スレイヤーズの小説とアニメの若干の違い
キューピー/DIANA


 零蔵庫(旧「ぜるあめ工房」)の慈漠 零さんが、リナとゼロスのいろいろな表情のアイコンを作ってくれました。どうもありがとう、慈漠 零さん!(2001年11月21日/2007年6月6日リンク修正)

1.呪文2.キャラ設定3.アニメ・オリジナル・キャラ4.魔族
皆さん、こんにちは!「それはひみつ」のセリフでおなじみのゼロスです。今日はここで、リナさんと一緒に「スレイヤーズの小説とアニメの若干の違い」について語り合おうと思います。
ちょっと!なんであたしとあなたで、「スレイヤーズ小説とアニメの違い」を語り合わなきゃならないのよ!
このページのオーナーが、真面目なレポートを書くのに飽きたんじゃないですか?
あたしが不満なのは、なんで魔族のあんたが相手なのか、ってことよ!
ご心配なく。オーナーはゼロリナ派ではありませんから。
別に何も心配なんかしてないわよ。
なぜリナさんと僕のコンビかと言いますと、まずリナさんは何といっても中心キャラですから。
そりゃぁ、そうよ。
そして僕が出て来る理由は、他のキャラがダメだからです。
は?
たとえば、ガウリイさん。もし彼が相手だったら、もっぱらリナさんがしゃべって、ガウリイさん、そのうち眠ってしまうでしょう?
…………確かに。
それからゼルガディスさん。彼も解説者向きですが、かなりぶっきらぼうですからね。
……うんうん、言える。
次にアメリアさん。彼女だったら「正義が通れば全て良し!」で片付いてしまいますからね。
解説する意味がないわね……
他に、このレポートにふさわしいキャラ、居ますか?
う〜ん、物知り、という点では賢者ルオ=グラオンとか……
アニメに出て来ないじゃないですか〜
ミルガズィアさんは?
いいんですか?絶対零度のギャグかまされても?
却下……
というわけで、さ、レポートを始めましょう。
ちょっと!主役はあたしなのよ!勝手に仕切らないでよ!


1.呪文
んじゃぁ、ここからはあたしが仕切るわよ。まず、小説とアニメの違いの中でも、特に「呪文」について考えてみるわ。ここでは「違い」にも二通りあるの。
二通りの「違い」、ですか?
アニメは原作小説の呪文をよく再現していると思うわ。それでも、やはり視覚的に訴えるために、若干の違いが出てくるのよね。
視覚的な違いと、本質的な違い、ということですか?
ううん。あたしが言いたいのは「呪文」のパワーの違いと、各キャラが使用できる呪文の違い、ということ。
ああ、確かに、原作ではそれぞれのキャラのステータス(相性のようなもの)を意識した呪文の使い方をしていましたよね。それと、飛行術、翔封界(レイ・ウィング)が使えるキャラは限られていましたものね。アメリアさんとゼルガディスさんは「翔封界は使えない」と、きっぱり書いてありますよね(第7巻P.107)。それなのに、アニメ無印の第5話じゃ、ゼルガディスさん、見栄まで切って使っていましたっけ。
アニメのスピード感を考えると、主要なキャラ全員に飛行術を使わせないとまだるっこいのよね。ステータスのことを言うなら、ゼルは一応「精霊魔術の達人」ってことになっているから、原作では黒魔術系の呪文を使っていないんだけれど、アニメではけっこう黒魔術を使っていたわ。
あれ?そうでしたっけ?
そうよ。NEXTで、ハルシフォムに魔竜烈火砲(ガーヴ・フレア)(第4話)、砂の神殿に現われたセイグラムに覇王氷河烈(ダイナスト・ブレス)(第19話)、フィブリゾに操られたガウリイに覇王雷撃陣(ダイナスト・ブラス)を使った(第23話)けれど、小説でゼルは一個も黒魔術を使っていないの。
いちいち確かめたんですか……?
