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浮き彫りのポピュリズム台頭 トランプ氏勝利

支持者と握手するトランプ氏=AP

欧米政治、既存の対立構図が色あせ、「エリート対庶民」軸に

 【ローマ福島良典】8日の米大統領選で共和党候補のドナルド・トランプ氏(70)が国民の不満を吸収して勝利し、エリート主義に対抗するポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭が浮き彫りになった。経済と社会のグローバル(地球規模)化に伴う貧富の格差や移民流入への反発は欧州でも強まっている。米大統領選の結果は今後の国際政治の潮流にも影響を及ぼしそうだ。

 「人種・宗教上の偏見を拡散している」。国連人権部門トップのゼイド国連人権高等弁務官は今年9月、トランプ氏やオランダの極右政党・自由党のウィルダース党首(53)、仏極右政党・国民戦線のルペン党首(48)ら「民族主義の扇動政治家」の差別的な言動を批判した。

 欧米政治は既存の「左右」や「保革」の対立構図が色あせ、「エリート対庶民」を軸に動いている。特に欧州では経済危機に難民危機とテロが追い打ちをかけ、移民排斥を掲げる極右政党や欧州連合(EU)懐疑派が躍進している。

 米ハーバード大ケネディ行政大学院のピッパ・ノリス教授らの研究によると、欧州における右派と左派のポピュリスト政党の得票率はそれぞれ、1960年代の6.7%、2.4%から、2010年代には13.4%、12.7%へと急増。研究はポピュリスト政党の台頭を「社会の基本的な価値観と慣習を脅かすとみられる文化的変化への反発の表れ」と分析している。

 「EU残留か、離脱か」を問う6月の英国民投票では、与党・保守党の欧州懐疑派や、英国独立党のファラージ党首代行(52)ら離脱派が勝利した。10月のハンガリー国民投票は低投票率のために不成立だったが、EUの難民割り当てへの反対が98%に達し、反対派のオルバン首相(53)が「勝利」を宣言した。

 トランプ氏と似通った実業家上がりのベルルスコーニ元首相(80)を生んだイタリアでは12月4日の国民投票に向け、既成政党批判を繰り広げる新興政治団体「五つ星運動」らの反対陣営が勢いを増している。同じ日のやり直しオーストリア大統領選では、中東などからの難民流入の制限を主張する極右政党・自由党のホーファー候補(45)が有利な戦いを進めている。

 欧州は来年、「選挙の年」だ。4~5月の仏大統領選では「合法、非合法を問わず移民の流入を止めるのが私の目標だ」と宣言するルペン氏が決選投票に進む公算が大きい。来秋に総選挙を控えるドイツでも、難民受け入れに反対するペトリ共同党首(41)らの新興右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が勢力を伸ばしている。

 ローマ社会科学国際自由大学(LUISS)のセバスティアーノ・マフェットーネ教授(政治哲学)は「今、世界的なトランプ現象が起きている。移民への反感が共通要素で、欧州の指導者は多文化主義にブレーキをかけようとしている。トランプ氏勝利の影響は世界中に波及し、(1)経済(2)政治(3)民主主義--の危機を招くだろう」と指摘している。

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