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【社会】

横浜で原発避難の生徒にいじめ 第三者委、学校など批判

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 東京電力福島第一原発事故で福島県から横浜市に自主避難した中学一年の男子生徒(13)が不登校になり、いじめ防止対策推進法に基づく調査の結果、横浜市教育委員会の第三者委員会が避難直後から同級生によるいじめがあったと認定し、市教委や学校の対応を「教育の放棄」などと批判する報告書をまとめたことが、生徒側への取材で分かった。

 報告書によると、生徒は小学二年だった二〇一一年八月、横浜市立小に転校。直後から名前に菌を付けて呼ばれたり、蹴られたりするなどのいじめを受け、小三になって一時、不登校になった。

 小五の時には、同級生から「(原発事故の)賠償金をもらっているだろう」と言われ、ゲームセンターでの遊興費などを負担。一回当たり五万〜十万円を約十回、十人前後に支払ったと生徒は証言した。その後現在に至るまで不登校が続いている。

 第三者委は、学校側について「原発事故からの避難で内面的な問題を抱えた生徒への配慮に欠け、積極的に対応する姿勢がうかがえない」と指摘。金銭の授受そのものはいじめと認定していないが、いじめから逃れるためだったと推察できるとし、事態を把握しながら指導しなかったことを「教育の放棄に等しい」と批判した。市教委に対しても、重大事態と捉えず調査の開始が遅れ、生徒への適切な支援が遅れたとした。

 生徒側が昨年十二月、調査を求める申し入れ書を市に提出。推進法に基づき、市教委の諮問で第三者委が調査していた。

 両親によると、生徒は精神的に不安定でカウンセリングを受けている。母親は取材に「市教委や学校は指摘されたことを受け止め、二度と同じことを繰り返さないでほしい」と話した。

 ◇ 

 市教委は九日に記者会見し、事実関係を認めた上で、「現場ではいじめ解決に取り組んでいたが、情報の共有が不十分だった。保護者から昨年十二月に申し入れがあるまで、有効な対策が取れなかった」と話した。

◆「極めて憂慮すべき事態」「見識疑う」

 男子生徒は原発事故で避難して以降、いじめを受けるようになり、断続的に不登校となった。「極めて憂慮すべき事態」「理解できない」。いじめを認定した市教委の第三者委は、調査報告書の中で、学校だけでなく教育現場の関係機関も痛烈に批判した。

 報告書では、保護者に対する学校側の配慮が行き届いていなかったと指摘。男子生徒が同級生に多額の金銭を支払っていた点には、生徒や同級生に適切な指導をしていなかったとして「学校教育を行う者としての見識を疑う」とした。

 また、市教委の出先機関は、金品授受について学校側から報告を受けていながら、学校に適切なアドバイスをしていなかったと指摘。学校カウンセラーを保護者の元に派遣する動きは見られず「せっかくの機能を活用しないことは究極の無駄遣い。猛省を願いたい」とした。市教委の相談事業についても、長期にわたってカウンセリングをしていながら、守秘義務を理由に学校と情報共有していないことを問題視した。

 第三者委が調査を始めたのは二回目の不登校から約一年七カ月以上経過した後。第三者委は「もっと早く着手できれば生徒の苦痛がなかったのではないかと悔やまれる」と言及した。

 

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