ちっちっち。蛇の道は蛇、とも言うじゃない。ちゃんとほかに調べてくれている人がいるの。
アンチョコですか〜。ずるいですよ〜。
一方、アメリアなんだけど。彼女は巫女だから、本来、白魔術が専門。それなのに攻撃呪文を使えるなんて、と思う人も多いでしょうね。
さりげなく無視しましたね……。
ところがドッコイ、彼女、原作でちゃんと「黒魔術、精霊魔術を少々」使える(第4巻P.144)、となっていて、実際に魔竜烈火砲(ガーヴ・フレア)を使っているわ(第6巻P.134・第7巻P.182)。アニメでもほかに、セイグラムに黒妖陣(ブラスト・アッシュ)(第19話)、魔竜王ガーヴに覇王雷撃陣(ダイナスト・ブラス)を使っている(第22話)けれど、これはけして「違い」じゃないわ。使えてもおかしくないのよ。
えっと、もう一つの違いは……呪文の規模、でしたか。
特に竜破斬(ドラグ・スレイブ)ね。あれは原作では、せいぜいバズーカ砲程度の威力なのよね。14巻で、神殿の中で使った(第14巻P.234)けれど、余波は神殿の敷地内に留まっていたわ。
アニメでは、町中で使ったら町の大半が破壊されましたからね。あれじゃ増幅版の威力ですよ。
言っとくけれど、あたし、原作では町中で竜破斬(ドラグ・スレイブ)を使ったのは14巻の神殿の中だけだからね。いっつも、ちゃんと状況を把握して使ってるのよ。
おや?アニメでは無印の第1話でも、NEXTの第1話でも町中で派手に使っていらっしゃいましたよね?
まあ、どちらも標的は町じゃなくて、無印は黒竜(ブラック・ドラゴン)だし、NEXTでは暴走していたオリハルコン・ゴーレムだったし……それなりの事情はあるし、第一、見せ場がないと始まらないじゃない。
アニメで破壊はお約束、ですか。
誰もそんなこと、言ってない!
原作とアニメで威力が違う呪文って、竜破斬(ドラグ・スレイブ)だけですか?
視覚的に違いが分かるものってそれくらいだと思うわ。あと、威力は同じだろうけれど、描き方が違うものがあるわね。
そう言えば、青魔裂弾波(ブラム・ブレイザー)は本来青い光を放つはずですが、映画では赤というかピンクっぽかったですよね。
TVではちゃんと青だったわ。それよりもはっきりと分かるのが炎の矢(フレア・アロー)よ。原作では、第1巻から登場しているポピュラーな呪文だけれど、「前に突き出した手のひらから十本近い数の炎の矢(フレア・アロー)が生まれる」(第1巻P.117)と書いてあるわ。あたしも普通の状態で一度に十数本、増幅版だと数十本の炎の矢を出すことができるの。ところがアニメでは、ほんとうに弓を引き絞るようなポーズを取って、宙に1本の炎の矢を生むのね。構えから生まれる矢の数まで違う。でもまあ、原作を読んでいない人が、ゼルが前に突き出した手から炎の矢を発射したら「散弾銃じゃん」って思うかもね。
呪文の名前というか意味を重んじているんでしょうね。
神滅斬(ラグナ・ブレード)も、原作では「長さはせいぜいショート・ソードなみ」(第5巻P.250)となっているのに、アニメじゃどう見てもロング・ソードくらいあるし、幅もあるわ。
いわばリナさんの必殺技ですからね。ちゃちには見せられないってところでしょう。


2.キャラ設定
これは「性格」とかのことじゃなくて、年齢とか身長とかのことよ。
ちょっと待ってくださいよ。原作でもアニメでも、身長設定は発表されたこと、ないですよ?
だ・か・ら!背の順に並べた時の序列を見るの!
大丈夫ですかぁ?
ま、漠然としたことしか分からないけれどね。まず、一番のメイン・キャラであるあたしは、年齢は原作・アニメでも大きな差はないわ。無印の終わりの頃が16歳になったばかりで、NEXT・TRYの終わりはちょうどそれから一年後・二年後。原作では、第一巻の終わりが15歳の終わり頃(その二カ月ほど後、サイラーグに着いた時には16歳になっていた/第3巻P.27&P.149)、第1部の終わりが魔王との対決から一年〜一年半くらい後だから、16、17歳。原作の最後15巻にはあたしのソックリさんをあたし自身が「十七、八歳」と表現している(第15巻P.65)からね。
体格はアニメ版の方がよく発育していますよね、リナさん。
むかっ!どういう意味よ!
