東京電力福島第1原発事故で福島県から横浜市に自主避難した中学1年の男子生徒(13)が、転校先の横浜市立小学校で同級生のいじめを受けたとして不登校になっていることが分かった。保護者が市教育委員会に被害を訴え、市教委の第三者委員会がいじめと認定して報告書にまとめた。生徒側は「(原発事故の)賠償金をもらっているだろう」と言われ金銭を要求されたと説明している。
報告書などによると、生徒は小学2年だった2011年8月に福島から横浜市立小に転入したが、同級生から名前に「菌」をつけて呼ばれたり、暴力を振るわれたりするいじめを受け、一時的に不登校になった。また、5年の時には「賠償金をもらっているだろう」と因縁をつけられ、ゲームセンターでの遊興費として1回あたり5万~10万円を約10回、10人前後に支払わされたと第三者委の調査に説明したという。
生徒の保護者が14年に学校に伝えたが、学校はいじめ防止対策推進法で定義された「重大事態」と判断せず、その後もいじめは断続的に続いた。保護者が15年、市教委に改めて被害を訴え、本格的な調査が始まった。報告書は「避難で内面的な問題を抱えた生徒への配慮に欠ける。積極的に対応する姿勢がうかがわれない」と指摘し、「教育の放棄に等しい」と厳しく批判している。
市教委は9日に記者会見して「市教委、学校の対応が不十分だった」と認めた。だが、この問題について「個人情報にかかわる。子どもの成長の過程に影響が出る」などとして、いじめの詳細や被害にあった生徒の性別すらも明らかにしていない。【水戸健一】