日本人が困ることは“ない”
3 Lines Summary
- ・経済政策の観点からすると、トランプの勝利は当然
- ・アメリカの軍事介入は減る可能性がある
- ・アメリカの変革を「脅威」と捉えておくことは大事
トランプvs.ヒラリー。その行方に注目が集まっていたアメリカ大統領選挙は、トランプの勝利で幕を閉じた。そこで気になるのが、日本への影響。トランプの当選で、日本はいったいどうなってしまうのか。古市憲寿がさまざまな疑問を、国際政治学者である三浦瑠麗にぶつけた。
何故トランプが当選したのか
古市:正直、ここまで勝利することは予想してましたか?
三浦:ヒラリーが大統領になったら、最初から弾劾されて大変なことになると考えていた人が、その考えを最後まで変えなかったこと、そして隠れトランプ派が大勢いたことがこの結果につながったんでしょうね。
もしも私がアメリカ人だったら、暴言は問題だったけど、経済政策の理由からトランプに投票したと思います。大企業もお金持ちもバッシングするヒラリーはダメですよ。税金を収めているのは彼らなんですから。
古市:トランプの女性蔑視発言は、そこまで問題ではなかったんですか?
三浦:もちろんみんな気になったでしょうけど、大局観を持って投票したということです。貧困層だけにアピールしているヒラリーよりも、トランプの方がよかった。
最後の最後まで態度を決めかねていた人たちっていうのは、共和党の支持母体でもある中高年女性なんです。彼女たちも迷った挙句、トランプに入れた。
そもそもトランプって、アメリカ全体の風潮から見ると、そこまで男尊女卑な人じゃないですし。
古市:確かに、日本でもあれくらいの政治家はいますよね。
三浦:大事なのは経済政策と移民コントロールだという大局観が、有権者たちにあったという結果です。
トランプは何をしようとしているのか
古市:トランプは実際に何をするんでしょうか?
三浦:外交政策として彼が口にしているのは、平和。要するに、今までみたいに介入しないよってことです。尖閣諸島や南シナ海での問題も、勝手にやってくれって思ってるでしょうね。それでも軍を置いといてほしかったら、もう少し経費を払ってね、と。
そして経済政策では、大きな変革を成し遂げようとしてます。国内の法人税を15%まで下げると言ってるんです。
そうすることで、これまで海外で儲けを出していたアメリカの企業が、その資産を持ってアメリカに集まってくる。
古市:これまでアメリカで納税してなかった企業が、アメリカにどんどん納税するようになるってことですね。
三浦:そう。すると、景気はめちゃくちゃよくなるでしょうね。
ただし、アメリカに雇用を生み出さない企業はどんどんやり玉に挙げられる可能性はあります。その代わり、トヨタさんみたいに南部に工場を作って、そこで雇用を生み出していれば大丈夫でしょう。
中国はトランプ当選を好機と見ている
古市:軍事の問題は? アメリカが南シナ海への興味を失ってしまったら、日本はどうなるんでしょう?
三浦:でも、私たちも南シナ海でドンパチやりたいとは思ってないですよね? 南シナ海での中国のことを報道せず、関心を失ってしまうのはいけないけど、だからってフィリッピンやベトナム側について自衛隊の船を出すのかっていうね。
中国は問題のある国だけど、占領してくるわけじゃないしってことで受け入れれば平和は保たれると思います。
ただし、中国としてはトランプが大統領になったことを好機と受け止めているでしょうね。
古市:一般人レベルで困ることは……?
三浦:ないです。
古市:なるほど。でも、みんな大騒ぎしてますよね?
三浦:困ることはないんだけど、でもアメリカの変革を脅威として捉えておかないと、交渉上手なトランプに押し込まれて、いつの間にか防衛費倍増なんて事態になっちゃう。
それにあわせて日本も変わっていかないと、右肩下がりは止まらないと思います。
今のトランプ旋風が危険じゃないとは言いません。ヘイトを煽ってますし、投票場の周辺では銃撃事件も起こりましたから。
ただ、今回の選挙で白人がコントロールを取り戻したことで何か過激なことをするかと言うと、そうではない。むしろ、州によってはこれまで同様に保守的な価値観がそのまま野放しになっていくと思います。
11月9日放送「あしたのコンパス」より
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