だって、原作でも「長身」と書かれているガウリイさんと並んで、胸に届いていますよ。原作のように「同じ年ごろの女の子たちより、やや背は低い」(第1巻P.17)なら、ガウリイさんのみぞおちくらいなんじゃないですか?おまけに、アニメの胸じゃいくらなんでも「親に連れて来られたが、はぐれてしまった男の子」に変装(第5巻P.111)は無理でしょう。
むきーっ!言わせておけばっ!そこ、動くんじゃないわよ!
年齢で一番、原作と開きがあるのがアメリアさんですよね。
……逃げたわね……
(さっきのお返しですよ)原作では、リナさんと同い年(第4巻P.56)で、リナさんのことも「リナ」と「さん」抜きで呼んでいます(第4巻P.258)が、アニメではサイラーグに行く前、リナさんたちと出会った時点で13歳ですから、約3歳の開きがあることになります。
そう、そのくせに生意気な胸、してんのよね。
まあ、アニメでは年下ということもあって、アメリアさんの方がリナさんより背が低かったんですよね。無印の対比図を見ると、リナさんを仮に150cmだとすると、アメリアさんは140cmそこそこ、という感じです。ただ、諸事情により、TRYの頃にはリナさんと同じ背丈になっています。
何よ、その「諸事情」って?
それは、ひ・み・つ。
こらっ!それじゃレポートになんないわよ!
それじゃ、ヒントを一つ。TRY11話でアメリアさんがガウリイさんに「姉さんはガウリイさんくらい背が高い」と言って、「背が高くなるのは血統」みたいなことを言っています。「血統」……そのあたりのことが「事情」です。ついでに言えば、ファンクラブで発表された数字では、リナさん147cm、アメリアさん155cmと、明らかにアメリアさんの方が高いです。まあ、「背の高い女の子」とは呼べませんけどね。
それって公式発表じゃないから後でひっくり返ることだってあるわよ。ところで、TRYのキャラ設定画を見ているんだけれど、ゼロス、あんた背が高いわね〜。
ガウリイさんに次いで高いことになっていますね。
ゼルよりも高いんだけれど、原作ではゼルは「背の高い男」(第6巻P.52)で、あなたは「中肉中背」(第5巻P.68)ってことになってるわ。これって逆転現象よね。
まあ、僕はいくらでも身体の大きさを変えられますから。
何、いきなりチンチクリンになってんのよ。
ガウリイさんはリナさんと同じで、あまり年齢や身長は原作と開きはないようですね。
ガウリイはガウリイだから。
随分とあっさり終わりましたね〜。
あなたもいい加減に元のサイズになりなさいよ。さて、ここでちょっとゼルとアメリアの関係というかいきさつの違いについて見てみましょうか。
ええ〜?ゼルアメを否定するんですか〜?
カップリングの話じゃないわよ!彼らの出会いのシチュエーションの違い!
はあ……どういうことなんですか?
アニメではアメリアはコピー・レゾと戦ったことになっているわ。つまり、ゼルとアメリアはサイラーグで出会った(無印第18話)ことになっている。ついでに、最後にはフィルさんまで出て来た(無印第25話)から、フィルさんもゼルとサイラーグで会っているのよね。
そうですねぇ。
ところが、小説でゼルがアメリアに会ったのは、あたしとアメリアがセイルーンでのゴタゴタを片付けた後、一緒に旅をしている間に、魔獣ザナッファーを復活させようとしていた連中との戦いの中(第5巻P.144)で、なのよね。アメリアもフィルさんもサイラーグには現われていないのよ。
そうでしたね。しかもアメリアさん、アニメではいきなりゼルガディスさんのことを「怪しい」なんて言っていました(無印第19話)けれど、小説では苦戦していたゼルガディスさんを、事情も知らないのに呪文で援護していました(第5巻P.143)よね。
彼女なりの理屈があったんでしょうけどね。まあ、まとめると、小説でゼルガディスはセイルーンへは行った(第3巻P.271)けれど、一人きりだったから王宮には入っていない。つまり、フィルさんとゼルは顔を合わせていない。一方、アメリアはコピー・レゾのことを知らない。だから、彼女、小説ではサイラーグが壊滅した理由を知らないことになっているのよね(第8巻P.85)
僕が小説で初めて登場したのもザナッファーが絡んだエピソードでしたから、僕もフィル殿下にはお会いしていませんよ。
そうだったわね。このサイトのオーナーは、けっこうこだわり屋さんだから、ファンフィクションを書く時、小説ベースかアニメベースか、でフィルさんがゼルとゼロスのことを知っているかどうかに気を使っているらしいわ。
その点、僕は何を知っていても「それは秘密」で矛盾を片付けられますからね。便利ですよ。
「どーせ魔族だから」の方が道理としては通ると思うけど?
