児童相談所70年の歴史と児童相談 “歴史の希望としての児童”の支援の探究
加藤 俊二(著)
発行:明石書店
A5判 392頁 上製
価格 2,800円+税
//=str_replace('定価','定価 ',$shoshi_price);?>
ISBN 978-4-7503-4434-8 C0036
在庫あり(出版社情報)
奥付の初版発行年月 2016年11月
書店発売日 2016年11月9日
登録日 2016年11月2日
紹介
長らく児童相談所で児童心理司、児童福祉司として、子どもや家族の問題に全力で向き合ってきた著者。日本の児童福祉や児童相談所はどのように変遷し、また、虐待問題という喫緊の課題を抱え、どのように変わっていくべきなのか。積み重ねられた実践と経験から探る。
目次
はじめに──児童相談所70年の歴史と向き合い、未来につなぐ
第1部 資料と写真で見る児童相談所の70年
児童相談所は70年“生きてきた”し、今もちゃんと“生きている”
──児童相談所70年の歴史を概観する
児童福祉前史
──児童の救済と保護の時代(1868~1945年)
児童福祉の幕開け “歴史の希望としての児童”の人権法・児童福祉法の制定
──終戦時の児童保護(戦後処理)から児童福祉の基礎づくり(1945~56年)
児童福祉の展開1 “もはや戦後ではない”(経済白書)
──経済成長と児童福祉の拮抗の時代1(1957~64年)
児童福祉の展開2 経済成長と児童福祉拮抗の時代2 心身障害児に光を当てる
──不就学児の「たまり場づくり」「日曜学校」の取り組みを通して不就学をなくする運動、地域療育活動の高まり(1965~74年)
児童福祉の展開3 経済成長と児童福祉の拮抗の時代3 地域住民との共同の模索1
──児童相談所の実践と研究の新しい探究始まる(1975~84年)
児童福祉の展開4 長期にわたる経済不況の中の児童福祉の時代
──地域住民との共同の模索2(1985~89年)
児童福祉の展開5 規制緩和、市場原理、競争の促進を基本原則とする社会福祉基礎構造改革の渦中の児童福祉の時代
──職員と住民が共同で築いてきた権利としての児童福祉への攻撃(1990~2000年)
児童福祉の展開6 貧困と格差拡大の渦中の児童福祉の時代
──児童福祉法の危機と国民のための新たな児童福祉の実践と理論構築への模索(2001年~現在)
第2部 実践と研究──児童支援の歴史的探究
第1章 非行児童の内面理解のための生活史的アプローチ──心理判定業務について
1 二人の少年に生活(史)を綴らせることから
2 なぜ、生活史的アプローチか
3 生活(史)を綴った子どもたちからの問いかけ
第2章 登校拒否問題への若干の提起──療育キャンプの経験と施策の現状から
1 療育キャンプからの提起
2 登校拒否児のための取り組み、施策等の保障状況からの提起
第3章 児童相談所の「発達史」をどのように描写し得たか──『児童相談所40年のあゆみ』編集に携わって
プロローグ 『児童相談所40年のあゆみ』の編集──「あとがき」の補足として
1 今、なぜ「児相史」なのか
2 『あゆみ』の編集方針と具体的な取り組み
3 貴重な資料の収集、発掘
4 いくつかのエピソード、裏話から
エピローグ 児童相談所の「発達史」をどのように描写し得たか
第4章 社会福祉と臨床心理学の課題──この10年(1983~1993年)の実践と研究ノート
はじめに “そも、汝はいずこより……”──少年期の原体験と臨床心理学の仕事
1 二つの手紙と臨床心理学の仕事
2 社会福祉における臨床心理学の課題
“そも、汝はいずこへ……”──臨床心理家の苦悩と人間探究
第5章 日本における児童福祉実践の歴史的展開──児童相談所における実践の展開
1 児童相談所の処遇(実践)論の流れ〔概観〕
2 児童相談所における処遇(実践)論の歴史的変遷と特徴
3 1990年以降の処遇の動向、特徴と課題
第6章 地域の低所得家族層における世代間継承(1)──A公営団地へのアプローチを通した「発達の重層的な遅れ」(仮説)の提起
1 今日をどのように生きているのか──P家族の子どもたちの描写
2 どのように生きてきたか①──一体、彼女は何者?
