トランプ大統領の誕生で儲かる企業はどこか――。兜町が血眼になっている。市場はクリントン有利で動いてきただけに、「トランプ勝利でハネ上がりそうな銘柄の物色は手薄だった」(市場関係者)という。見方を変えると、トランプが逆転すれば市場が織り込んでいない分、関連銘柄は急騰する可能性が高いのだ。

「トランプが本当に大統領に選ばれたら、経済の先行き懸念により、世界同時株安は避けられません。ただ、トランプ勝利で業績がアップしそうな業界もあります。その筆頭は防衛関連です。トランプは『自国は自国で守れ』と主張しているので、防衛に絡む日本企業は忙しくなるでしょう」(経済評論家の杉村富生氏)

 防衛省との取引額トップ3は三菱重工(哨戒ヘリコプター)、川崎重工(潜水艦)、NEC(通信システム)だ。コマツ(対戦車榴弾)やOKI(潜水艦ソナー)、新明和工業(救難飛行艇)なども防衛関連の一角を占める(別表参照)。

「日本は領海と排他的経済水域を合わせると世界6位に位置します。現在の防衛費は約5兆円ですが、少なくとも倍の10兆円には膨らむとみています」(杉村富生氏)

 もうひとつのキーワードは円高だ。11月に入り、クリントンとトランプの支持率が再び拮抗してきたと伝わった途端に、安全資産といわれる円は買われ、1ドル=105円台から一気に102円台まで円高が加速した。

 野村証券は4日付のリポートで、「トランプ勝利の場合、ドル円相場の落ち着きどころは90〜95円と想定」と指摘した。

 株式評論家の倉多慎之助氏は言う。

「円高加速は間違いないでしょうが、円高メリットを享受する企業は多いのです。輸入品は安く手に入るようになりますから、日本ハムや味の素といった食料関連は好業績が期待できます。トランプ当選の直後は株価暴落でしょう。円高メリット企業も株安に見舞われることになります。そこが買い時かもしれません」

 パニック相場に陥っても、円高メリット企業は早い段階で復活してくるという読みだ。

「もっと言えば、米国経済は大混乱し、12月の利上げも怪しくなる。米国全体に不透明感が漂い世界の投資マネーは日本に流れ込む可能性が高い。脚光を浴びるのは医療を含めた生活インフラ関連です。いま日本の水回り技術がもてはやされているので、TOTOやLIXILグループ、リンナイなどの銘柄に買いが集中しそうです」(倉多慎之助氏)

 一方、トランプ敗北だと円安が進行する。野村証券は「105〜106円」とはじいた。市場では円安メリット銘柄に注目が集まり、トヨタ自動車や日産自動車、パナソニック、ソニー、任天堂などが主役だ。あす(9日)昼ごろには大勢が判明する。