どういう意味ですか、「どーせ」って……そうそう、年齢とかじゃないんですけれど。
何?
ゼルガディスさんは原作で「白ずくめ」としつこいくらい書かれていますけれど、アニメではどう見てもベージュ色ですね。アメリアさんも、たぶん、白い服のイメージなのに、やっぱりベージュです。
さあ?詳しいことは分からないけれど、もしかしたらアニメで白い服って表現しにくいんじゃない?
でも、TRYに出て来たフィリアさんは白い帽子に白いマントでしたよ。
う〜ん、素材が違う……ってことなのかな?色の違いと言えば、『魔玉血(デモン・ブラッド)』、原作じゃ四色だったのよね。アニメでは赤だったけれど。
ちっちっち……原作でもイラストではぜ〜んぶ、赤い色していますよ。それぞれが何色なのか明らかになったのは、最終巻で、です。
ちっちっち、ところがどっこい、原作では割りと早いうちに「四色」と書かれているのよ(第7巻P.227)
おや、本当でしたか。でも、原作でも8巻のカラー口絵・9巻〜15巻のカラー表紙・口絵ではみ〜んな赤一色になっていますよね。
し方がないわよ。原作者自身、どの石が何色なのか、決めていなかったんですもの。ただ、一個一個、色は違っていた、ということしか決まっていなかったのよ。でもね、赤黒白青の石って……身につけるにはあまりにおしゃれじゃないのよね……
おしゃれと言えば、リナさん、原作では何回か模様替えしているのに、アニメじゃ着たきり雀ですよね。
何よ!そっちこそ!それにあたしはアニメでもショルダー・ガードを一回取り替えているわ!
おや、そうですか?
そう!無印の時はショルダー・ガードの前、襟に近いところに護符が二つずつついているけど、NEXT以降は肩に大きな護符がついた形になっているの!
そうですねぇ。無印の時のショルダー・ガードは、原作で言うと1巻〜3巻の途中まで使っていたものの右肩の部分を左右対象にしたような形ですね。NEXT以降は原作6巻でリナさんがお買いになったものそのものですね。おや?そう言えば、リナさん、無印の頃は細剣(レイピア)をお使いだったんですねぇ。
ああ、そうそう。やっぱり女の子には華奢な剣、ってことだったのかしらね。でも、NEXT以降は原作通りショート・ソードになっているわ。
小説ではピンクの服を着たのは5巻が最初ですか?
カラーの絵を見る限りだとそうだけれど……4巻の一番最初の挿絵、形としては5巻で着ているピンクの服で、アニメのコスチュームの元になったものに似ているわ。
服について割りと詳しい記述があったのは1巻と2巻なんですよね?で、1巻ではズボンもローブもマントもブーツも、何から何まで黒(第1巻P.40)、ということでしたよね。2巻ではそれが、ミルク色の貫頭衣に紺色のローブとズボン(第2巻P.15)……なんだか、ピンクを着る趣味には思えないんですけど……
どこにピンクの服を着る黒魔術使いがいるのよ……
僕の目の前、じゃないんですか?
うっさいっ!あんたもいっぺん、ピンクの服に替えてみなさいよっ!


3.アニメ・オリジナル・キャラ
ここでは、原作に登場しながらアニメに出てこなかったキャラ、逆に、アニメにしか登場しなかったキャラを紹介します。
待った!この場合、TRYはアニメ・オリジナルのストーリーだから、無印とNEXTに出てこないでTRYに登場したキャラは、み〜んな原作にはいない、と思って間違いないわ。それから原作第2部(9巻〜15巻)はアニメ化されていないから、ここではTRYと原作第2部については省略!
はいはい。じゃあ、まず、無印を見てみましょう。
まず、原作に居てアニメで無視されたキャラは、サイラーグで魔族を倒した「女に目がない傭兵」ランツね。逆にアニメ・オリジナルのキャラはザングルスとヴルムグン、16話であたしと熱血演劇親子を演じた旅芸人の座長、17話で女装したガウリイに惚れたボラン、これぐらいかしら?
