「そうですね」
「ちょっと聞かせてもらえる? 『女性学は学問としては成り立ってない』ってどういうこと?」
「……うん、続けて」
「あ、もちろん男性主導って意味じゃないですよ? 『なんで男性は女性を抑圧してきたのか』を男性自身が考える、その視点が足りないと思うんです。先ほど受けた授業は、『女性はいかに男性から抑圧されてきたか』という女性の声を聞くものでした」
「そうね。女性割礼や人身売買のVTRを中心にした授業でした」
「確かに女性は男性から抑圧されてきた歴史があります。でも、抑圧されたと主張するだけではどうにもなりませんよね。どんな社会構造が何故女性を抑圧する仕組みを作り、それを男性が是としてきたか。それを考えていかなきゃいけないんじゃないかと」
「そうでしょう。抑圧しているのは男性なんですから。抑圧している側が、何故抑圧を是としているのか、それを解き明かさそうとしないで、『女性学』に学問としての体裁は立たないと思います」
「あざっす」
10年以上前の話で、当時の教授はテレビにもちょこちょこ出てるような、うちの大学ではかなり有名な方に入る人だった。
今なら分かるのだが、自分の言っていたことは「人類には早過ぎた」のだ。そこまで持って行きたくても、持っていけない。当時のフェミニストたちは、そこをもどかしく思いながら、女性に啓蒙するしかなかったのだ。
自分たちは虐げられてることを是とはしていない、と、声を上げ続けなければいけない。まだ、「その段階」だったのだ。
だから教授は自分のレポートに満点をくれたのだと思う。少なくとも、「もう少し進んだ話」では正しかったのだろう。
「今まで優先される立場にあった人間は、平等な立場に置かれると、自分が冷遇されたと感じる」
だから、一足飛びで「今までお前らは余りにも優遇されまくってました。だから、今日からは同じ扱いにします」なんてのを受け入れられるほど、人類は強く賢く出来ていないのだ。
今の人類は、「今までお前らが殴ってた相手には同じくらいの殴り返してくる力があると証明されました。さあ、分かったら存分に殴り合いましょう」という階梯であり、ここからまたしばらく泥沼な戦いが続くのだ。
まだまだ世界史は発展してるなぁ、って感じ。
正しい分析&認識だと思いました。