2016.07.17.Sun.
■[読書] E・ゴッフマン “アサイラム 施設被収容者の日常世界”
“ASYLUMS: Essays on the Social Situation of Mental Patients and Other Inmates”
1961
Erving Goffman
ISBN:4414518032
アサイラム―施設被収容者の日常世界(ゴッフマンの社会学3) (ゴッフマンの社会学 3)
- 作者: E.ゴッフマン,石黒毅
- 出版社/メーカー: 誠信書房
- 発売日: 1984/03/05
- メディア: 単行本
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自己論・アイデンティティ論。
全制的施設(全面的収容施設) total institution
- 多数の類似の境遇にある個々人が、一緒に、相当期間にわたって包括社会から遮断され、閉鎖的で形式的に管理された日常生活を送る居住と仕事の場所。刑務所はその典型的な例。
本書は、全制的施設一般とその一事例、すなわちとくに精神病院、を取り扱う。関心の中心は自己の構造について社会学的解釈を展開することである。
[序言より抜粋]
『アサイラム』では精神病院でのフィールドワークを通して、極限的環境への適応によっていかに自己が維持されるかを考察。
自己とは、外力に対する抵抗の仕方にこそあらわれる。
こうした自己アイデンティティ維持の試みは、極限環境に限らず日常において共通する。
- 極限状況
- 役割剥奪・体面喪失・自己の無力化
- 正当化
- 全制的施設の解釈図式:被収容者の自動的同定
入所者が施設の目的対象であることは、入所自体が明白に証拠立てている、という考え方。この同定は全制的施設で為される社会統制の基本的手段の中心。
- 全制的施設の解釈図式:被収容者の自動的同定
- 順応
- 二次的順応・裏面生活
- 第二次的調整:全制的施設での裏面生活を構成するさまざまの便法。施設が個人に対して自明としている役割や自己から距離を置く際に用いる手立て。個人とその個人が参加している社会的単位との間に境界線を引く機能。
- 全制的施設の世界は「立ち入り禁止・境界外の空間」「被監視空間」「解放区」という三つの領域に区分可能であり、このうち解放区が裏面生活の舞台装置に対応。(解放区/集団占有領域/個人的占有領域)
- こうした順応によって自己アイデンティティが形成・維持されていく。
- 二次的順応・裏面生活
- 修繕サービス・モデルの限界
- 修繕サービス:相互行為を記述するモデルのひとつの重要な様態で、依頼人がサービス提供者に自らを委ねるというタイプの社会関係。
精神病院は、このモデルが適合しないということでその社会秩序が説明され得る。- 精神科医は、患者の感情の表出を、サービス上利用できる情報の陳述としてではなく、病気そのものの徴候として反応してしまう。(自動的同定)
- 精神障害者の病院収容は医療の修繕サービス-モデルに適合せず、精神病院ではそうした不適合が制度化されている。施設維持のための医療が、医療サービス-モデルという装いの下に実行される。
- 精神病院での自己疎外的な精神的隷属状態は、医療版の専門的サービスモデルを精神病院に適用しようとしたことから生じた事態。
- 修繕サービス:相互行為を記述するモデルのひとつの重要な様態で、依頼人がサービス提供者に自らを委ねるというタイプの社会関係。
自己は自己の所有者が重要な意味をもつ他者との相互行為を重ねることによってのみ生じて来るものではなく、特定の組織体においてその構成員のために成立した様々の仕組からも生じて来る
(p156)
自己は、特定の社会体系において構成員に対して遍在している仕組のうちに存立しているあるものと見做すことができる。この意味での自己は、その自己が帰属される人物の所有物ではなく、むしろその人物との関わりにおいて彼自身ならびに彼の周囲にいる人びとによって行使される社会統制のパターンのうちに存立するものである。
(p177)
人間の生活がおこなわれている社会は、どのように見ても人間の社会なのだ。
(p299)
われわれが自己を所有しているという意識は、その引力に抵抗するときのさまざまの些々たる仕方に由来するのである。
(p317)
[参考] ゴフマンの自己論については、『触発するゴフマン』 第3章 自己に生まれてくる隙間 (芦川晋) にて整理されている。
ゴフマンは相互行為論として見られがちだが、必ずしも相互行為状況に限定されない、施設や組織の社会統制と結びついた自己概念を考察している。
- 自己の二重の定義:「イメージとしての自己」/「プレイヤーとしての自己」 …『儀礼としての相互行為(1967)』『行為と演技(1959)』
- 自らが参入する状況に対し再帰的に自己呈示を実践できる余地 →ゴフマンはそこに個人の「自由」を見ている。
- 自己への信頼を失墜させかねない情報を操作するときに問題となってくる「パーソナル・アイデンティティ」 …『スティグマの社会学(1963)』
- 個人のパーソナル・アイデンティティを構成する生活誌やバイオグラフィーとは、個人を一定の社会的アイデンティティにつなぎとめておくための潜在的なメディア ←不都合が露見しかねないときにはじめて遡及的にふりかえられるもの
- 自己の再編成 …『スティグマの社会学(1963)』『アサイラム(1961)』
- 被収容者やスティグマをそれとして自らに受容させていく自己の再編成過程:「賞罰・病歴 moral career」
- 役割剥奪・自動的同定を経て、パーソナル・アイデンティティが剥き出しとなる。被収容者たちによる被収容者たちの世界への積極的関与:二次的順応 裏面生活
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―Angela Mitchell