シルフィールさんのお父さんもアニメだけに登場していましたよ(無印第18話/NEXT24話・26話)。エルクさん、とか言いましたっけ?ヴルムグンさんは原作にも出て来ますよ。
でもアニメでは、エリスに操られていた連中のオリジナルが居たことになっているのよ。つまり、原作では「エリシエル=ヴルムグン」と「エリスに操られた男たち」が、アニメでは「魔道士エリス」「魔道士ヴルムグン」の二人になってるの。
ちなみに、ヴルムグンさんのオリジナルはNEXTの最終話、ラストシーンに出ています。……それよりも、アニメ無印で忘れられたキャラってもっといるんですけど。
誰よ?
冷たいですねぇ。魔族ヴィゼアさんとか、バーヅさんとかゴルアスさんとか……
あ、人間じゃないキャラはすっかり忘れてたわ。
忘れないでくださいっ!じゃあ、逆に無印オリジナル・キャラで、レゾさんの研究所に居た魔族ティーバさんのことも……
きっぱりすっかり忘れてた。
ちゃんと覚えててくださいよ〜。ガウリイさんじゃないんでしょう?
こらっ!ガウリイとあたしの記憶力を一緒にするんじゃない!
痛いなぁ。何もスリッパでどつかなくても……いえ、何も言いません……。
原作にもアニメに登場したけれど、ぜんぜん質が違った、っていうのはザナッファーよね。
原作では、人間が異界黙示録の写本の技術で作った合成獣であり、封魔装甲ザナッファーだったわけです。犠牲者の知識を食い、人間の言葉を理解した上でしゃべることもできましたしね。
アニメでは、異界黙示録の写本が鍵となって召喚された魔獣で、半分気体みたい。「甲冑」というより、でっかいアメーバが竜みたいな首を二つくっつけている姿だったわね。
とても合成獣だとは思えませんよね、アニメしか見ていない人は……
だから、外国でアニメしか見ていないファンは、ザナッファーを魔族だと思っている人も居るくらいよ。
いや、ザナッファーは僕たち魔族にとっては厄介ものでしかないんですがね〜。……と、無印の話はこれくらいで、じゃあ、NEXTはどうでしょう?
NEXTに出て来ないキャラはいっぱいいるわよ。何せ、第5巻と第6巻のエピソードが丸ごとボツだったんだから、そこに出て来たキャラは全員、ね。
原作第2巻でハルシフォムさんに協力していた魔族ギオ=ガイアさん、ガウリイさんと戦うことを夢見ていたロッドさん、第4・6巻に出て来てリナさんをつけねらっていた暗殺者ズーマさん、第5巻でザナッファーを作ろうとしていた邪教集団のクロツさんとその右腕のバルグモンさん……
封魔装甲ザナッファーの実験台になったデュクリス、ゼルガディスと写本を奪う段階から戦っていたギルファとヴェドゥル、ゼロスの暴爆呪(ブラスト・ボム)の犠牲になったフェルティス……
第6巻でリナさんを雇ったラドックさん、ラドックさんの息子のアベルさん、ラドックさんちの執事ラルタークさん、リナさんとガウリイさんに復讐を狙っていたセイグラムさんに使われたデュグルドさんとグドゥザさん、第7・8巻で登場した竜将軍ラーシャートさん、ラーシャートさんの手先のモルディラグさん……こんなところでしょうか?主要なところでは。
NEXTで登場したオリジナル・キャラというと、マルチナとゾアナ王ね。それからアクアばあちゃん!
キャラクターではありませんが、異界黙示録の完全写本の神殿自体、原作には出て来ませんからね。



4.魔族
考えようによっちゃ、金色の魔王(ロード・オブ・ナイトメア)の登場の仕方がNEXTでは一番問題かもね。小説とアニメの違い、という観点からすれば。
ええっ……あのお方のこと……ですか?
何、ぶるってるのよ。ほら、小説でもアニメでも、金色の魔王(ロード・オブ・ナイトメア)の力を借りる呪文、重破斬(ギガ・スレイブ)は、暴走させると世界の破滅を招く、ということになっていたわよね。
ええ……
で、原作第8巻でもアニメNEXTの25話でも、あたしはまともに重破斬(ギガ・スレイブ)を暴走させ、結果的に金色の魔王(ロード・オブ・ナイトメア)に身体を乗っ取られちゃったのね。
そ、そんなに……あのお方の御名をみだりに口にしないでくださいっ!
