住宅用火災警報器作動せず 過去5年で600件余

住宅用火災警報器作動せず 過去5年で600件余
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火災を知らせる住宅用火災警報器が設置されていても、電池が切れるなどして適切に作動しなかった火災が、過去5年間に全国で600件余りに上ることがわかりました。総務省消防庁は9日から始まる秋の火災予防運動で、警報器の点検をするなど適切な維持管理を呼びかけることにしています。
住宅用火災警報器の設置の義務化が始まってから、ことしで10年になることから、総務省消防庁に取材したところ、全国の住宅の火災件数は義務化以前の平成17年は1万8751件だったのに対し、去年1年間は1万2097件と35%減ったほか、死者の数は1432人から1020人と29%減りました。

その一方で、火災警報器が設置されていたのに作動しなかったケースが増えていることもわかりました。平成23年は106件、平成26年は149件で、去年までの5年間に全国で合わせて607件に上っていました。このうち、死亡した人は10人、けがをした人は173人に上っています。

多くは電池が切れていたり、警報器にほこりが入ったりして、センサーが作動しなくなっているなど、維持管理が適切に行われていないことが原因と見られるということです。

総務省消防庁は、9日から始まる秋の火災予防運動で、警報器の定期的な点検や交換など、適切な維持管理を行うよう呼びかけることにしています。

鳴らなかった警報器

住宅用火災警報器が作動しなかったケースの一つ、去年6月、愛知県豊橋市の6階建ての公営住宅の2階にある1室で起きた火災では、この部屋に住む20代の男性が煙を吸い込み、病院で手当てを受けました。

豊橋市消防本部によりますと、間取りは台所と居間それに寝室などがある3DKで、寝室にあった扇風機から火が出て、背後のふすまなどに燃え移り、6平方メートルが焼けたということです。
台所と寝室には、平成18年から住宅用の火災警報器が設置されていましたが、いずれも作動しなかったことから消防が調査したところ、60代の母親が警報器の電池の交換を知らせるアラーム音が鳴った際に対処方法がわからず、電池を抜いていたことが判明したということです。

調査にあたった豊橋市中消防署の佐々木英樹消防士長は「設置してから10年がたつと、電池切れや故障も多くなると考えられる。これまでに住宅用火災警報器のおかげで助かった人を何人も見ているのでまず設置したうえで、しっかりと点検をすることが重要だ」と話していました。

都内で起きた住宅火災でも火災警報器が作動しなかったケースがあります。
去年5月に都内の10階建てのマンションの6階にある1室で起きた火災では、住民の女性が台所で鍋を火にかけたまま、別の部屋で食事をしていたところ鍋から出火し、壁などに燃え広がりました。

台所と居間に警報器が設置されていましたが作動せず、消火後に消防隊員が調査したところいずれも電池が切れていたことがわかったということです。

東京消防庁では「警報器が作動すれば、被害は軽減されていたと考えられる」としています。

しっかりと点検を

住宅用火災警報器は、煙が入ると作動する煙式と、周辺が一定の温度に達すると作動する熱式の主に2種類があります。

煙式は、煙の濃度が15%以上になると60秒以内に作動し、熱式は温度が81度を超えた状態になると40秒以内に作動するよう作られています。

自動火災報知設備のない共同住宅と戸建て住宅は、消防法で寝室などに設置が義務づけられ、総務省消防庁によりますと、ことし6月現在の設置率は全国で81.2%、火災予防条例で台所やそのほかの居室にも設置が必要な市町村で、条例に適合しているのは全国で66.5%だということです。

ただ点検や交換は自分で行うことが必要で、点検は、警報器についているボタンを押すか、ひもを引っ張って音を確認します。
その際に鳴る音は、「正常です」という音声や、「火事です」、「ピーピーピー」と、実際の警報音が流れるものなどがあり、何も音がしない場合は電池切れや故障の可能性があります。

設置から10年以上たっている場合、電池切れだけでなく電子部品が劣化して作動しないおそれがあるため、本体の交換が推奨されていて、業界団体などによりますと、価格は通常のタイプで2000円から3000円程度だということです。

総務省消防庁予防課の恵崎孝之課長補佐は「警報器は適切に維持管理をしないと、火災の際に作動しないという危険な状態を招いてしまう。引き続き設置を勧めるとともに、すでに設置している住宅には命を守るため、維持管理が必要だということを力を入れて訴えていきたい」と話しています。