トランプ氏勝利 在日米軍への影響は

トランプ氏勝利 在日米軍への影響は
アメリカ大統領選挙で勝利したトランプ氏が、在日アメリカ軍の駐留経費を日本が全額負担しなければ、軍の撤退もいとわないという発言をしていることについて、日本の専門家は「選挙中に発言したことが、何の議論もされないまま、実行されることはありえないと思う」と述べました。
アメリカ大統領選挙で勝利したトランプ氏は、在日アメリカ軍の駐留経費を日本が全額負担しなければ、軍の撤退もいとわないという発言をしています。

これについて、陸上自衛隊の研究本部長や、防衛大学校の教授を務めた国際大学副学長の山口昇元陸将は「トランプ氏は選挙期間中にいろいろなことを言っているが具体的なことはほとんどない。仮にアメリカ軍が日本から撤退するとなると軍事戦略上、大きな力の変化になる。かつてカーター大統領が韓国からの撤退を示唆し、議論の結果、現実的ではないとなったが、トランプ氏が選挙中に発言したことが、何の議論もされないまま、実行されることはありえないと思う」と述べました。

そのうえで、今後の見通しについて、「アメリカの国防政策は政権の交代にかかわらず、ずしりと安定していて、あまりぶれたことがない。在日アメリカ軍基地は非常に重要な役割を果たしてきたし、これからも果たしていくべきだとの結論に論理的には行き着くはずだが、その点を基礎から議論するうえではいい機会かもしれない」と話しています。

また、基地負担の問題について、山口さんは「アメリカに施設や区域を提供しているということは大きなことで、それによってアメリカは日本に駐留していられる。沖縄の基地の問題が議論の対象になることは悪いことではなく、沖縄県外の本土の人たちが沖縄の現状を腹の底から共有できるか、気持ちを分かち合うための議論が必要だ」と話していました。

思いやり予算で1920億円計上

在日アメリカ軍は日米安全保障条約に基づいて、日本への駐留が認められています。

条約の第5条で日本が武力攻撃を受けた場合、アメリカが防衛する義務を定める一方で、第6条で日本の安全と極東の国際平和の維持のため、日本国内の施設や区域を使用することを認めています。

日本国内にはアメリカの陸海空軍と海兵隊の各軍の施設が置かれ、その数は専用施設だけでも、合わせて78あり、その合計の面積は東京ドーム、およそ6500個に当たる3万ヘクタール余りに上ります。

このうち、神奈川県横須賀市はアメリカ海軍第7艦隊が母港とし、沖縄本島の中部には空軍基地として極東最大となる嘉手納基地が置かれ、アメリカ軍のアジア・太平洋地域の重要な拠点となっています。

また、日本政府は日米安保体制を円滑に運用するためとして、40年近く前からいわゆる「思いやり予算」としてアメリカ軍が日本に駐留するための経費の一部を負担しています。
具体的には、基地内の施設の整備費や、基地で働く従業員の給与、それに光熱費の負担などで、今年度予算では合わせて1920億円計上されています。

在日アメリカ軍基地をめぐっては、アジアを重視するアメリカのリバランス政策の中核とされ、中国の軍事力の強化や北朝鮮による核兵器・弾道ミサイルの開発などを受けて、アメリカ軍と自衛隊の連携も深まっています。

一方、沖縄には在日アメリカ軍の専用施設の74%が集中していて、地元の基地負担を、どのように軽減していくかが大きな課題になり続けています。