じゃあ、なんて呼べばいいの?
って言うか……あんまりあのお方に関わる話はしない方が……
ダメ、ここ、結構重要なのよ。いい、あたしが重破斬(ギガ・スレイブ)を暴走させたにも関わらず、世界は滅びなかった。あなたたち魔族にとっては残念な話だったけれどね。でね、なんで世界が滅びなかったんだと思う?
…………
まあ、無理に答えろ、とは言わないわ。まず、小説では、魔王の中の魔王と呼ばれる存在は、呪文の効力でこの世界に召喚されたわ。で、本来、徐々にその闇を世界に広げるはずだったらしいのね。ところが冥王(ヘルマスター)フィブリゾが、あたしが身体を乗っ取られていることに気づかず攻撃して来た。それで逆上した全てのものの創造主は、ムキになってフィブリゾを攻撃したのだけれど、人間の身体を通してしか力をふるえなかったために、いっぺんに使える力の加減を誤ってエネルギーを消耗し過ぎたのね。それであたしの身体を乗っ取り続けることもできなくなって、混沌の海へと帰って行った(第8巻P.213)……つまり、世界が滅びなかった理由に、憑依されていたあたしの意志はなんら関係がなかったわけよ。
……そうでしょうねぇ。
ところが、アニメではあの存在は、あたしの「ガウリイを死なせるわけにはいかない」という意志によって召喚されたことになっているわ。あたしの意志=有が、まったき無と呼ばれる存在=無を呼び、代わりにあたしの存在=有が、混沌=無に帰る……この等価交換によってあの存在がこの世界に具現したってわけね。
それでは、どうしてあのお方は世界ではなく冥王(ヘルマスター)様を滅ぼされたんでしょう?神託ではこの世界に具現されたあの方は、世界を闇で満たすはずでした。
言ったでしょう?あたしの意志との等価交換でアレが具現した以上、あたしの意志、「ガウリイを死なせない」という願いそのものが、アレにとっての存在理由になってしまったのよ。
ア……アレ、だなんて、乱暴な……しかしですよ、リナさんの意志以前に、あのお方にはあのお方自身の意志があるはずです。「在りし日に帰る」という……
たぶん、冥王(ヘルマスター)が攻撃を仕掛けたからでしょうね。アレには冥王がガウリイの死をもたらす存在だということが分かっていた。それを滅ぼしたところで、あたしの願いが成就し、アレはこの世界での存在理由を失って等価交換も終了し、世界を残したまま自分の居場所へ帰って行ったんだわ。ゼロス、あなたも最後に言っていたじゃない。「すべてのものの母はずいぶんと気まぐれなお方らしい」(NEXT26話)って。いつもいつも、召喚した術者の意志を優先するとは限らないでしょうし、そのまま世界を無に帰した可能性は十分にあるんでしょうね。ま、これに限らず、アニメでは魔族という存在の表現に苦労していたみたいだけれど。
ええ。次はその魔族の描き方について、原作とアニメを比較してみましょう。
一番最初に「俺は魔族だぞ」ってかっこうで登場したのは、赤法師レゾがあたしとゼルの追っ手に使ったゾロムだったわね。
それは原作でもアニメでも同じですね。姿も原作の記述どおりでしたね。
ところが、コピー・レゾのエピソードでは、レゾの地下研究所の通路で門番やってるちょっと情けないのとか、鶏の格好にされてたのしか出て来なかったわね。原作ではヴィゼアって半分美形の魔族が出て来てて、ちょっぴし「動く姿を見てみたい」なんて思ってたファンも居たでしょうに。
コピー・レゾが魔族と合成された姿を披露した時も、人間っぽかったですしね〜。
原作の魔族って、人間に近い分、実際に絵にするとエグイのかもしれないわね。小学生も見る時間帯、ってこともあったでしょうし、30分という時間枠の中では、主人公たちにやられる敵役として描かれるしかなかった、という感じよね。
カンヅェルさんやマゼンダさんなんかは、割りと頑張った方ですけれどね。
振り返ってみれば、アニメの中で魔族は「恐ろしい」とか「手ごわい」とか描かれるけれど、「心がない」とか「人間を完全に見下している」ところは、あまり出て来なかったと思うわ。
そうですか?僕たちは結構頑張ったつもりですが。
何言ってるの。あなたの行動が一番小説とアニメでかけはなれていたくせに。
えええ?僕がですか〜?
