりますと、作品を出展したのは工学部建築学科の学生が中心となって作る新建築デザイン研究会という部活動だったということです。この部活動は、ことし5月の時点で、1年生から4年生までの学生34人が参加していて、今回のイベントにはここ数年、続けて作品を出展していたということです。また、作品の詳細やどのような安全対策をとっていたのかについては把握できていないということですが、この部活動の部長を務める3年生の男子学生は、大学に対し、「白熱電球は使っておらず、LED電球1個を使っていた」と話しているということです。

そのうえで、大学は、今後の対応について、「詳細な状況は把握しておらず、火災のあと現場に到着した教員と連絡を取るなどして事実確認を急いでいます。子どもが亡くなっていて。お2人がけがをしているということなので、状況を把握しつつ対応を考えたい」と述べました。

また、日本工業大学の学生で、火事になった作品とは別の作品を出展していた20歳の男性がイベント会場で取材に応じ、「火が出た展示物は3、4年生があらかじめ学校で作って会場に持ち込んで組み立てていた。友人から聞いた話では、燃えた作品は、ジャングルジムのような木の骨組みの部分に装飾として木くずを敷いていて、そこに何らかの原因で火がついたのではないかということだった。同じ学校の作品でこのような事故が起こり、悲しいです」と話していました。

目撃者「イベントの演出かと思った」

母親とイベントに訪れていた東京都内の中学1年生の男子生徒は「会場にいてなんとなく煙くさいなと思ったら、炎が上がった。炎の高さは15メートルほどで真っ赤な色だった。最初は演出かと思って周りにいた人も近づいていったが、火事だと分かり、一斉に逃げた。このようなイベントの会場で事故が起き、悲しいです」と話していました。

当時、現場にいた男性によりますと、燃えた展示物は人の背丈より高く四角い枠を組み上げて作ったジャングルジムのような形をしていたということです。「火の中に子どもがいる」という助けを求める声や救急車を呼ぶ声が聞こえたということです。そして、若い男性など10人ほどが水をかけたり消火器を使って懸命に火を消そうとして、展示物を持ち上げて横倒しにしたということです。

また、火災が起きた時、現場近くにいたという来場者の男性は、「火が出た時、子どもなど複数の人が展示品の上の方に逃れようとしていて、子どもを救助するのを手伝いました。逃げ遅れた人はいないと思っていましたが、消火活動が終わったあとに亡くなった子がいたと聞き、気が動転して、あとのことは覚えていません」と話していました。

「地面には木材のチップのようなもの」

火災現場の近くで作品を出品していた20代の男性は火災が起きたときの状況について、「燃えたオブジェは学生が作ったもので、すべて木でできていてジャングルジムのように子どもが登って遊べるようになっていた。地面には木材のチップのようなものが敷かれていた。午後6時ごろ、突然、火があがり、その直後に“中に人がいるぞ”と声があがって、周りの人がオブジェを持ち上げて助け出した様子だった。オレンジ色の炎が高さが6メートルくらいまであがって、煙と熱気もすごかった。スタッフが消火器で火を消そうとしていたが、間に合わなかった」と話していました。