3 どのように生きてきたか②──「父また帰る」のP夫
4 低所得家族の「世代間継承」の解明
第7章 地域の低所得家族層における世代間継承(2)──A公営団地へのアプローチを通した重層的なネットワークの構築の解明
1 低所得層家族の生活の危機
2 引き続き進む、家族の崩壊過程の現段階
3 崩壊家族と公的福祉支援
4 「養育機能障害」(仮説)と「発達の重層的な遅れ」(仮説)
5 重層的支援の取り組みの内容
第8章 児童相談所における青年期を展望した自立支援──生活史の聞き取りと掘り起こす取り組みから見えてくるもの
1 新たな貧困と格差社会が生み出した児童の発達・臨床的実相
2 要保護児童への支援の視点
3 思春期から青年前期における「生活(史)の聞き取り」の援助
第9章 児童相談所と私──40年余の福祉の仕事をみつめて
1 かつての児相の「困難さ」と今の「困難さ」
2 40年、福祉の仕事と関わってきて
第10章 バンザイ、俺は福祉司だ──インタビューで振り返る日本の児童相談
留守番しながら絵を描いた
伊勢湾台風、何百という遺体が……
心理学に絶望したんだ
俺が非行少年を直す!
「生活を綴ろう」ってね
バンザイ、俺は福祉司だ!
なんで仲間から引き裂くんだ!
ついにダウンしたの
山の話をしたかったな
引用・参考文献一覧
初出一覧
おわりに──『児童相談所70年の歴史と児童相談』をまとめて見えてきたこと──児童相談所をめぐる問題の核心は何か
前書きなど
はじめに──児童相談所70年の歴史と向き合い、未来につなぐ
(…前略…)
本書の第1部「資料と写真で見る児童相談所の70年」は、現存のさまざまな資料を基に整理して、前史、児童福祉の幕開けを含め8つの時代区分で構成した。なお、この70年史をまとめる中で見えてきた児童相談所の今日的課題を、本書の「おわりに」に「『児童相談所70年の歴史と児童相談』をまとめて見えてきたこと──児童相談所をめぐる問題の核心は何か」としてまとめた。
第2部「実践と研究──児童支援の歴史的探究」は、筆者の児童福祉分野での40余年の実践活動と研究をどう進めてきたかを「貧困・低所得層」と「生活の場としての人々が息づいている地域(コミュニティ)」へのアプローチを踏まえた実践記録及び小論を時系列に並べた。
もちろんその実践や小論はその時代、その時代の児童や家族、児童相談所の置かれていた状況や社会の情勢を反映しまとめたものであり、その時代の制約は避けられない。また、同じ実践を取り上げた論考には内容の多少の重複があることもご容赦願いたい。
だが、各論の中には、今日の児童相談所が抱えている課題にも当てはまる重要な実践や指摘が多く含まれているし、それらは今日の実践や理論探究にも十分生かすことのできるものであると確信している。
この本をまとめるにあたってあらためて感じたのは、70年という歴史を持つ児童相談所は、その時々の困難を乗り越えながら、様々な職種の人々によって支えられてきたということである。
そして同時に思うのは、いままさにこの仕事に関わっている児相人が、あらゆる機会を活用して自己の実践や理論を発表・整理し、まとめあげる研究活動をぜひ実践してもらいたいということだ。本書がささやかでも刺激になって、読者のみなさんの研究活動が活発になれば、筆者としてこれほどうれしいことはない。
なぜなら、そのことがいっそう市民の立場に立った児童相談所を発展させる力になるからだし、日本の児童の福祉と権利の拡大に大きく寄与するにちがいないと考えるからである。
著者プロフィール
加藤 俊二(カトウ シュンジ)
1942年愛知県名古屋市生まれ。名古屋大学教育学部臨床心理学専攻科卒。愛知県津島相談所長、愛知県保育大学校長、愛知県心身障害者コロニー療育部長、日本福祉大学福祉医療・福祉マネジメント学科教授を歴任。主な著書に、『子どもの自主活動の権利と保障』(一粒書房、2014年)、『現代児童福祉論 第2版』(ミネルヴァ書房、2008年)、『社会福祉援助技術論 個別・集団援助』(ミネルヴァ書房、2005年)、『画文集人間発達とこころの臨床心理学的素描』(清風堂書店、2001年)、『特別支援教育大事典』(共著、旬報社、2010年)、『児童養護と青年期の自立支援』(共著、ミネルヴァ書房、2009年)、『社会福祉士受験ワークブック 専門科目編』(共著、中央法規出版、2009年)、『改訂 臨床心理学』(共著、みらい、2005年)、『子どもの生活と援助』(共著、ミネルヴァ書房、1996年)などがある。
上記内容は本書刊行時のものです。