博多陥没!駅前にクレーター!トンネル水漏れで危機一髪
福岡市のJR博多駅前の市道(はかた駅前通り)が8日午前5時15分ごろ、陥没した。陥没は徐々に広がり、長さ約30メートル、幅約27メートル、深さ約15メートルと確認された。市は市営地下鉄七隈線の延伸工事中、トンネル内に地下水や下水が流入して道路が陥没したと明らかにした。穴には水が充満、周辺ビルの敷地でも一部陥没した形跡があった。市は周辺一帯に避難勧告を出した。停電が発生し、市内の70代女性が転倒、負傷した。周辺へのガスの供給や水道が止まり、道路5車線は全面通行止めとなった。
普段、車や人の通りが絶えない九州の玄関口、博多駅前の基幹道路が突然、消えた。
近くの建物で働く宮永修治さん(25)は「午前5時ごろ突然停電し、ドーンと大きな音がした。少し揺れたような感じがした」と振り返った。道路には2か所、大きな穴が開いており、警察官らが慌ただしく交通を規制。規制は南北約150メートル、東西約350メートルに及んだ。
陥没のわずか15分前、地下鉄工事に当たっていた作業員約9人に緊張が走った。地下約25メートルの作業現場で水漏れが、トンネル上部から始まったからだ。線路を敷く空間をつくるために固い岩盤層を削っては、崩落を防ぐためにコンクリートを吹き付ける作業の最中。トンネルの上には水がたまりやすい砂の層があり、トンネルに染み出すことはあったが、噴き出すことはなかったという。
やがて水に土砂が交じりだす。作業員は間もなく現場から離れ、地上へつながる階段やエレベーターがある100メートル以上離れた「立て坑」を目指した。その直後、地鳴りとともに「ドーン」のごう音。数十メートル先のカラオケ店が入るビルが揺れるほどの地響きがした。陥没の瞬間だった。
工事に携わる男性(23)は崩落の様子を「隕石(いんせき)が落ちたようだった」と振り返る。作業員は間一髪で難を逃れ、けが人はなかった。
崩落はやまない。破断した下水管から水が流れ出し、午前7時20分過ぎには2つの穴の境目にあったアスファルトも崩れ、博多駅へ続く大通りを完全に断絶した。信号機2基ものみ込まれた。穴には電気・通信のケーブルが垂れ下がり、注ぎ込んだ下水が濁った池をつくった。基礎部分がむき出しとなるビルもあった。ガス漏れもあり、現場には汚物がまき散らされたような臭いが立ち込めた。
市によると、現場地下は、トンネルのある岩盤層の上に、水を遮る粘土層、さらにその上に地下水を含んだ砂の層が重なった構造。何らかの原因で粘土層が破れ、水を含んだ土砂がトンネル内に流れ込むとともに、道路下に新たに空間ができ、アスファルトが崩れ落ちた可能性があるという。
延伸工事は2020年度の運行を目指し、24時間体制で行われていた。高島宗一郎福岡市長は「原因が設計にあったのか、施工にあったのか。管理する役所に瑕疵がなかったのか。究明をしたい」と語った。市は、道路陥没部分を、固まりやすい特殊な土で埋め戻す作業を始めた。埋め戻しには少なくとも3日かかるとみられ、難航も予想される。