そうよ。TV版じゃ、フィルさんを助ける真似までしていたじゃない。(NEXT12話)
あれは、カンヅェルさんたちの企みを邪魔するためですよ〜。
それはそうだったわね。でもね、あなた、アニメでは一度も人を殺そうとはしなかった。
TRYではリナさんをヴァルガーヴに売ろうとした挙句、僕が殺しても構わない、と言いましたよ。嘘でなく。
でもね、原作ではあなた、百人の村人を一思いに殺そうとしたのよ(第5巻P.176)。ただ、自分の邪魔になる、というだけで。あたしが止めなかったら、あなた、実行していたわ。
そりゃぁ、まあ、当然です。
おまけに、異界黙示録の写本を持っている組織の人間を片端から殺すわ(第5巻P.230)、ガイリア・シティを火の海にするわ(第7巻P.64&P.210)……つまり、魔族には血も涙もない、ということを一番よく表していたのがあなたの行動だったのよ。それがまあ、アニメではおとなしくなっちゃって。
アニメで僕が倒した相手、といえば、暴爆呪(ブラスト・ボム)で消滅させたレッサー・デーモンと、その時にレッサー・デーモンを率いていた魔族(10話)。あ、この純魔族には暴爆呪は効きませんから、僕が直接手を下したんですが。後、竜たちの峰(ドラゴンズ・ピーク)で倒したセイグラムさん(21話)……あれ?これだけ?
降魔戦争でやっつけた竜たち、ってのは思い出話ですものね。ところでさっき、純魔族には、火炎系で最強の呪文である暴爆呪(ブラスト・ボム)が効かない、という部分、けっこう奥深かったんだけれど、みんな気づいてくれたかしら?
レッサー・デーモンには四大元素を具現化した精霊魔術、即ち物質的な攻撃が有効なのに、純魔族には効かない、という原則がさりげなく描かれていたんですけれどね〜。
でも、TVアニメでレッサー・デーモンが純魔族とどう違うのか、ほとんど説明されていないんじゃない?
というより、物質的攻撃が効くのがレッサー・デーモン、効かないのが純魔族、とか……
とか言いながら、ゼロス、あなたもけっこう物質的攻撃でダメージくらっていたじゃない。NEXTで。
え〜?僕が、ですか?
ブラス・ラケッツの回(NEXT16話)で、ゼルの火炎球(ファイアー・ボール)で倒れていたじゃない。
あの場合は……僕が魔族だと知られないようにお芝居をしていただけですよ〜。
砂の神殿でガーヴに殴られて顔にあざ作っているし。(NEXT19話)
あの時も、僕はリナさんが僕を魔族だって知ってるとは思わなかったんですってば〜!
竜たちの峰(ドラゴンズ・ピーク)でガーヴに斬られた時、血、吐いてたじゃない。器用ね〜。(NEXT22話)
しくしくしく……。
おかげで、外国で書かれているスレイヤーズのファンフィクションの中には、ゼロス、あなたがゼルに素手でドツキ倒される、なんて話が作られるくらいよ。
それはちょっと……。あれ?外国にはスレイヤーズの小説は紹介されていないんですか?
それについてはこのホームページの「インターネットに見る海外スレイヤーズ事情」のレポートを読んでもらうと分かるんだけれど、欧米やアジア各国でスレイヤーズのアニメが紹介されているのに、小説の翻訳が出ているのは韓国だけ。それもなぜだか13巻までで止まっているらしいわ。
なるほど、たかだか小説とアニメの違い、と言っても、けっこう大きな誤解の種になる、ってことですね。
そういうこと!あ、そろそろスペースもなくなってきたことだし、そろそろ締めるわよ。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
まあ、違いがある、と言っても、どちらも「スレイヤーズ」なのだし、それぞれを楽しめれば面白さ二倍、ってことよ。
両方知れば二度美味しい、ってことですね。
そうっ!さあ、皆さんも新しいスレイヤーズの楽しみ方を探して、これからも盛り上がってねっ!でないと暴れちゃうぞっ!
お後がよろしいようで〜。





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