トランプ米大統領誕生で世界はどう変わるのか 5つの形
- 2016年11月9日
米大統領選の投票が8日行われ、9日未明に共和党候補のドナルド・トランプ氏が第45代米大統領に当選確実となった。米国と世界の関係はこれによって、いくつかの側面で大きく形を変える可能性がある。
自由貿易
もしドナルド・トランプ氏がこれまで主張してきた通商政策を実施するならば、米国と世界各国とのビジネス関係が数十年来なかったほど大きく変わることになる。米国・メキシコ・カナダが交わしている北米自由貿易協定(NAFTA)などが米国の失業につながっていると批判してきたトランプ氏は、複数の既存の通商協定から離脱すると主張してきた。世界貿易機関(WTO)から離脱する可能性にさえ、言及してきた。
企業の海外流出、特にメキシコへの流出を阻止すると公約してきたトランプ氏は、輸入関税を支持し、中国には45%、メキシコには35%を課す考えも示している。
気候変動
トランプ氏は、気候変動対策のために2015年12月に195カ国が締結したパリ協定を「キャンセル」すると発言している。
さらに、国連の気候変動対策計画のすべてに対する米国の拠出金を停止すると述べている。
ひとつの国が単独でパリ協定を破棄することはできないが、米国が離脱したり、バラク・オバマ大統領が導入した国内施策を取りやめたりすれば、協定の実効性に大きな打撃となる。
トランプ氏は、化石燃料の採掘拡大、規制緩和、「キーストンXLパイプライン」と呼ばれるカナダと米国との間の石油パイプライン敷設を支持している。
国境閉鎖
移民対策にはさかんに強硬姿勢を示してきたトランプ氏だが、立場を繰り返し修正してきたため、最も大胆な主張を本当に実施するつもりか、あるいは本当に実施できるのかどうか、はっきりしない。
出馬を宣言すると同時に、トランプ氏はメキシコとの国境に壁を建設し、1100万人の不法移民を強制送還すると公約した。それ以降、送還するのは米国に暮らす「何百万もの」犯罪者で、他の未登録の移民については後日手を打つと、主張を和らげた。
選挙戦の最後の最後まで、国境の壁はメキシコに費用負担させると主張を変えなかったが、メキシコを訪問した際には支払いについて言及しなかった。
また「ムスリム(イスラム教徒)全員の完全な米国入国禁止」を宣言したが、後にこれは提案であって政策ではないと発言を修正している。代わりに、特定の国の出身者に対する「非常に厳しい」審査を提案しているが、特定の国がどこかは言明していない。
北大西洋条約機構(NATO)
トランプ氏はNATOについて、時代遅れな存在で、加盟国は米国の気前の良さに感謝していないと批判してきた。米国はもはや、相応の報酬を受けなければ欧州やアジアの国々を守るための費用負担はできないし、相手国が費用を分担しなければ米軍は引き上げる考えを示している。
ほとんどのNATO加盟国が国内総生産(GDP)比2%以上の国防費負担という目標に達していないことは、米政府がかねてから問題視してきたもので、トランプ氏はある意味でそれをあえて口にしているに過ぎない。しかし、60年前から米外交政策の礎石だったNATOから、トランプ氏は遠ざかるつもりではないかと複数の専門家が指摘している。
ロシア
トランプ氏は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は強力な指導者だと称え、良好な関係を築きたいと発言。自分ならば、プーチン氏との緊張関係を緩和できるはずだと主張してきた。
これが具体的に何を意味するのかはほとんど言及していないが、過激派勢力のいわゆる「イスラム国」(IS)掃討のため共同戦線を張りたいという意向は示している。
その前にはロシアが「道理をわきまえた」相手かどうか確認するつもりだというトランプ氏は、プーチン氏はヒラリー・クリントン氏やオバマ大統領よりも自分のことを尊敬するはずだと自信を示している。
(英語記事 US election 2016 results: Five ways a Donald Trump presidency changes the world)