安倍晋三首相は10日朝、米大統領選で勝利した共和党のドナルド・トランプ氏と電話で協議し、ニューヨークで17日(現地時間)に会談する方向で合意した。トランプ氏は日米関係について「卓越したパートナーシップで、特別な関係をさらに強化していきたい」と述べて重視する姿勢を示した。トランプ氏が反対する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)や、日本の負担増を求めている在日米軍駐留経費の話は出なかった。大統領選の勝利者と日本の首相が選挙直後に直接会うのは異例という。
電話協議は日本側から申し入れ、約20分間行った。首相は「類いまれなリーダーシップにより、米国がより一層偉大な国になると確信する」と祝意を伝え、トランプ氏は「安倍首相の今日までの業績を高く評価している。今後数年間、共に働くことを楽しみにしている」と応じた。
首相は日米同盟に言及し、「経済成長の中心のアジア太平洋の平和と安定は米国の力の源泉で、強固な日米同盟はこの地域の平和と安定を下支えする不可欠な存在だ」と意義を強調した。首相が「できるだけ早くお会いしたい」と持ちかけると、トランプ氏は「素晴らしい提案だ。ぜひお会いし日米両国にとって前向きな議論をしたい」と答えた。官邸関係者によると、トランプ氏は「アベノミクス」という語句を何度も言い、安倍政権の経済政策を評価したという。
首相はペルーで20日に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するのに先立ち、ニューヨークを訪れる。トランプ氏との会食も調整する。大統領就任前からトランプ氏と接触し、早期に信頼関係を築く狙いがある。【田中裕之】